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光の巫女

「他のトゲも試してみるわ……」


 シャルが触れると呪いは消え、セオとヴィリアムの身体に浮かんでいた黒い斑点も薄れていった。セオは腕を見て驚いた。


「身体の呪いは完全に消えてはいないけど……。なんでだ? そう言えば、シャルは呪いも見えてたし、にゃん子サマも見えるし……シャルは何か知ってる?」

「私は何も……。でも、アリス姫にも試してみますか?」

「駄目だ。危険すぎる。失敗して呪いを被ることになったら大変だし、シャルの力が何なのか分からないんだぞ?」


 セオはシャルの案を否定し、ベッドで眠るアリス姫に目をやった。


 アリス姫にかかっているのは、セオやヴィリアムが受けた呪いの欠片とは比べ物にならない。

 シャルがどうして呪いを中和できるのか分からない以上、危険なことはさせたくなかった。

 ヴィリアムは戸惑うシャルを見て思考を巡らせた。


「呪いを消すことができるのは光の魔法だけだ。シャルは……」


 シャルは薄い金髪にエメラルドの瞳。

 色素が薄いが、王族の見た目と類似していると気づく。

 それに、黒狼に喰われた時、シャルもヴィリアムと同じように気絶していた。


「シャル……君はもしかして、光の巫女の子孫なのか? 前に言っていたではないか。光の巫女は、勇者がたくさんの女性を娶ったことを怒り、城から出て行ったと……。その話の続きはあるのか?」

「えっと……。城から離れた緑の地で、誠実な青年と出会い、幸せに暮らしました。という終わり方でした」

「それでは分からないか。しかし、そんなおとぎ話は聞いたことがない。それがアフリア家のみに伝わっているのは、光の巫女の子孫だからかもしれないな」


 ヴィリアムが見解を示す横で、シャルは母親を思い出していた。

 光の巫女の武勇伝は何度も聞いたことがあった。

 しかし、その話を他の人にすると、いつも周りの人に変な顔をされた。

 セオとヴィリアムに、光の巫女が城を飛び出した話をした時も同じ反応だった。こはアフリア家にしか伝わっていない話なのかもしれない。


「セオ。光の巫女のことはわからないけど。私、やってみるわ」

「駄目だ! どうなるか分からないって言ってるだろっ」


 セオはシャルの腕を掴み、花瓶から溢れた黒いドロドロの液体を睨んだ。恐らく、これを災厄の箱に戻せば呪いの効力は切れる筈だ。


「大丈夫よ。あの黒いドロドロの中にある丸い結晶みたいなもの。あれをどうにかすればいいって、何となくだけど分かるの。ね?」

「でも……ん?」


 セオは懐に手を入れ、財布に使っている巾着袋を取り出した。袋の中身は、モゾモゾと生き物の様に動いていて、セオが封を開けると、にゃん子サマが飛び出してきた。


「「にゃん子サマ!?」」

「全く、帰ってきたなら呼んで欲しいのじゃ~」


 にゃん子サマは体をブルッと震わすと、ドロドロの塊へ目をやった。


「あの塊の核が見えているシャルなら、きっと大丈夫なのじゃ」

「では、シャルは光の巫女の子孫なのか?」

「知らないのじゃ。光の巫女の子孫ならなんなのじゃ?」

「えっ? それは……」


 にゃん子サマの問いに、ヴィリアムは口ごもり、今必要な事実は何なのか、もう一度考えた。


「シャルが光の巫女の子孫かどうかより、今は呪いが解けるか解けないか。そしてシャルに危険がないか知りたいのだが……」

「それなら、きっと大丈夫なのじゃ。セオ、災厄の箱とは繋げたのかのぅ?」

「ああ。この袋の中と繋げてある」


 セオはポケットから黒い巾着袋を取り出した。


「では、シャルにポイしてもらうのじゃ。──シャル、よいかのぅ?」

「ええ……」


 シャルは両手で、黒いドロドロの真ん中に見えた、小さな黒い結晶を掬い上げた。

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