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屋敷での出会い

京太は、兵士達に屋敷の裏にある倉庫に運ばれていた。

倉庫に入ると、奥に進み、隠し扉を開け、地下に向かった。

地下室は、腐敗臭が充満していた。


「ここは、いつ来てもすげえ匂いだな」


「とっととこいつを運んで戻ろうぜ」


兵士達は、京太を急いで運んだ。

京太は、そっと目を開き、周囲を見ると、

牢の中には、生きているのか分からない状態の者達が、鎖に繋がれていた。

壁に繋がれている者、鎖で磔にされている者や、両足を切断されている者など様々だった。


――ここは、酷いな・・・


兵士達は、奥の牢に京太を運び込むと、天井から垂れ下がっていた手枷に繋いだ。


「これでいいだろう、さぁ、戻ろうぜ」


兵士達は、牢の鍵を閉めると、急いで出て行った。

兵士達が、出て行った後、京太は、ゆっくりと顔を上げた。


「さてと・・・」


京太は、痺れ薬を飲まされたが、既に効果は切れていた。

切れていたというよりは、神の体には、薬の効果は、殆んど無かった。

薬を飲まされた直後は効いていたが、兵士に運ばれている時には、既に動ける状態だった。

だが、何処に連れて行かれるのかが気になったので、そのまま運ばれていた。


京太は、風の魔法を唱えた。


「ウインドエッヂ」


放たれた風の刃は、天井から吊り下がっていた鎖を切った。

自由になった京太は、風の魔法で鉄格子も切り落とし、牢から出ると、他の牢に向かった。

一番近くの牢の中には、全裸の女性が、磔にされていた。


「大丈夫ですか?」


京太の問い掛けに、女性は、ゆっくりと顔を上げた。

彼女は、両手、両足の指が無かった。


「あぅらぅらぅぅぅ」


舌も切られていて上手く話す事が出来なかった。


――あいつら・・・・・


京太は、怒りを覚えた。

彼女を、鎖から外し、床に寝かせると魔法を掛けた。


「リカバリー」


彼女を光が包みこんだ。

暫くすると、無くなっていた個所が全て元に戻った。


――よし・・・


再び魔法を使う。


「フル ヒール」


再度、光が彼女を包むと、怪我も癒え、傷跡も消えた。


「え!?」


驚く彼女に問いかけた。


「大丈夫ですか?」


彼女は、喋れる事や傷が無い事に涙を流して喜んだ。


「有難う御座います、有難うございます」


お礼を言う彼女に、京太は近くにあった布を掛けてから、此処に連れて来られた経緯を聞いた。


「あの、どうしてここに連れて来られたのですか?」


顔を上げた彼女は、ゆっくりと話し始めた。


「私はソニア、4人グループの冒険者でした。

 ある時私達は、ホルン子爵からギルド経由で依頼を受けました。

 依頼は、近隣の魔獣狩りという簡単な依頼でしたので無事に任務を完了しました。

 そして、この屋敷に、依頼完了の報告に来たのですが、その時に食事を振る舞われまして・・・

 断る訳もいかず、ご馳走になる事にしたのですが、食事の中に睡眠薬が入っていました。

 そして、気が付くと此処に運ばれていて・・・・・」


ソニアは、そこまで話をすると、下を向いた。


――話難いのだろう・・・


「すいません・・・・その・・・この牢に連れて来られた後は、あなたの見た通り、指を切られたり、

 舌を切り取られました。

 その後、あの男と兵士達は、私を(もてあそ)びました」


「あの男とは、ダイアン ホルンですね」


「はい・・・あいつは、絶対に許しません・・・・・」


ソニアは、血の涙でも流しそうな形相をしていた。


「他の仲間は、どうしましたか?」


その質問に、ソニアは、『はっ!』として牢から飛び出した。

すると、離れた牢からソニアの声が聞えて来た。


「セリカ!セリカ!」


セリカと呼ばれた少女は、両足が無くなっていた。

傷口は腐り、周囲には、酷い匂いが充満していた。


「セリカ!返事をしてよ!」


セリカは、気が付いたかのようにゆっくりと声を出した。


「ソニア・・・・・なの?」


ソニアは、セリカが生きている事に喜んだ。


「待ってて、今、助けるから」


ソニアは、京太の元に走った。


「お願い、セリカを助けて!」


「わかったから、落ち着いて」


「うん・・・・・そうね、ごめんなさい」


京太は、牢を破り、セリカに近づくと先程と同じ手順で魔法を使った。

すると、セリカの無かった足も元通りになり、体も傷も完治した。


「ホント・・・・・なの?」


「驚いたでしょ、わたしもビックリしたわ」


「この人は、どなた?」


「えとね、京太だって、なんか凄い人よ」


「あの・・・京太さん、助けて頂いて有難う御座います」


セリカは、京太にお礼を言うと、他の人も助けて欲しいと頼んだ。


「誠に勝手なお願いですが、生きている者がいましたら助けて頂けませんか?」


「勿論、そのつもりだよ」


その返事を聞き、2人は京太と共に牢を出た。

牢を出ると京太は、魔法を使った。


「ウインドエッヂ」


京太は、全ての牢の鉄格子を切り落とした。


「凄い・・・」


「これで、どこでも入れるよ」


2人は、生きている者を探した。

だが、生存者は、あと1人だけだった。

少女は、体中に痣があり、謎の斑点が出ていた。


――病気?


少女は、衰弱していた。


「もう、大丈夫だからね」


京太の問いに、少女は、『コクっ』と頷いた。

【リカバリー】をかけて状態を戻した後、【フル ヒール】で傷を治した。


「話せるかい?」


少女は頷いた。


「名前は言える?」


「クオン」


「クオンは、どうしてここに居るの?」


「お父さんとお母さんと旅をしていたの・・・そしたら・・・」


クオンは、俯いた。

目には涙が溜まっていた。


その様子に京太は察しがついた。

両親と旅をしている時に、この街でダイアン ホルンと知り合い、騙されたのだろうと・・・。

クオンは、溜まっていた涙を拭うと話を続けた。


「お父さんとお母さんは、死んじゃったの・・・・・おじさんと叔母さんの言う通りに飲み物を飲んだら

 動かなくなったの、その時に、おじさんが笑って言ったの、死んだぞって」


京太は、煮えたぎる思いだった。


――子供の前で殺したのか・・・・・許さない!


クオンを連れて牢を出て、2人と合流した。

ソニアとセリカは、項垂れていた。


「・・・・・・」


「死んでたよ・・・・アーノルドもイリーナも・・・・」


「そうか・・・」


「うん・・・」


「これから、どうするの?」


「仇を討ちます」


「そうだね、僕も許せないから手伝うよ」


「「ありがとう」」


「ところで、2人は、何が出来るの?」


「私は、剣士です」


ソニアが告げた。


「私は、後衛で魔法が使えます」


セリカが告げると、隣でクオンが下を向いた。


「クオンは、何も出来ません」


「わかった、セリカは、クオンを守ってくれる?」


「わかりました」


「じゃぁ、此処から出ようか」


京太は、そう言うと出口に向かった。

地下から、倉庫の中に出たが、見張りはいなかった。

倉庫の中を調べると、木箱から、見知らぬ薬品や剣が見つかった。


――貰っておこう・・・


剣をソニアに渡し、薬をアイテムボックスに入れて鑑定をした。

薬は、毒薬と痺れ薬、回復薬だった。

京太は、木箱毎、薬品と剣をアイテムボックスに収納した。

その後、倉庫を出て、兵舎の方に歩いていると、兵士に見つかった。


「何故、貴様が!」


京太は、エクスカリバーをアイテムボックスから取り出し、兵を切り倒した。


「速い!」


その行動の素早さに、ソニアとセリカは、驚いていた。

兵を倒した後、そのまま進み、兵舎の見える場所まで来ると、魔法を唱えた。


「ダーク プレス」


兵舎の上空に、複数の黒い球体が現れた。

その途端、兵舎は、凄い音を立てながら重力によって潰れ始めた。


「え!?」


ソニア、セリカ、クオンの3人は、その様を見ていた。


「あれって、何なの!!」


驚いていると、兵舎はあっと言う間に、轟音を響かせて完全に潰れた。


「行こうか」


何事も無かったかのような表情で、京太は歩き出した。


「ちょっ、ちょっと待ってよ!」


3人は、慌てて付いて行った。



不定期投稿ですが、よろしくお願いいたします。

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