アジトに帰ろう
ギルドに到着すると、皆の注目を浴びた。
だが、京太は、気にすることなく受付に向かう。
「クラウスさんに呼ばれて来ました」
「はい、聞いております、こちらにどうぞ」
京太達は、職員に案内されて応接室に入った。
暫く待っていると、クラウスが現れた。
「待たせたようだね」
クラウスの顔色は、悪かった。
「いえ、構いません、それで用件を聞きたいのですが?」
「コルドは、あの後、息を引き取ったよ、まぁ、生きていても死刑だったけどな
それと、此処に来る度に迷惑を掛けているので、謝罪がしたくて、呼んだんだ。
本当に、すまない」
――今回の件は、流石にこたえたんだろうな・・・・・
「気にしないで下さい、僕も気にしていませんから。
それに、クラウスさんには、お世話になる事もあると思いますので」
「そう言ってくれると助かるよ、それと注文の品は、裏の倉庫に準備してある」
「ありがとう、助かります」
「それと、こちらが魔獣の代金だ、勿論、注文分の代金は引いておいたよ」
京太は、袋の中を確認せずに受け取った。
すると、サリーが、確認するように言って来た。
「京太さん、必ず確認してください」
「でも、信用しているから・・・」
「そう言う問題では、ありません。
誰だって間違いはありますから、確認してください」
京太は、袋を取り出し、テーブルに置いた。
「じゃぁ、皆で数えよう」
「はーい」
テーブルにお金を広げ、数え始めた。
袋の中の金額は、金貨33枚、銀貨81枚、銅貨99枚だった。
「凄い金額ね」
その言葉に、クラウスが答える。
「全部で176匹だったからな・・・」
「え!?」
「え!?」
皆が京太に視線を向けた。
「あははは・・・ごめん、出し過ぎた」
「それって、まだあるの?」
「うん、あるよ」
その言葉に、クラウスの顔が引きつる。
「少し、間を開けてくれると有難いのだが」
そう言いながら、京太に視線を向けた。
「わかった、そうするよ」
クラウスは、『ホッ』とした。
――助かった・・・
「では、私は、失礼するよ」
クラウスは、先に応接室から出て行った。
残った京太達は、机の上のお金を袋に詰め始めた。
「あのさ、このお金なんだけど、僕一人で持っていていいの?」
「どういう事?」
「皆も欲しい物とかあるでしょ、お金が無いと買えないよね」
「そうだけど・・・」
「だから、幾らか渡そうと思うんだ」
そう言うと、京太は袋から金貨を取り出し、1枚ずつ皆に渡した。
「これ、多すぎるよ!」
「そうなの?」
「うん、一般のお給料だと、月に銀貨10枚よ」
「そうなんだ」
――この世界だと物価が安いのかな・・・・・
京太は、皆と話し合い、毎月銀貨15枚を渡す事にした。
「砦の皆には、あとで渡すからね」
そう言って、この場所にいるメンバー全員に銀貨15枚を配った。
すると、セリカが提案をした。
「砦の皆は、買い物に行けないから、ここで色々買って帰ろうよ」
「いい考えね、賛成よ」
「うん、服とか生地とか欲しい人もいるかもね」
「わかった、倉庫に寄った後に、市場に行こう」
京太達は約束通りに、倉庫に寄った後、市場に行った。
食料品や酒、果物、衣類、小物、様々な物を購入した。
「これで、足りるかしら?」
「足りなければ、欲しい物を聞いてから、買いに行こうよ」
「そうだね」
京太達は、市場を後にすると、そのまま街を出て行った。
「やっと帰れるね」
「そうだね」
ラムも会話に参加する。
「帰りも狩るの?」
ソニアが答える。
「当然よ、食料にもなるし、お金にもなるんだから」
――帰りも狩りをするんだ・・・・・
皆は、狩りをしながら、砦を目指した。
2日後、京太達は、砦に戻って来た。
砦には、結界を張ったままにしている。
その為、京太の許可の無い者は、通れなくなっている。
それは、魔法や物理攻撃、魔物、魔獣も同じだった。
京太達が到着すると、砦の中は、綺麗に片付き、それぞれの仕事を行っていた。
砦の中の建物に入ると、スミスが出迎えてくれた。
「旦那様、お帰りなさいませ」
「うん、ただいま。
何かあった?」
「はい、羽振りの良さそうな商人が、奴隷を連れて訪ねて来ました」
「何の用事だったの?」
「さぁ、ただ、『この場所は、自分の物だから中に入れろ!』と叫んでいました」
「スミスが対応したの?」
「はい、仕事ですから」
「怖くなかったの?」
「ここには、旦那様の許可なく入れませんから、何も不安は御座いません」
「信用してくれてありがとう、ところで、話があるんだけど、いいかな」
「分かりました」
京太は、スミスを連れて、応接室に入って行った。
応接室も、以前と比べて綺麗にされていた。
――花も飾ってあるんだ・・・・・
スミスは、立っていた。
「取り敢えず、座ってよ」
「はい」
スミスが、ソファーに座るとアルの街で決めた事を話した。
「僕達で話し合ったのだけど、皆に給料を渡す事にしたんだ」
「私達に給料ですか?」
「うん、決めた事だから渡すね」
京太は、銀貨15枚を渡した。
「もう少し落ち着いたら、考えて渡すから、今はこの金額で我慢して欲しい」
「そんな、給料なんて有難いです。
頂くのも久しぶりですから」
「え!? 今迄は、無かったの?」
「はい、食事と与えられた衣服だけでした」
――本当に酷いな・・・・・
「これからは、きちんと渡すよ、それと、皆は、買い物に行けないから、欲しい物を纏めて欲しいんだ」
「畏まりました」
スミスの返事を聞き、京太は話を続けた。
「それで、今回は、勝手に色々買って来たから、皆に給料を渡した後で、食堂で販売するよ
もちろん、定価で売るから安心してね」
「旦那様には、頭が下がります。
私達の為に、本当に有難う御座います」
スミスは、お礼を言うと仕事に戻った。
そこで、スミスは、メイド達を集めて説明をした。
話を聞いたメイド達は、大喜びをした。
「給料なんて貰えるんだ!」
「信じられないよね」
「でも、京太様だから、本当なんじゃない?」
「静かにしなさい!!」
スミスは、一喝すると、話を続けた。
「給料を貰っても、使う場所が無ければ意味がありません。
それで、今晩、食堂にて旦那様が街で色々買って来た物を、販売して下さるそうです」
その言葉に、メイド達は、先程以上に喜びの声を上げた。
その後、京太は、各部署を回り、給料を渡して回った。
どの部署でも、喜びの声が聞えた。
販売の話は、スミスがメイド達を使って全員に知らせていた。
その日の食事の後、食堂に市を開いた。
京太の他に、アルの街に行ったメンバーが販売する側に回った。
準備を終えると、待っていた者達に声を掛ける。
「お待たせ、走らないで入って来てね」
皆が、食堂に現れ、好きな物を次々に購入した。
予想以上に人気で売り切れになった物、不人気で売れ残った物など、色々分かった。
――次は、注文だけど、余分を買う時の参考にしよう・・・
その日の夜は、遅くまで皆の声が聞えていた。
翌日、朝食に向かうと、昨日購入した物を身に着けている者などがいた。
「似合っているね」
京太が声を掛けると、メイドは、真っ赤な顔をして逃げていった。
――僕、何かしたのかなぁ・・・・・
その様子を見ていた女性陣は、ため息を吐いた。
「お兄ちゃん・・・・・」
「主、浮気は良くありません」
「なんで、そうなるの!」
皆は、顔を見合わせたが、それ以上は、何も語らなかった。
その日の昼、砦の前に身なりの良い男と奴隷と思える男が現れた。
昨日同様、結界の為に中に入れず、喚き声を上げていた。
「私は、御用商人の【アルゴ】だ、此処を通せ!」
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