出会い
スミスは、京太に知らせた。
「旦那様、昨日の男が来ましたが、如何なさいますか?」
「うん、僕が行くよ」
「畏まりました」
建物を出て、砦の入り口に向かっていると、色々な所から声が掛かった。
「旦那!何時でも呼んでください!」
「俺、盾位にはなりますよ!」
「あははは、大丈夫だよ、ありがとう」
京太は、入り口に辿り着くと、結界の外に出た。
「ここに何か用ですか?」
「貴様は、何者だ!
ここは、私の持ち物だ、とっとと出て行け!」
「ここは、貴方の持ち物ですか?」
「そう言っているだろ!」
「ここは、盗賊のアジトでした。
という事は、貴方は盗賊の仲間ですね」
「チッ、このガキが、調子に乗ってんじゃねえぞ!」
アルゴは、奴隷に命令をする。
「【ザク】、このガキを殺せ!」
ザクと呼ばれた奴隷は、声を上げ、襲って来た。
「ザク、だったか、自由になりたいと思わないか?」
京太の問いに答える事も無く、持っていたこん棒を振るった。
――無駄だったか・・・
京太は、剣を取り出した。
そして、再び襲い来るザクの首を落とした。
地面に転がる首に、アルゴは、腰を抜かした。
「ひぃぃぃぃ!」
――尋問する必要があるな・・・・・
京太は、アルゴを殺さず、捕らえた。
京太は、アルゴを地下牢に連れて行く事にした。
「誰か、外の馬車を頼む」
そう言い残して、アルゴを連れて地下牢に向かっていると、馬車の中を見た男が声を掛けて来た。
「旦那様、馬車の中に女の人がいます!」
京太は、足を止めた。
「生きているの?」
「はい、どうやら奴隷のようです」
「わかった、スミスを呼んで、奴隷の介抱を頼んでくれ」
「わかりました」
京太は、アルゴを地下牢に放り込むと、急いで馬車に向かった。
馬車の近くには、メイド達が、衣服や薬草、水を持って待機していた。
「京太様!」
「スミスは?」
「馬車の中にいます」
スミスを呼び、容態を聞く。
スミスは、馬車の中から出て来た。
「スミス、奴隷たちの容態は?」
「安静が必要かと、ですが旦那様、彼女達は、鎖で繋がれていまして、動かせないのです」
「わかった、その鎖を僕が切るよ」
京太は、馬車に乗り込んだ。
そこには、3人の女性がいたが、1人は亜人だった。
――狐人族?
京太は、魔法で鎖を断ち切ると、続けて回復の魔法を使った。
「後は、任せていい?」
スミスは、一礼する。
「勿論です、お任せください」
その場を、スミスに任せ、京太は、サリーの元に向かった。
サリーの部屋に行くと、ノルンも一緒にいた。
「サリー、今、奴隷を助けたのだけど、その中に、狐人族がいたんだ」
サリーは、慌てて聞き返す。
「その人は、何処に?」
「スミスが治療中だよ、安静が必要だそうだ」
「そうですか、でも、元気になれば、狐人族の里がわかるかも」
そう言うと、サリーは、ノルンを抱きしめた。
京太は、サリーの部屋を出て、地下牢に向かった。
地下牢の男の前に立つと、男は、叫んだ。
「私は、御用商人のアルゴだぞ、こんな事をして許されると思うのか!」
アルゴには答えず、質問をする。
「あの狐人族は、どうした?」
「貴様!私の質問に答えろ!」
京太は、牢の中に入り、壁に繋がれていた鎖をアルゴに繋いだ。
アルゴは、抵抗したが、京太に敵うわけもなく、鎖に繋がれた。
「貴様、何をする気だ!」
「どうしたら、いいと思いますか?」
「な、なんだと・・・」
京太のふざけた態度に、怒り出した。
「早く、この鎖を外せ!」
「無理です、それよりも、狐人族の事を聞かせて下さい」
「フンッ、誰が話すか!」
京太が、無詠唱で魔法を放つ。
すると、牢の中に風が吹いた。
「ギャァァァ!指がぁぁぁ!!」
『ウインドカッター』でアルゴの手の指が、1本無くなった。
「最近の風は、危険なんですよ」
「お、お前は、何をしたんだ・・・」
震えながら、質問をしてくるアルゴに答えた。
「何もしていません」
今度は、死なない様に無詠唱魔法で止血をした。
――「ヒール」・・・
その様子に、驚くアルゴ。
「どうなっているんだ・・・・・」
「早く、答えて下さい」
京太は、質問に対する答えを言うように促した。
「誰が・・・・・」
そこまで言うと、風が吹いて来た。
魔法で風を起こしただけだったが、効果は十分に発揮した。
「ひぃ!」
アルゴの頭の中には、先程の痛みが蘇ってくる。
「わかった、言う、言うから助けてくれ」
風が止んだ。
「チェインだ、そこで買ったんだ」
「チェイン?」
「知らないのか、奴隷の街、チェインだ」
「そうですか」
京太が去ろうとすると、アルゴが話掛けて来た。
「話したんだから、鎖を外してくれ・・・・いや・・下さい」
京太が、指を鳴らすと、鎖が切れた。
鎖から外されたアルゴは、指を探した。
「私の指、どこだ、どこにあるんだ・・・」
京太は、アルゴの前から去り、ソニアの元に向かう。
ソニアは、セリカ達と食堂にいた。
「ソニア、聞きたい事があるんだけど、今、いいかな?」
「うん、いいけど何?」
京太が、椅子に座ると皆が寄って来た。
その場には、ソニア、セリカ、ラム、ミーシャの4人がいた。
「奴隷の街、チェインって知ってる?」
「もしかして、さっきの奴隷にされていた子達のこと?」
「うん、そうだよ」
ソニア達も、今日の一件は、既に知っている。
情報は、共有するようにメイド達に伝えているからだ。
それは、メイドだけでなく、京太の旅の同行者達にも伝わる様にしていた。
「仕事の途中で立ち寄った事はあるわ」
ソニアは、そう言うとセリカを見た。
「私も同じチームでしたから、一緒に行きました」
「どんなところなの?」
「名前は物騒だけど、治安はいいわよ、でも殆どの商売人は奴隷商よ」
「ですが、治安の良いのには、理由があります。
この街は、4つの奴隷商組合があります。
その4つの組合が、不可侵条約を結んでいるから、治安が良いのです」
「お互いが、商売に集中出来るようにする為の条約って事ね」
「そうか、自身の地域が安定していないと、そこに余分な力を注がないといけないから、
自然と売り上げが下がり、バランスが崩れて潰されるって事かな」
「そんな感じだと思うわよ」
「それで、その街に行くの?」
「うん、行く事になると思うけど、もう少し先かな・・・」
「どうして?」
ソニアは、聞き返す。
「早い方が良くないの?」
「そうだけど、この砦の事や、サバクの街が、気になるんだ。
まだ、残党が潜んでいそうなんだよね」
そこに2人が、手を上げる。
ラムとミーシャだ。
「じゃぁ、私達が先行してサバクの街を偵察してくるよ」
「土地の事、あまり知らないのに大丈夫なの?」
「俊敏さと逃げ足には、自身があるんだ」
薄い胸を張るラムに、ソニアが言う。
「捕まっていた癖に・・・・・」
「ちょっ!ソニア、あれは・・・・・もぅ、忘れてよ・・・」
「ごめん、冗談だよ。
ホント、ごめん!!」
「わかったわ、あれは、私の失態だし反省しているわ」
そう言って穏やかに話は終えかけたが、ラムは、自身に向けられる鋭い視線に気付く。
「ミーシャ、どうしたの?」
ラムの問いにミーシャが怒る。
「どうしたのじゃ、無いでしょ!!
捕まっていたとは、どういう事なの!説明してください!」
この後、ラムは、ミーシャに説教をされた。
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