クオン、エクスの戦い
エクスとクオンは、話し合いをしていた。
「いいエスカ、此処の人達は、私達が絶対守るのよ」
「うん、お姉ちゃんと一緒です、負けません!」
2人が会話をしていると、家の扉が叩かれた。
コンッコンッ!
「爺さん、居るかい?」
フォードは、聞き覚えのある声だったので、扉を開けた。
「なんだ、いるじゃないか、これ、うちの畑で採れたんだ」
「いつも、すまないねぇ」
「気にすんなって、それより、誰かいるのかい?」
「ああ、孫たちが来ていてね、久し振りだったから、騒がしかったかもしれんが、勘弁しておくれ」
「そうかい、良かったな」
男は、そう言って去って行った。
クオンは、『ホッ』としたが、エクスは、入り口を睨みつけていた。
「エクス、どうしたの?」
「あの男、怪しいです」
「ホント?」
「はい、絶対です」
その言葉を聞き、クオンは、フォードに聞いてみた。
「お爺さん、さっきの人は、知り合いですか?」
「はい、ご近所の方です。
私が、此処に引っ越して来た後に、隣に越して来られました」
「家族の方とかいます?」
「いえ、お1人だったと思います」
「仕事は?」
「さて、聞いた事は御座いませんが、農家の方では?」
エクスが、話に割り込む。
「手は、綺麗でした」
フォードは、混乱していた。
「どういう事でしょうか?」
「見張りです、絶対見張りです!目つきおかしかったです!」
「妹が、怪しいと言っています。
なので、バリケードを作ります」
「そうです、バリケードです!」
クオンは、サリーを誘い、家の正面入り口以外を封鎖する事にした。
裏口には、テーブルを持って行き、釘で打ち付け、窓には、板を打ち付けた。
「これで、入ってきたら音がします」
「そうね、それからサリーさん達は、扉と窓から一番遠い場所で待機してください」
「はい!」
サリーは、クオンを抱いて、言われた場所に移動した。
その頃、フォードの家を訪れた男は、フィリップ オーウェンの屋敷に向かっていた。
――一応、知らせた方が・・・・・
男は、屋敷に着くと、入り口の扉を叩く。
すると、中から執事のアースラが現れた。
「何用ですか?」
「フォードの家に孫が来ているんですよ」
「そうですか、そのまま見張っていて下さい」
「はい」
男は、アースラから、銅貨を数枚貰うと、屋敷から去って行った。
――孫ですか・・・確か、あの男に孫はいなかった筈では・・・・・
アースラは、屋敷の中に入ると、フィリップ オーウェンに報告をした。
「旦那様、フォードの隣に住まわせている【ビル】から、
フォードの所に孫が来ていると報告がありました」
「孫だと、あの老いぼれに孫などいたか?」
「いえ、結婚もしていませんし、兄弟もいません
なので、孫は、いる筈もありません」
「そうだな・・・・・詳しく調べさせろ!」
「畏まりました」
アースラは、フィリップ オーウェンの部屋から出ると、兵士達に指示を出した。
「フォードの身辺を探れ、怪しい動きがあれば、直ぐに知らせろ」
「はっ!」
兵士達は、そのまま街に散っていった。
その頃、フィリップ オーウェンの部屋には、隣の部屋にいたエレオノールが来ていた。
「何事なの?」
「いや、大した事では無い、アースラの前に勤めていた執事の事だ」
「そう・・・・何か心配事でもあるの?」
「わからん、だが、用心はした方がいいだろ」
エレオノールは、呆れた顔をした。
「ふ~ん、用心するくらいなら適当に罪人にして捕らえてしまえばいいのに・・・・」
「そうなんだが、あの老いぼれが、中々それらしい事をしなくて困っているんだ」
「そんなの適当でいいでしょ、今なら街を抜け出そうとした者の手助けをしたとかで」
その意見を聞き、フィリップ オーウェンは喜ぶ。
「おお、それで行こう、流石、エレオノールだな!」
「ありがと、それよりも私の部下を殺した奴を早く見つけてよ」
「分かっている、色々と調べさせているから、捕まえるのも時間の問題だから心配するな」
「あなたが、そう言うならもう少し待つわ」
エレオノールは、フィリップ オーウェンの首に手を回し、抱き着いた。
――ホントに、この馬鹿は、利用価値があるわ・・・・
街に散った兵士達は、フォードについての聞き込みをしていた。
その中で、フォードが大勢で歩いていたとか、
フォードと一緒に歩いていた者達が、泊まっていた宿が判明していた。
宿屋の証言から、最初は9人だったが、この街に来てから12人になっていた事がわかった。
兵士は、その情報を屋敷に持ち帰った。
報告を受けたアースラは、フィリップ オーウェンの指示に従い、
その者達は、封鎖されている街を抜け出そうとした者達だと兵士に伝え、
フォード共々、捕まえて来るように指示を出した。
指示を受けた兵士達は、30人の兵団で、フォード捕縛に向かった。
兵士達は、フォードの家に到着すると、逮捕状を読み上げる。
「この度、フォードは、街の大事で封鎖している事を知りながら
家に匿っている者達を街から逃がす為に手を貸した罪により、逮捕する」
それを聞いたフォードは、言葉を失った。
「そんな・・・・・」
その横でエクスが言う。
「あの男です、さっきの男です!」
その言葉で、フォードは、自分がずっと監視されていた事を知った。
「私は、見張られえていたのか・・・」
「おじいさん、大丈夫。
私とお姉ちゃんが守ります」
「そうです、私達が守りますから安心してください」
「有難う御座います、そんなに小さいのに・・・・・」
フォードが感謝を告げるが、2人はそれ以上に『小さい』という言葉に不満を持った。
「ちっさいは、禁句です!」
「もう、大人です!」
「すいません、もう言いません」
謝罪の言葉を聞くと、2人は両手に剣を構えた。
「サリー、私達が飛び出したら、扉を閉めて誰も入れない様にして下さい」
「わかりました」
「では、エクスいくよ」
「はい!」
2人は、家から一斉に飛び出すと、そのまま兵士達に突撃をした。
扉を開ける大きな音に驚いている兵士の元に、一気に詰め寄ると、そのまま切りつけた。
兵士達は、街で集めた情報から、この中には老人と女だけだと知っていた。
その為、抵抗されても些細なものだと決めつけていた。
ところが、実際は、両手に剣を持った少女に30人の兵士が蹂躙されていた。
思いもよらなかった惨状に、剣や槍を捨て逃げようとする者、混乱してオロオロする者ばかりで
クオンとエクスの相手にはならなかった。
30人の兵士を倒す事には成功したクオンとエクスだったが、
騒ぎを聞きつけた街を巡回していた兵士が集まり始めた。
「お姉ちゃん、30人位来ました」
「大丈夫、まだやれるでしょ」
「当然です!」
2人は、剣を構え直し、敵に向かって走った。
兵士達は隊列を組み、槍を持つ者を先頭に置いて抵抗したが、少しずつ倒されていった。
「おい、このままだと負けるぞ」
「どうする?」
兵士達に、動揺が見え始めた頃、隊列の後ろから叫び声と悲鳴が聞こえて来た。
兵士達が振り返ると、そこには剣を持つ少女が、兵士を倒す姿があった。
『殺される!』と思って逃げようと隊列を離れた兵士は、突然飛んできた風の刃で首を落とした。
「ひぃぃぃぃ!」
「ダメだぁぁぁ!た、たすけて!」
剣を捨て、逃げようとするも、襲い掛かる風の刃に抵抗も出来ずに次々と倒された。
そして、応援で駆けつけた30人の兵士も、前の30人と同様に、全員が帰らぬ人になった。
戦いが終り、クオンとエクスが剣を収めると、途中から合流していたソニアとセリカが近づいて来た。
ソニアは剣を収める。
「ふぅ~、皆大丈夫?」
「はい、問題ありません」
「ソニアさん、セリカさん、助かりました、有難う御座います」
2人の言葉を聞き、ソニアとセリカは笑顔を向けた。
「兵士達が、走っている姿を見つけたから後を追ってみたら、貴方達がいたから驚いたわ」
「私達も突然現れるから驚きました、でも、助かりました」
クオンの素直な言葉に、ソニアは抱き着いた。
「本当に可愛いなぁ~」
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