第15話 火災
お酒は我慢。
※2021/10/28より改行修正入れております。内容には変更ございません。
道沿いの建物が燃え盛る中、アリオがカーサスの宿屋に駆けつけると、隣の建物から3階以上に延焼していた。
建物に無数に張り付く、浮浪者のあばら家の前に、首無し死体が転がっている。それには目もくれず、ララを探すのに必死だった。
宿屋の嬢たちが険しい顔で、次々と駆け出て来る。カーサスの店の嬢たちは火災に慣れているのか、周りに比べると冷静な様子だ。宿屋の女主人カーサスが、従業員に銀のチャームを支給していたことも、功を奏している。
しかし、何人かは悲鳴を上げ、慌てた様子で駆け出て来た。悲鳴を上げていた1人は、アリオを見つけると慌てて状況を伝える。髪を整えるのも忘れ、かなり錯乱しているのが見て取れた。
「アリオ! カーサスさんとララが! ヤバいやつが窓から入って来て!」
それを聞いて、弾かれるように建物の中へ駆け込んだ。
1階には誰も居ない。ランチ営業の直後だったこともあり、いつもは暗い店内に、幸いにも灯りが点けられている。
「2階のカーサスさんの部屋に入って来たんだ!」
外から、そう叫ぶ声が飛び込んで来た。
階段に駆け寄り2階を見上げるが、今はしんと静まり返っている。それだけで不気味なものがあった。普段ならこの時間は、従業員が談笑する声が聞こえるはずなのだ。
アリオが階段を駆け上がるのは、建物の外からも良く見えた。年端もいかない用心棒の少年が、2階へ消えて行くのを、嬢たちは心配そうに見守る。
そのうちの1人が、震えながら呟いた。
「あいつ…あいつ……笑ってやがった…トムの首を持って……」




