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誰が為の勇者  作者: 空良明苓呼(旧めだか)
第3章 地下神殿と砂の海獣
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第118話 薬の捜索


 ここに来てルカ大活躍。具合悪そうだけど頑張れ。


※2021/12/15より改行修正入れております。内容には変更ございません。



 シャーロットは突然神妙な面持ちで、結界内の全員へ告げた。


「みんな動くな。次元が歪むぞ」


 すでに防御結界内で作業に当たっていたタトラマージ、ベルガー医師、クリストファー、オムは、一斉に手を止める。


 すると、ターコイズブルーの鯱と、その背中に乗った面々が、砂地からぬっと現れた。彼らが到着したことで、『禁断の間』に全員が集まったことになる。


 たった今、鯱から降りたナズナが辺りを見回すと、そこは床一面に金砂の積もった広大な空間だった。壁にはこの国特有の、黄金色の巨大な石が使用されている。


 砂の絨毯の上には無造作に聖遺物が並べられたり、積まれたりしており、ところどころ人が歩けるような通路になっていた。広間はまるで真昼のように明るく、松明だけでここまで照らせるとは思えなかった。


 そして、目を見張るのはその奥…。奥とは一体何処なのか、よく分からないぐらい遠くに、有り得ない大きさの太い樹木が立っている。ナズナがオリーブの樹を実際に見たことは、ほとんどなかったが、あんなオリーブは地球に存在しないだろう。それぐらいのことは理解できた。


 それほど巨大で、だだっ広い広間の天井…いや、天を覆っている。その青々としげる枝葉には、きらきらと輝く魔石が輝いていた。市販の灯籠魔石よりも明るく、星のような煌めきだ。


 魔力の込められた魔石は、日々消費される安価な物から、効能の高い高価な物まで様々だがらあれは間違いなく後者だろう。


 そんなことを考えながら、ナズナがぼんやりと上を見上げていると、防御結界に無数の何かが打ち付けられた。魔法陣の円周から、半球の形に覆っている魔術文字に、水が滴っている。


 はっとして、水の飛んで来た方を見ると、まさにエリアーデとドルンデが、こちらへ牙を剥く人工精霊を迎え撃っていた。


 そのすぐ側で、大狼に跨るマシューとサラマーロが、樹木の人工精霊を相手取っている。というよりも執拗に攻撃を繰り返されているようだ。


「ロティどう? 見つかった?」


 鯱のタイタンから降りるや否や、アリオはシャーロットへ駆け寄って、心配そうに尋ねた。薬が見つからなければ、もう一度侵入しなければならないかもしれない。


 防御結界の中では、シャーロットとタトラマージが薬のサンプルを呼び出し、ベルガー医師、クリストファー、オムの4人が確認を繰り返している。


 そうだ、自分たちは電子顕微鏡と抗寄生虫薬を探していたのだと、ナズナはやっと思い出した。先ほどまで異空間にいたせいか、現実世界から精神が切り離されたように感じる。


 シャーロットが忙しそうにアリオの質問に答えた。


「箪笥の話は後で。薬の方はエリーの読みが当たった。ベルガー医師が来た途端、見ての通り山のように医薬品が出て来てね。ちょうど人手が必要だったところさ」


 皮肉めいた笑みを浮かべる彼女は、その(じつ)あまり焦っていないように見えた。動きにくそうなロングスカートを履いていても、相変わらず彼女はテキパキと魔術を繰り出していく。


 ルカはシャーロットと目が合うと、当てにされているのが自分だと気付いた。『書籍の間』で散々こき使われたが、どうやらまだ仕事がありそうだ。


 膨大な薬剤の山を見ると、頭が痛くなってくる。立ち眩みまで感じるのは、気のせいだろうか。半ば諦めの表情に変わり、ルカは思わずため息をついた。


「君たちの世界の言葉で構わない。その薬の容器や入れ物に薬品名が書いてあれば、呼び出せるかもしれない」


 ルカの言葉に、散々薬品を調べていた3人の顔が、宝物を見つけたように明るくなる。それを見たナズナとマックスは、顔を見合わせてクスリと笑った。


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