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女の子の味方

 北の魔女はシャルからわん子サマを取り上げると、ベッドの上にポイっと投げ捨てた。

 そして赤い瞳でシャルを見つめると、優しく抱きしめる。


「辛かったのね。大丈夫よ。私はアネット。貴女の味方よ」

「えっ……?」


 シャルは柔らかくてふわふわな魔女の体と甘い香水の香りに包まれ、頭がボーっとした。

 小さい頃、こうやって抱きしめられた記憶がある。

 そうだ。お母さんみたいだ。


「貴女はどんな悪い男に騙されたの? わん子サマが気に入ったってことは、相当な不幸な目に遭ってきたのでしょう? 話して……。私なら力になれるわ」


 北の魔女は優しく甘い言葉を耳元で囁いた。

 こんな風に王妃も唆したのだろうか。

 でも、不思議と何でも話したくなる。

 これは、魔法なのだろうか?


 シャルを蔑むアシルの顔が浮かぶ。

 それからナディア、義母、父。

 でも、シャルの周りにいるのはこの人たちじゃない。

 シャルはセオやにゃん子サマの顔を必死で思い浮かべた。そして、最後にヴィリアム王子の顔が頭に過り、シャルはここへ来た理由を思い出した。


「私……。私、アリス姫の呪いを解きたくて貴女を探していたの」

「アリス姫?」

「知らないの? 貴女が呪ったのではないの?」


 アネットはきょとんとした顔で首をかしげ、困っていた。赤く大きな瞳は少しタレ目で、誰かに似ている気がした。


「私は女の子の味方よ? 女同士の争いは遠慮しているわ」

「で、でも、お金を渡せば何でも叶えてくれるって」

「ああ~。そうね。お金大好き」

「えぇ~?」


 にっこりと素直に微笑むアネットは、悪意の欠片も感じない。

 駄目だ。

 この人、なにを考えてるか全く分からない。

 でも、女の子の味方なら、シャルの味方になってくれるかもしれない。


「取り敢えずお茶でも飲みながらお話しましょ。えっと……」

「シャルロットです」

「そう。ようこそ我が家へ。シャルロットちゃん」


 アネットは微笑むと、シャルの手を引き別室へと案内した。


 ◇◇


 リビングのソファーに寝転び、ビスケットを食べながら、北の魔女──アネットはシャルの話をつまらなそうに聞いていた。


「ふーん。王妃ちゃんがアリス姫ちゃんを呪ったのね。それも、私を使って? へぇー。知らなーい」

「……でも、とても危険な呪いです。死の呪いなんですよ。助けてもらえませんか?」

「それも可哀想な話だけど……。シャルロットちゃんの方はどうなの? ウチのわん子サマ、いつも私の依頼人を拾ってくるのよ。金と不幸に敏感な子なの。シャルロットちゃん、すんっごく不幸な目にあったんでしょ?」

「私は……」


 自分のことを話している場合ではないのに。

 アネットはソファーの上でわん子サマをもふもふしながら、興味深そうにシャルを見つめている。


「シャルロットちゃんのこと教えてくれたら~。アリス姫ちゃんについて、いいこと教えて上げるわ」

「本当に!?」

「女の子に嘘はつかないわ」


 シャルは義妹に婚約者を奪われ義母とも折り合いが悪く家を出たことを話した。

 なんとなく、セオの話は避けてしまった。


「酷いわ。その男。ほいほい乗り換えちゃって最低よ。懲らしめなくっちゃね! そいつの髪の毛ってあるかしら? って無いわよね? 取りに行きましょう。それで、そいつのこと、呪っちゃいましょう!」


 シャルの話を聞くと、アネットはソファーから意気揚々と立ち上がった。もちろん、乗り気なのはアネットだけだ。


「の、呪いだなんて、そんなこと……」

「あら? 乗り気じゃないの? だったらおとぎ話に出てくるような、可愛い呪いで懲らしめちゃう?」


 この言葉、前にも聞いたことがある。

 そうだセオだ。

 魔法使いって、みんなこういう思考回路なのだろうか。

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