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エルフの里 和解

全滅を知らされた長老は、長のワイルとジョゼを呼ぶ。


「報告は、聞いたか?」


息子のダインを先陣に送り込んでいたジョゼは、力無く話す。


「ああ、分かっていた事とはいえ、何とも言えんな・・・・・・」


「俺は、一族から『神を蔑ろにしたからだ』と、責められているよ」


「それは、儂も同じだ・・・・・・」


「すまない、俺の息子のせいで・・・・・」


3人の間に沈黙が訪れる。

暫くして、ワイルが口を開く。


「謝りに行こうと思う・・・・・」


長老とジョゼは顔を上げ、ワイルを見る。


「一族の者達も賛成している。

 それに、このままだと里が終わってしまうぞ」


長老もジョゼも、その事は理解していた。


「儂らも一緒に行こう」


3人が屋敷を出ると、そこにはワイルやジョゼの一族が集まっていた。

その中から、皆を代表して、1人の男性が長老と長に向き合う。


「【シド】、これは、どういう事なのだ?」


シドの長、ワイルが声をかける。


「ワイルさん、貴方達がどの様な話をしたのかは知りません。

 ですが、1つお聞きしたい、神は我々を見放されたのでしょうか?」


「何故、そう思うのだ?」


「今回の出撃に、神の御一行が、同伴されなかったからです・・・・・」


――そういう事か・・・・・・


長老は、ワイルとシドの話に割って入る。


「それは、違うのだ」


長老は、これ以上誤解を与えないように、正直に話した。


「今回の出撃に関しては、あの方には頼んではおらん、それに、伝えてもおらんのだ」


その事実を聞いた、ワイルとジョゼの一族の者達は、騒ぎ出す。


「伝えていないだと・・・・・」


「どうなっているんだ!」


一族の者達は、長老と長を口々に責め始めた。


「あんたの息子のせいだろ!」


民の中から聞こえた言葉は、ジョゼの胸を貫く。


――わかっている・・・・・・


今回のエルフだけでの出撃は、長老とワイドがジョゼに気を使い、決めた事だった。

その事を知っているジョゼは、民衆の前で俯いていたが、覚悟を決め、1人で前に出る。


「皆、聞いてくれ!」


ジョゼが前に立った事で、皆の注目を集めた。


「この度の件、本当にすまない。

 全て、私と私の息子の責任だ」


ジョゼは、皆の前で謝罪を行った。


「これから、京太様の元に行き、謝罪とお力添えをお願いしようと思う。

 もし、その願いがお受けいただけたら、その時は、長の立場を捨て、先陣を切る事を約束しよう」


ジョゼの覚悟を聞いた民衆は、黙って見ていた。

ジョゼは、その足で京太達の泊っているロウの屋敷に向かう。

屋敷に着くまでの間、同行した長老とワイルは、ジョゼに話しかける。


「お前、長の立場を捨てるのか?」


「ああ、この騒ぎが起きた時に決めていたんだ」


「そうか・・・・・・」


ワイルは、寂しそう一言だけ呟いた。

長老は、その様子を黙って見ている事しか出来なかった。


ロウの屋敷に到着すると、ワイルは、直ぐに面会を求める。


「こちらでお世話になっている京太様にお会いしたいのですが?」


「お待ちください」


用件を聞いたメイドは、京太に伝える前に、ロウに伝えた。


「応接室に通しておきなさい」


「畏まりました」


メイドは、3人の元に戻り、応接室に案内をする。

しかし、そこに姿を見せたのは、ロウだった。


「エルフの里の事で、これ以上京太様に迷惑を掛ける訳にはいかないので、先に私が用件を聞きます」


ジョゼは、覚悟を決めてここに来たが、それ以上にロウも覚悟を決めている表情をしていた。


――俺は、覚悟を決めるのが遅かったのだろうか・・・・・・


ロウの表情を見て、ジョゼは、そんな事を考えてしまった。


相対する場所に、ロウは座る。


「では、用件を聞こう」


「・・・・・・」


ジョゼの返事が無い事に、ロウは、もう一度、声をかける。


「ジョゼ、聞いているのか?」


「ああ、勿論だ」


「では、用件を聞こう」


ジョゼは、息子の仕出かした事の謝罪と

もう一度出撃する際には、力を貸して欲しいと頼みに来たとロウに伝えた。


話を聞いたロウは、厳しい口調で質問をする。


「ならば何故、張本人が来ないのだ」


「・・・・・そうしたいのは、私も同じだ。

 だが、息子は、もう、いないのだ・・・・・・」


ロウは、その言葉で全てを理解した。


「・・・・・・先の遠征に送り出したのか?」


「・・・・・ああ・・・・・だが、結果は、お前も知っているのだろ・・・・・」


「・・・・・そうか、すまなかった」


「構わんよ、それより京太様に会わせては、貰えないだろうか」


「わかった、話をしてみよう」


「感謝する」


ロウは席を立ち、部屋を出る為に、扉の前まで足を進めたが、そこで立ち止まる。


「良い返事が貰えるといいな」


ジョゼにそう伝えると、部屋から出て行った。


暫く待っていると、扉が叩かれ、ロウが京太を連れて入って来た。

すると、3人は立ち上がり、長老が挨拶をする。


「京太様、この度は、貴重な時間を私共の為に、割いて頂き有難う御座います」


「気にしないで下さい、それと今回の事については、

 ロウから粗方の事情は聞きましたので、本題に入りましょう」


京太の発言に3人は、安堵の表情を浮かべた。


京太自身は、竜魔人は、放置できないと判断していたが、エルフの頼みでここまで来た為、

勝手に動く事はせず、この街に滞在して待っていた。

その為、3人が顔を見せた時点で出撃を決めていたのだ。


話し合いは、スムーズに進んだが、出兵に関してだけが問題になった。


「前回の出撃で100人のエルフが、犠牲になった。

 だから、今回は、僕達だけで行くよ」


「お待ちください!

 それでは、私達の気持ちが収まりません」


ジョゼは食い下がるが、京太は首を横に振る。


「気持ちは嬉しいけど、これ以上被害を出すと、この里の維持も難しくなると思う。

 だから、気にしないで下さい」


――この方は、ずっと待って下さったのだな・・・・・それに、里の事まで・・・・・・


長老は、京太に甘える事にしたが、ジョゼは、道中の案内役を買って出た。

道を知らない京太は、本人の意思を尊重した。


「案内役は、ジョゼにお願いするよ、頼むね」


「勿論です、お任せください」


その後は、出撃に関しての話し合いが行われ、2日後にこの里を旅立つ事が決まった。


出撃の日、大勢のエルフ達が見送る中、京太達は、亜人連邦に向けて出発した。

亜人連邦の領内までは、1日で着く事は出来るが、

そこから1日半を掛けて、亜人連邦の首都に到着した。


ジョゼは、直ぐに竜人族の族長【アーチボルト】に面会を求めた。

その願いは、直ぐに受け入れられて、そのまま屋敷の中に案内をされる。


屋敷のとある一室で待っていると、アーチボルトが姿を見せる。

ジョゼが立ち上がったのを見て、京太達も立ち上げる。


「アーチボルト殿、早急に対応頂き、感謝する」


「こちらも手詰まりなのだ、助力、感謝する。

 それで、お仲間の方々は、どちらに?」


「今回は、こちらにおられる方達だけだ」


アーチボルトは、怪訝な表情を見せる。

そして、先程とは、打って変わった態度で接してきた。


「ジョゼ殿、何かの冗談か?

 たったこれだけで何が出来ると言うのだ!

 それに人族など、われら竜人の足元にも及ばない種族だぞ」


「アーチボルト殿、ご意見は尤もだ。

 しかし、この方達は違うのだ」


ジョゼは、アーチボルトに言えない範囲を除き、説明を繰り返し行ったが、

それでも態度を改める事はしなかった。

だが、その熱意に負け、参加する事だけは認められた。


「わかった、その代わり、わが軍への参加は遠慮して頂きたい。

 それと、貴方達だけであまり街をウロウロしないで下さい。

 竜人族の中には、人族を快く思わない者も多いのでな」


それだけ伝えると部屋から出て行った。


アーチボルトが去った後、ジョゼは、京太に謝罪をする。


「京太様、申し訳御座いません。

 私の力不足の為に、この様な形になってしまいました」


「気にしなくていいよ。

 それに僕達だけで、行動しても問題無さそうになったから、感謝したいくらいだよ」


「はぁ・・・」


ジョゼには理解出来なかったが、京太達は、この戦いにエルフの軍勢として参加はするが

他の軍隊に編入される事を受け入れるつもりは、無かった。

その為、参加だけを認められたこの状況は、京太達にとっては、嬉しい事だったのだ。


屋敷から宿に戻ると、京太達は一室に集まり、今後の相談を始めた。

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