ナディアの結婚式
ハルはナディアの結婚式の話を、息継ぎもなく喋り終えると、シャルの入れた紅茶に口をつけた。
セオはそのタイミングを見計らって、あることをハルに告げた。
「さっきのヒキガエルが、そのナディアだぞ」
「ぶほっ。──はぁぁぁ!?」
「ちょっと。ハル、大丈夫!?」
ハルはセオの一言に、紅茶を吹き出し目を丸くさせた。
◇◇
ハルはコネを使ってナディアの結婚式に参列した。
そして、誓いのキスの時にある事件を目撃した。
アシルとナディアの唇が触れ合った瞬間に……ナディアが消えた。
純白のドレスをその場に残し、ナディアはまるで魔法のように忽然と姿を消した。
もちろん、会場は大混乱だった。
式は中断。来客は帰され、その後もソルボン家とアフリア家の者で花嫁を探し続けたそうだが、まだ見つかっていないのだという。
ハルはすぐにセオの仕業だと思った。
実際にソルボン家の者も、セオの店を訪ねていたが、生憎の不在。
しかも結婚式よりも前から休業していたと聞き、セオを疑い国へ訴えたところ、セオは城で転移陣の新規設置計画を遂行中なので無実だと言われたらしい。
どうやら、ヴィリアムによって、そういうことにされていたようだ。
ソルボン家はセオは犯人でないと判断したそうだが、ハルはそれでもセオを疑っていたという。
きっと転移魔法でナディアをどこかへ飛ばしてしまったのだろう。世界の裏側にでも行っているのではないかと想像しては、ニヤニヤしていたのだ。
それから数日後、セオの店に張り付く不細工なカエルを見つけた。
魔法の材料が逃げ出したのだと思い放っておいたが、いつまで経ってもセオは帰ってこないし、カエルは泥だらけで汚ないので捕獲した。
その時、結婚指輪がカエルに付いていることに気がついた。
この指輪がここにあるということは、やはりセオがナディア失踪に関与しているとハルは確信した。きっと、家に連れ去り、身ぐるみ剥いで売り飛ばし、残った指輪は偶然にもカエルが付けて脱走してしまったのだと妄想を膨らましていた。
そして早くその話がしたかったハルは、毎日ベルをガンガン鳴らしていたのだ。
しかし、このヒキガエルがナディアだとは考えてもいなかった。
因みに、今、ヒキガエルは倉庫の一室に置き去りにしている。
「セオ!? 今なんつったぁ!?」
「だから、さっきのヒキガエルが、ナディアなんだよ」
「お前の仕業だとは思ったけど……はははっ。カエルにするなんて、おとぎ話みたいだなっ」
ハルはシャルに笑いかけるが、シャルは浮かない顔だった。
「ねぇ。ナディアを家に帰してあげましょう?」
「はぁ!? 俺は嫌だ。反対! 即刻、路上に放置すべし!」
「俺はどうでもいいけど。ウチに置いておくのは嫌だな。山にでも捨てとけばいいだろ。後、三週間もすれば元に戻るし」
「でも……。──そうだわ。私に、ナディアの呪いを解くことは出来ないかしら?」
首をかしげるハルの横でセオがため息をついた。
「それは駄目だ。ナディアのことだから、人間に戻ったらうるさいだろ? シャルが元に戻したら、呪いをかけたのはシャルだって勘違いして言いふらすだろうし、放っておけばいいんだよ。その方が、誰の魔法なのかも分からず終いで、泣き寝入りだ」
「だけど……。せめて、アフリア家の庭に放してあげましょう」
シャルが何を言おうと、二人は全く乗り気ではない。
ハルもその意見には断固として反対した。
「アフリア家に行くのか? 今は止めといた方がいいんじゃないか? ナディア探しで大騒ぎだろ」
「行かない方がいいな。やっぱり山に捨てよう」
「そんな……」
落ち込むシャルに、ハルは結婚式の時に気になっていた事を尋ねることにした。




