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喧嘩の理由

「セオと……仲直りできるといいですね」

「それは無理よ。さっきも怒ってたし」


 アネットは今にも泣き出しそうな顔をしている。

 シャルは堪らずアネットの手を握りしめた。


「よかったら話してください。放っておけないんです」

「私……実はね。貢ぐ女だったの。貴族の男の人を好きになって、あの人と同じ場所に立ちたくて……。家のお金も全部使っちゃったりして……」


 あの家のお金を使い切るとは、凄まじい浪費家だ。

 しかし、セオはお金に無頓着なのに、なぜ縁を切ったという話になるのだろうか。


「セオは、お金の事なんか気にしないんじゃないですか?」

「そうね。でも、それだけじゃないの。私、好きだった人に身分違いだって捨てられて……それなら、その人が私の身分に落ちればいいと思って、呪ったりして名家を没落させたの。でもでも、結局その人は私の事を化け物扱いするし……」

「アネットさん……」


 そりゃあ、呪った相手を好きになる人はいないだろう。でも、セオは一度間違いを起こしただけで、家族と縁を切るなんて言うのだろうか。

 シャルが考えていると、アネットは急に表情を明るくした。


「でもね。その後、急にモテ期が来てね! 色んな貴族の男が寄ってきたの。だけど……結局私の魔法を利用して他の貴族を貶めたい人とか、身体目当ての人しかいなくて……」

「もしかして、たくさんの人を魔法で困らせちゃったりしたんですか?」

「うん。でも、相手も悪いんだし、困らせていいのよ。──だけどね……嫌な男にかけようとしていた呪いをセオとパメラさんにかけちゃった事があるの。私を捨てて猫嫌いの女の所に行っちゃった人を呪おうとして失敗してね。二人とも一ヶ月間、猫になってしまったのよ。それで、パメラさんに怒られて、私は家を飛び出して、そのまま……」

「セオが猫に……」

「可愛かったわよ~。赤い子猫になったの。にゃん子サマと合わせて猫ちゃん三匹!」

「おぉ。絶景かも……。ってそうじゃないです! あの……セオは謝っても許してくれなかったんですか?」


 アネットはきょとんとした顔で首をかしげ、あっけらかんとして答える。


「え? 謝ってはいないわ。間違えちゃっただけだし。赤い子猫は可愛かったし……」

「謝った方がいいですよ。いくら可愛くっても、呪いをかけてしまったんですから」

「そっか。……そうよね。シャルロットちゃんがそう言うなら、謝ってみようかな……」

「はい。そうしてください。──あっ。私もセオの所に行かなきゃ。二人とも椅子にくっついたままですよね!?」

「シャルロットちゃんも行っちゃうの? 寂しいな~。でも、セオのこと、よろしくね。あの子、甘えん坊で寂しがり屋だから……」


 甘えん坊で寂しがり屋。

 それはアネットの事ではないだろうか。


「は、はい」

「それから、これはスライムを溶かす魔法の粉よ。二人にかけてあげて」

「ありがとうございます」

「またね。シャルロットちゃん」

「はい。アネットさん」


 アネットはシャルロットをムギュッと抱きしめると、わん子サマに目配せし、シャルはまた、わん子サマに丸のみにされた。

 真っ暗になる瞬間、アネットの声が聞こえた。


「私の箱庭。外界と時間の流れが違うの。今、ここでの一日は外での一週間と同等よ。気を付けてね……」

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