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プロローグ

~プロローグ~


とある世界、300年前から続く神と悪魔の戦いが、終焉を迎えていた。

悪魔族は、殆んどの者が死に絶え、最後に悪魔族の首領【ルシフ】を残すだけだった。


「ルシフ、これで貴様の野望も終りだ!」


「我が死ねば、この世界から悪魔族は消えるだろう・・・

 だが、人々の中に負の感情がある限り、再び我らは復活する」


「その時は、もう一度葬ってやる!!」


神々は力を振り絞り、魔法を唱えた。


「ディスペル レーザー」


上空より降り注いだ光は、ルシフを包み込んだ。


「くっ、いつか・・・・・必ず・・・」


ルシフは、光の中で完全に消滅した。


「終わった・・・」


戦いは、終ったがそこには歓声も喜びの言葉も無かった。

確かに戦いは、神の勝利に終わったが、神側も無傷ではなかった。

神の使いである天使族は全滅し、この世界の12人の神も腕の無くなった者や視力を失った者もいた。

本来ならば、魔法で治すところだが、最後に使った【ディスペル レーザー】で力を使い果たしていた。



半壊した天界の建物まで戻った神々は、何とか命を繋いでいた。


「我々は、まだ死ねぬ」


創造神【アトゥム】は、別の世界から12人の神の力を受け継ぐ事の出来る魂を探していた。


「ほう、これは・・・・・」


神の見つけた魂は、輪廻の輪から外され、この世界に引き寄せられた。


「ここは、何処?」


導かれた魂の持ち主の名は、阿毘 京太(29歳)だった。

京太は、日本でサラリーマンをしていた。

その日も何時もの様に終電で帰宅しようとしていた。


「まずい、終電に遅れる!」


疲れた体に鞭を打ち、フラフラになりながらも走った。

そのおかげで、なんとか終電に間に合ったが、呼吸は乱れ、心臓も激しく動いた。

空いた席に座ると、一気に疲労が襲ってきた。

休日も殆ど無く、始発で会社に行き、終電で自宅に帰る日々に、

京太の体には、ストレスと疲労が溜まっていた。

その為に、今回走った事で心臓に負荷が掛かり、そのまま眠る様に息を引き取った。

所謂、過労死だった。



京太が目覚めるとそこは、電車の中ではなかった。


「此処は、何処?」


京太が降り立った場所は、真っ白な大地。

だが、雪が積もっている訳でも無かった。

真っ白な大地をよく見ると、赤や黒いシミの様なものが付いていた。


――これは、なんだろう・・・


京太が白い大地を進んで行くと建物が見えてきた。

何も無い大地に建物があった事に喜び、進んだ。

その建物に近づくに連れて半壊している事が分かった。

同時に、先程見たシミの正体も判明した。


――あれは、血だったのか・・・


建物の中に入り、進むと広間があった。

その広間には、12人の男女が、横になったり、座ったりしていた。

その中から、1人の老人が立ち上がり、京太に近づいて来た。


「儂は、アトゥムじゃ、人間よ良く来てくれた」


「此処は、何処ですか?」


京太の疑問にアトゥムは、素直に答えた。


「ここは天界、神々の住む場所じゃ」


「そんな所に僕はどうして・・・・・」


「そうじゃのぅ、まずは、この世界の話をしようか」


アトゥムは、この世界の事や現状を話し始めた。

300年間続いた神と悪魔の戦争が終わった事、

天使族と悪魔族が滅んだ事、戦いの余波が、地上にも影響を与えている事、

最後に、ここにいる12人の神々も消滅の危機にある事を話した。


全てを話し終えたアトゥムは、京太に告げる。


「我々は、12人の力を受け継げる魂を探しておったのじゃ」


「それって・・・・・」


「そうじゃ、お主がその受け継げる魂の持ち主じゃ」


――そう言う事か・・・


京太は、納得しつつも聞いた。


「僕は、何をすれば良いのですか?」


「命令の様なものは無いぞ、英雄になりたければなれば良いし、国を作っても良いぞ、

 ただ、悪にはならんで欲しいがな」


そう言ってアトゥムは、微笑んだ。


「そんな、大それた事は、考えていませんよ」


「まぁ、何十年か何百年かを地上で暮らした後、天界に戻れば良いぞ、頼めるかな」


疑問に思う所もあったが、京太は、話の途中から乗る気になっていた。


――もう一度、やり直せるなんて・・・


「はい、宜しくお願いします」


京太の返事に、アトゥムは喜んでいた。


「そうか、そうか、受けてくれるのだな。

 ならば、こちらに来るのだ」


アトゥムについて行くと、1人の男の前で立ち止まった。


「ラーよ、待たせたな、こ奴の名は京太じゃ

 我らの力を引き継ぐ者だ」


ラーと呼ばれた男は、横たわっていた体を起こした。


「そうか・・・・間に合ったのだな・・・」


力無く、言葉を発したラーは、京太の腕を掴んだ。


「我は、太陽神【ラー】、力を継ぎし者、京太に全てを授ける」


そう言いながら、ラーは、京太の心臓の上に手を置いた。

心臓が、『ドクンッ!』と鳴ると同時に京太の体が光に包まれた。

京太の体の中に何かが流れ込んできた。


――これが太陽神の力?


光りが収まるとラーの体が、光りの粒子になり始めた。


「京太よ、我が力を継ぎし者よ、後は頼む」


ラーの姿が、粒子になり、完全に消えた。

アトゥムは、何事も無かったかのような態度で次の神の前に京太を連れて行った。


「アぺプよ、大丈夫か?」


「ああ」


アぺプと名乗った男は、片腕が無く、漆黒の髪の男だった。

アトゥムが、話掛ける。

「こ奴は京太じゃ、宜しく頼む」


アぺプも体を起こし、京太に向き合った。


「お願いします」


アぺプは、頷くと唱え始めた。


「我は、闇と混沌の神【アぺプ】

 我が力の全てを京太に授ける」


ラーと同じ様に京太の胸に手を置いた。


『ドクンッ!』


心臓の音と共に、アぺプの全てが流れ込んで来た。


――凄い!これが闇と混沌の力!


「京太よ、感じたようだな、その力、そなたの物だ」


その言葉を最後にアぺプは、消えた。


「次に行こう・・・」


その後、魔法の女神【イシス】、知恵と医術の神【イムホテプ】、冥府の神【オリシス】

月の神【コンス】、大気の神【シュー】、製造の神【トート】、豊穣の神【ハピ】

真理、調和、秩序の神【マアト】、戦争の神【モンチュ】の11名の神の力を受け継いだ。

神々は粒子となり、光の中に消えた。


「皆は、逝ったか・・・」


アトゥムは、表情を崩さなかったが、どこか寂しく見えた。

沈黙が辺りを包み込み始めた頃、アトゥムは口を開いた。


「最後はこの儂じゃ、京太よ、お主は輪廻の枠組みから外れた存在になった。

 肉体年齢も17歳で固定され、寿命も無くなった。

 所謂、神になったんじゃ」


――神って・・・・・


「これから、最後に儂の力を授けるが、良いか?」


「はい」


京太に迷いは無かった。

 

「我は、この世界を作りし神、創造神【アトゥム】、我の記憶と力、

 そして知識の全てを京太に授ける」


アトゥムは、京太の額に手を当てた。

すると、今迄以上に心臓の高鳴りを感じた。


『ドクンッ!!』


その瞬間、神と悪魔の戦いの様子や、地上世界の知識が流れ込んだ。


――これが、戦い・・・


この時、京太の中で何かが変わった。

精神的にもそうだが、細胞の1つ1つが変わった気がした。

記憶の中ではあったが、神や悪魔、天使の戦いの果てに、殺される様を見た。

しかし胸が痛くなったり、吐き気を覚える事も無かった。

そしてもう1つ、固有魔法を覚えていた。


――アイテム ボックス!!


アトゥムが、額から手を離した。


「上手く行ったようじゃな」


京太は、体の変化のにも気が付いた。

サラリーマン時代の筋肉の無い体形から、余分な脂肪の無い、細いが筋肉の付いた体に変化していた。


――これも、神の恩恵・・・


「後は、任せるぞ」


アトゥムは、その言葉を残して消えた。



不定期投稿です。

宜しくお願い致します。

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