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誰が為の勇者  作者: 空良明苓呼(旧めだか)
第2章 果ての砂漠の金色幻想都市
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第39話 幻の王国アイン


 今日は朝からチキンラーメンを食べ、晩はマ◯ドナルドを食べ、ジャンキーな端午の節句を満喫しました。


※2021/10/28より改行修正入れております。内容には変更ございません。



【6冊目の手記】精霊暦(せいれいれき)10,491年・11の月・16日。


 修道院を尋ねると、リリアーナの体調が良くないらしい。すぐに薬を調合し飲ませたところ、大分落ち着いた様子になった。


 彼女の症状は後天性の病の影響だが、とても難しい状態だ。ふとエレオノーラを思い出したが、絶対に彼女を頼ってはいけないと考え直した。


 夜も更けて来たので眠ろうと思ったら、今度はエリーが眠れないと言ってきた。


 そこで、いつものお伽噺(とぎばなし)を話してあげることにした。


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


 今日は砂漠にある伝説のオアシス『幻の王国アイン』のお話をしよう。


 あるところに、見渡す限りの砂の世界がありました。この砂漠、ありとあらゆる世界の端っこにあり、世界のありとあらゆる物が最後に流れ着く場所でありました。


 そのためこの砂漠には、人間には使うのが難しい危ない道具や、大変な奇跡を起こす道具が沢山ありました。


 神様たちは、人間たちが勝手に道具を持って帰ってしまわないよう、その道具を蔵に片付け、巨人の王に守らせることにしました。巨人の王はその砂漠で唯一のオアシスに立派な蔵を貰いました。


 ある日、王の守る素晴らしい道具のことを知った、悪い魔法使いが砂漠にやって来て、王の住む都に病気をばら撒きました。


 みんな具合が悪くなって倒れてしまったので、さあ大変です。


 悪い魔法使いが持って来た病気は、砂漠の外の世界の病気だったのです。


 悪い魔法使いは巨人の王に言いました。


「私の持っている薬が欲しければ、お前の持っている素晴らしい道具を、1つ私に寄越すのだ」


 しかし、巨人の王は言いました。


「お前に渡す道具はない。ここから出て行くが良い」


 そうして、猫の兵士たちが悪い魔法使いを追い出し、二度と砂漠へ来れないように魔法の門を作ってしまいました。


 実は王様は、外の世界の病気に効く薬を持っており、悪い魔法使いはそのことを知らなかったのでした。王が薬を飲ませると、みんなの病気は綺麗に治ってしまいました。


 こうして砂漠の王国は、今も世界の端っこで宝物を守っているのです。


 めでたし、めでたし。


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


 話し終わるとエリーは「どうして王様は薬を持っていたの?」としきりに尋ねて来る。


 さて、それは宿題だよ。




・~・~・~・~・~・~・~




 アリオは聖剣を背中の鞘に仕舞い込むと、エリアーデと一緒に街中へ歩み始めた。


 中の景色は圧巻の一言に尽きる。


 入って最初は都市の中心を貫く大通りで、両側の建物には色とりどりの日除けのタープが掛けられており、食べ物、雑貨、怪しげな道具まで、様々な店がぎっしりと並んでいた。


 砂と同じ色の石造りの建物に、並木は見たこともない形で、幹は太く、途中で枝を生やすことも無く、樹上に大きな葉と実がついていた。その樹から極彩色の鳥が飛び立つ。


 しかし、その宝箱をひっくり返したような街並みよりも先に目に入るのが、都市中心部に位置するであろう王城だった。人間の力ではおよそ持ち上げられないであろう大きさの石で組み上げられ、1つの黄金色の山のように(そび)え立っていた。


 全員が扉の中に入ると、後ろで扉が閉まる大きな音がした。振り返るとそこに扉は無く、城壁が連なっていた。


「これは、猫の王が用いた古代魔法と似ていますね」


 エリアーデがそう呟くと、砂漠の王が闊達に笑う。


「あれは儂が彼奴(あやつ)らに教えたからな。この都市は元々猫の王の一族の棲家であった。神々が宝物殿の警らを任せておったのが彼奴らでのう」


 ゴージャ王は昔を懐かしむように説明を続けた。


「儂が宝物殿の管理をすることになった際、猫の王が砂漠の外に棲みたいからと言い出し、彼奴らには外の警備を任せることになったわけだ」


「なるほど、それで街中に猫妖精(ケット・シー)が」


 エリアーデは当たり前のように魚を売り買いする猫妖精(ケット・シー)たちを眺めながらそう答えた。アリオは街並みに夢中になっていて、心ここに在らずだった。


猫妖精(ケット・シー)だけではない。ここにはありとあらゆる種族が住んでいる」


 王は左手の腕輪を見せながら、自らのような巨人まで生活していることを示した。


「昔は巨人の居住地区もあったんだが、巨人は他種族との人身事故が多くてな。今は魔道具で小さくなって暮らしておるわ…楽しそうだな? 小僧」


 ゴージャ王の説明はそっちのけで、アリオは周りをきょろきょろ見回している。彼はワクワクした顔でこう言った。


「テオが話してたお伽噺(とぎばなし)みたいだ。後で城の裏も見に行っていーか?」


「もちろんだ! 気に入ったなら、ここに住んでも構わん。猫の王の眼鏡にかないさえすれば、あとは来る者拒まず、去る者追わずがここのモットーだからな。旅で来て永住する者も少なくない」


 人々の服は暑い太陽を避けるためか、全身を涼しげな布で覆い、頭にも何かしらの布を巻いたり、顔を隠している者もいた。


 時々、外の世界で見るような服装の者や、見たこともない格好をしている者が混ざっていたが、違和感無く街の喧騒に馴染んでいるようだった。王の言葉にエリアーデは当たり前のような顔で述べる。


「そうでしょう。今の世界の乱れ方では、戻りたい者の方が少ないはず。ここは魔王の影響下にないように見えます」


 そう言ったエリアーデの目線の先の人々は、チャームを付ける代わりに、様々な装飾の首飾りを身につけていた。ゴージャ王は『魔王』という言葉に反応して、皮肉げに笑った。


「『魔王』ねえ…。あいつも偉くなったもんだ」


「魔王をご存知なのですか?」


「儂は1万年以上生きておるからな。知り合いも少なくない。そして、ここは外界とは完全に絶たれた異次元、あらゆる世界の最果ての1つでもある。

 当然、外の世界の(ことわり)はここまで影響せん」


 アリオは調理器具の並んだ店先で、金銭の受け渡しをする老婆を眺めていた。奥では老翁が棚の整理をしており、その横でアリオより少し歳上の少年が、重い品物の出し入れを手伝っている。


 彼の視線の先に気が付いて、王は神妙な面持ちで尋ねた。


「そんなに年寄りが珍しいか? それとも家族が珍しいのか?」


「……両方だ」


 ゴージャ王の問い掛けにアリオは無表情で答えた。エリアーデは少し暗い表情になった。


「修道院では年長者は珍しくありませんが、街中でこんな風に暮らす家庭を見るのは初めてです。そもそも、あの年齢になるまで無事に生きることが難しいですから」


 2人の表情を見てゴージャ王は困り顔になったが、王城に辿り着くと、2人とも目が覚めたように顔が明るくなった。


 城の周りには幅のある水路が張り巡らされ、跳ね橋を渡るようになっていた。城の周囲から街中へ続く水路には船が侵入しないよう、鉄格子が()められている。


 そして城の階段を登り切り、荘厳な建築様式の建物に入ると、さらに上の階の大広間へ案内された。そこには豪華絢爛という言葉がぴったりの色鮮やかな食事が用意されている。


 エリアーデとアリオは、思わず言葉を失くした。


「ずっと見ておったが、お主ら、ろくに食事もせず、昨日はろくに寝てもいないだろう?これを食べて少しばかり休憩すると良い。話はそれからだ」


 2人は顔を見合わせると礼を言った。


「ありがとう!」「ありがとうございます!」


 その様子を見てゴージャ王は堪らず吹き出した。2人は何に笑っているのかよく分からないという顔になった。


「お前ら仲が良いのう。いつまで手を繋いどるんだ? それでは席に着けんだろう?」


 2人は砂漠に到着してから、ずっと手を繋ぎっぱなしだったことをすっかり忘れていた。お互い赤面すると、慌てて手を離す。


「こ…これは! こいつが魚に飛び込む前に泳げないとか言うから!!」


「そ、そうです! お互い好きで繋いでたわけではありません!!!」


 ゴージャ王はニヤニヤしながら極彩色の食卓に着いた。


「分かった分かった。儂も昨日はお主らの動向が気になってよく寝ておらんのだ。さっさと食べて、ひと眠りせんか?」


 2人はバラバラに席に着くと、給仕係に飲み物を注文した。そして「いただきます!」と言うと黙って食事を頬張り始めた。



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[一言] エリーかわいい。
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