襲撃者
男は、その場を離れると、とある場所に向かった。
その場所に着くと、男は集まっていた者達に話を始めた。
「あのメイドをしていた女の所に金持ちの男がいるのは間違いないぜ」
「それは、本当か?」
「ああ、間違いない、近くの者達にも飯を振る舞っていたからな」
「なら、そいつを襲えばいいんだな」
「そうだ、それに女も頂こうぜ、色々いたが、あのメイドも結構いけるぜ」
「他にもいるのか?」
「ああ、いい女ばかりだったぜ」
それを聞いた男達は、下種な笑いを浮かべながら作戦を話し合っていた。
様子を伺っていた男は、京太が、売春婦に銀貨を渡したところを見ていたのだ。
そこから、コッソリと後を付けていたのだった。
「今回は、いい金になりそうだな」
「それで、作戦は?」
「いつも通りでいこう、眠りの草を燃やして、メイドの家に流し込む。
それで、寝静まった頃に、襲えばいいだろ」
「そうだな、あの草なら、簡単に手に入るからな」
男達は、作戦を決めると、眠り草を準備し、深夜を待っていた。
皆が寝静まった頃、男達は動き出した。
大量の眠り草を抱えてサリーの家に近づくと、風向きを確認した。
「おい、こっちだ」
風上に、眠り草を山の様に積み上げると、火を点けた。
「ゆっくり仰げよ」
「わかってるって」
男達は、既に作戦は成功したと思い、笑みがこぼれていた。
「もうすぐだな」
「ああ、金も女も俺達の物だ」
「男は、どうするんだ」
「んなもん殺すぜ、生かしておく意味が無いからな」
男達は、そんな会話をしながら眠り草を仰いだ。
風に乗り、どんどんサリーの家の中に流れ込んだ。
元々ボロボロで、隙間風が当然の様に吹いている家だったので、
煙が充満するのにも時間が掛からなかった。
「おい、そろそろいいんじゃねえか」
「そうだな」
男達は、仰ぐのを止めて、サリーの家に近づいた。
中の様子を伺う為に、静かに音を聞いたが、物音ひとつ聞こえてこなかった。
「よし、行くぞ!」
見張っていた男の号令で、家の中に乗り込もうとした。
しかし、家の中に入る事は出来たが、彼女達に近づく事が出来なかった。
「なんだ!何がどうなっているんだ!」
「わかんねえよ!」
慌てる男達を他所に何処からか声が聞こえて来た。
「僕の仲間に何をする気ですか?」
男達が振り向くとそこには、少年が立っていた。
「金持ちの男!」
見張っていた男が叫ぶと、仲間達が集まってきた。
「ガキじゃねえか」
「なんだよ、驚かせやがって」
男達は、剣を抜いた。
「とっとと殺そうぜ」
「そうだな、俺は、男より女に興味があるぜ」
口々に好き勝手な事を言いながら、京太に襲いかかって来た。
京太もエクスカリバーを取り出し、襲い来る男達を、次々に切り倒した。
「なんだ、こいつは!」
10人居た筈の仲間が、一瞬の内に半数に減らされていた。
「もしかして、俺達は間違ったんじゃねえのか」
「どういう事だよ!」
「手を出しちゃ駄目な奴だったんじゃねえのかって言ってるんだよ!!」
「どっちにしろ、もう遅えよ!」
諦めて襲い掛かったが、敵う相手ではなかった。
京太は、剣を躱しながら、相手の首を刎ねた。
残ったのは、見張りをしていた男だけだった。
「くそう!なんでだよ!なんだこうなるんだよ!」
男は、悔しそうにしながら剣を振り上げた。
その剣を躱すと、すかさずエクスカリバーで体を真っ二つにした。
京太は、男達の死体を全てアイテムボックスに収納した。
「これで良しと・・・」
京太は、家の中に張っていた防御魔法を解くと、そのまま家に入って行った。
皆が寝ている事を確認すると、静かに隣の部屋で眠りについた。
翌朝、目を覚ますと、京太の横には、クオンが寝ていた。
――なんで・・・
京太は、優しくクオンを起こした。
「クオン、朝だよ」
「ん・・・・・」
「もう朝だよ」
「ん・・・お兄ちゃん・・・おはよう・・・」
「クオン、どうして此処で寝ているの?」
「夜、トイレに行ったら、お兄ちゃんがいなかったからです」
「そうか・・・ごめんよ」
京太の返事を聞くと、クオンは頷いた。
2人は起き上がり、皆のいる部屋に向かった。
部屋に入ると、既にサリーが食事の準備をしていた。
「サリー、おはよう」
「京太様、お早うございます」
「皆も起きているみたいだね」
「はい、もうすぐ出来ますのであちらでお待ちください」
京太は、皆の所で食事が出来上がるのを待った。
食事が終わると、今日の予定を話した。
「今日は、市場で食材やサリーとノルンの服と旅の装備を買おうと思っている、
それで、支度が整い次第、出発するからね」
「はい」
「わかったわ」
サリーとノルンは、家の中から必要な物をバックに詰めた。
その後、皆と市場に向かった。
市場に向かう途中、京太は、ふと思った事を口にした。
「旅をしながら仕事をしないとな・・・」
その言葉にセリカが、答えた。
「冒険者になりませんか?」
「そうね、いい考えだわ」
ソニアも賛成した。
「冒険者か・・・・・」
「冒険者になれば、魔獣をお金に換えやすいし、便利だよ」
「でも、依頼を受けないと駄目なんじゃないの?」
「そんな事は、ありませんよ、それにもし受けるとしても自分で選べますから」
「まぁ、ギルドからの指名もたまにはあるけどね」
2人の話を聞き、冒険者になる事を決めた。
「わかった、ギルドに行って冒険者になるよ」
「じゃぁ、市場の後にギルドに行きましょう」
セリカの言葉に、京太は従う事にした。
買い物を済ませると、皆でギルドに向かった。
ギルドは、街の入り口に存在していた。
ギルドに入って見ると、正面に銀行の受付のような場所が3ヵ所あり、その隣には待合室があった。
待合室の壁には、大きなボードが貼り付けてあり、そこには依頼が張り出してあった。
京太達は、受付に向かった。
3ヵ所の内、一番左の受付が空いていたので、京太はそこに進んだ。
「あっ!ちょっと・・・」
ソニアは、止めようとしたが間に合わなかった。
「すいません、あの・・・」
京太が受付の女性に声を掛けると、近くにいた厳つい男が、京太を後ろから捕まえた。
「おい!クソガキ、ここは遊び場所じゃねえんだよ、
それにここは、俺様みたいなAランクの冒険者専用の場所だ、とっとと消えな!」
厳つい男は、京太を放り投げた。
「お兄ちゃん!」
「京太様!」
京太は、身を翻し、壁への衝突を防いだ。
「びっくりした!」
京太が無事な事にクオン達は安堵した。
「よかった・・・・・」
その様子を厳つい男は見ていた。
「ほう・・・やるじゃねえか」
そう言うと厳つい男は、京太に殴り掛かった。
――なんで、攻撃してくるの!?
京太は、慌てて躱した。
周囲にいた冒険者達は、京太と厳つい男の対決に盛り上がり始めた。
「いいぞ!小僧、頑張れ!」
「おい、どっちが勝つか賭けようぜ」
「俺は、コルドに賭けるぜ」
「俺もだ!」
冒険者達は、賭けを始めた。
【コルド】と呼ばれていた厳つい男に殆どの者が賭けた。
その事に不満を持ったクオンは、買って貰った服を脱ぎ、掛け金にして京太に賭けた。
「お兄ちゃんは、絶対負けないもん!」
「おい、嬢ちゃん負けたら裸で帰るんだぞ、本当にいいのか?」
「うん、いいよ。
でも、お兄ちゃんは、負けない!!」
「ハハハ、まぁ好きにしな、でもこれだけじゃ足りないから仲間のお姉ちゃん達も裸で帰って貰おうか」
ソニアとセリカは、その言葉を聞いて怒りを覚えた。
「あんた達!調子に乗るんじゃないよ!」
「お前、ソニアだろ、この兄ちゃんと組んでいたのか・・・それで、どうするんだよ、
お前達が賭けに乗らないのなら、この嬢ちゃんが賭けに負けたら奴隷だな」
「分かったわよ、賭けに乗るわよ」
その言葉を聞き、冒険者達は盛り上がった。
「おい、この兄ちゃんが負けたら、仲間の女達が全裸になるらしいぞ!」
「ホントか!!」
「コルド!負けんじゃねえぞ!」
冒険者達は、賭け金をテーブルの上に置き、先程よりも盛り上がった。
不定期投稿ですが、宜しくお願い致します。
遅くなりましたが、ブックマークの登録をして下さった方々、有難う御座います。