合流
落ち着きを取り戻しつつある王都を旅立つことを決め、アクセル王に挨拶に向かった。
今日は、謁見の間では無く、執務室で会う事になっている。
扉を叩き、執務室に入ると、アクセル王は既に仕事をしていた。
「失礼します」
京太が声を掛けると、アクセル王はペンを置き、ソファーに腰を掛けた。
「京太殿も座ってくれ」
「はい、有難う御座います」
向かいのソファーに腰を掛けると、メイドが紅茶を運んできた。
紅茶を置くと、メイドは、一礼をしてでて行った。
「今日、アトラ王国に戻るそうだな」
「はい、色々とお世話になりました」
「ははは、お世話になったのは、こちらの方だ。
儂を治したり、この国を救ってくれたではないか」
「それは、アトラ王からの頼み事でしたから」
アクセル王は、少し寂しそうに呟く。
「そうだったの、儂が先に知り合っておれば、・・・・・」
「ははは・・・また遊びに来ます」
「ああ、本当に来てくれるのだな」
「はい、勿論です。
それと、1つお知らせしないといけない事が、ありまして・・・・・」
言い難そうにしている京太だったが、アクセル王に促され話し出した。
「シラスの街をご存知だと思いますが・・・」
「ああ、我が国の領土だからな」
「はい、そのシラスの街の領主ですが、反王国派の人間だったのです」
「なんと、それは誠なのか!?」
「はい、事実です」
その言葉に、アクセル王は頭を抱えた。
「あそこの領地は、我が国の食料をささえる【グリム領】に次ぐ農業地区なのだ」
「グリム領?」
「ああ、王都に一番近い街がある領地の事だ」
――それで、あの街は栄えていたんだ・・・・・
グリムの街が、栄えていた理由は分かったが、
それ以上にシラスの街の事を伝えねばと思い、話を続ける。
「シラスの街ですが、領主や他の貴族達は、すべてが反王国派の人間でした。
それで、僕達が街に立ち寄った時に襲われましたので、反撃を・・・・・・」
そこまで聞くとアクセル王は、身体を乗り出す。
「もしかして、殲滅したのか?」
「はい・・・・・」
その返事を聞き、王は笑顔になる。
「そうか!それは良かった」
「それで、現在領主が不在の状態なので、誰かを送って頂けないかと思いまして」
「では、今は誰が管理をしているのだ?」
「イライザです」
王は耳を疑った。
「誰?」
京太は、笑顔で伝えた。
「アクセル王も御存じのイライザ王女ですよ」
「何故、早く言わんのだぁ!」
アクセル王は、メイドを呼び、エリノア王妃を呼んで来るように伝えた。
アクセル王の様子から、メイドは急いでエリノア妃を呼び、執務室に案内をした。
エリノア王妃は、執務室に来ると、王に事情を聞く。
「貴方、どうしたのですか?」
「ああ、実は・・・・・」
アクセル王は、今、シラスの街を管理しているのが、イライザだと告げた。
その話を聞くとエリノア王妃は、第2王女のマリアベル アクセルを呼んだ。
「お母様、御用でしょうか?」
「今すぐシラスの街に行きます。
至急、荷物を纏めなさい」
「はい、畏まりました」
エリノア王妃は、アクセル王に告げる。
「貴方、今は貴族が不足していますが、シラスは大切な領地です。
ですので、私とマリアベルで赴きます」
「でも、護衛はどうするのだ?」
「騎士団長を連れて行きます」
アクセル王は悩んだが、他に手が無かったので、シラスの街はエリノア王妃に任せる事にした。
「エリノアよ、頼んだぞ。
それから、イライザ王女に宜しくと伝えてくれ」
「わかりましたわ」
「それから京太殿、シラスの街迄の護衛を頼んでも良いか?」
「通り道ですので、構いません」
「では、準備が出来次第、出発してくれ」
京太は、出発する事を仲間に告げ、準備を急いだ。
お互いの準備が整うと、京太達と王妃達は王都を出発した。
エリノア王妃達は、エリノア王妃の他に、マリアベル第2王女、騎士団長ウォルフ、
メイドのキャシー、カレラ、その他に3人の兵士が同行した。
シラスの街に到着するまでの間、魔獣は現れたが、
他に事故も無く、予定よりも早く到着する事が出来た。
シラスの街に着くと、エリノア王妃は、マリアベルを連れて屋敷に急いだ。
屋敷に入ると、小さな子供達が一生懸命働いていた。
「これは、どういう事かしら?」
エリノア王妃が悩んでいると、少女が話し掛けて来る。
「こんにちわ、お客様でしょうか?」
「貴方は?」
「私は、見習いお手伝いの【エル】と申します。
どなたかに御用でしたら、お伺いいたします」
たどたどしくも、エルは丁寧に対応をした。
「領主様は、何処にいるの?」
「ご案内します」
エルは、エリノア王妃達を執務室に案内をする。
「こちらです」
エルは、扉を叩き、開けると、イライザに伝える。
「お客様がお見えです。
お通ししてもよろしいですか?」
「はい、構いません」
執務室に、エリノア王妃とマリアベル王女が入る。
「イライザ王女、お久しぶりですね」
イライザは、ペンを止め、顔を上げると驚く。
「エリノア様、それにマリアベル、どうしてここに?」
「それは、こちらのセリフです。
まさか、貴方が、この地を守ってくれていたなんて先日まで知りませんでしたわ」
「これには、理由がありまして・・・・・」
エリノアは、イライザに笑顔を向ける。
「本当に、助かりました。
この度の国の一大事に、貴方も手を貸してくれていたのですね。
有難う御座います」
エリノアは礼を言うと、頭を下げた。
イライザは、慌てて止める。
「エリノア様、お顔を上げて下さい」
「フフフッ貴方は変わりませんね」
エリノアは、イライザと顔を見合わせて笑う。
その時、マリアベルが話しに参加してきた。
「イライザ様、いつ、ご結婚されたのですか?」
「え!?」
「ラゴさんから聞きましたの、教えて頂けませんか?」
マリアベルは、目を輝かせていた。
「それは・・・また今度で・・・・・それよりも、この領地は、エリノア様が見られるのですか?」
「そうよ、当分は私が見る事にしましたの。
先だっての事件で、貴族が足りなくなりましたので、
王が、次の領主を決めるまでは、私とマリアベルが領主になりました」
「わかりました」
イライザが声を掛けると、アネットが入って来る。
「イライザ様、御用でしょうか?」
「明日、商人達に来るように伝えて下さい」
「畏まりました」
その後、イライザは、エリノア王妃、マリアベルと打ち合わせをし、現状の報告を済ませた。
夕食の時間、京太達は久し振りに全員が揃っていた。
「王都組、シラス組、どちらもお疲れ様でした。
アトラ王に頼まれた事も、無事に達成できたし、この街もイライザを始め、ソニア、セリカ、
ラム、ミーシャ、サリーが、頑張ってくれたおかげで、平和になったようだから
本当に感謝するよ」
京太の挨拶に続き、エリノア王妃が挨拶をした。
「この度は、我が国の危機に手を貸して頂き、感謝致します。
アトラ王国には、改めてお礼を申し上げようと思っています。
それとは別に、あなた方にはお世話になりっぱなしで、なんと申し上げて良いか分かりません。
これからも、お互いに国を大切にし、仲良く致しましょう」
エリノア王妃の挨拶が終り、食事を始めた。
その時に京太は気付いた。
「あれっ、アネット、どうしてここにいるの?」
アネットは、配膳をしながら京太を睨む。
「京太様が、私を連れて行って下さらないから、勝手に来ました!」
「そうだったのか、次から言ってくれたら、ちゃんと連れって行くから」
「本当ですね!約束しましたよ!」
アネットは、念を押すように、約束を確認した。
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