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出発準備

 家に戻るとセオは倉庫にこもり明日の支度を始めた。

 魔女の領域は魔法が使えない。

 だから何が起きても対応できるように色々準備をするそうだ。

 セオは鞄に何やら大量の魔法道具を詰め込んでいる。


「セオ。手伝いましょうか?」

「あ、シャルは鍋と食材を鞄に詰めておいて。何日間か野営するかも」

「分かったわ。外に泊まるなんて、私初めてだわ」

「えっ? シャルはお留守番だよ」

「どうして?」

「どうしてって……馬で行くけど、山道を歩くかもしれないし、テントに泊まるんだぞ?」

「……そっか。私は邪魔よね」


 ヴィリアムに優秀な助手だと褒められ、シャルは手伝う気満々だった。

 しかし、自分がついていく利点を上げようにも、何も思い浮かばず、ただのお荷物だと再認識させられるだけだった。セオも困り顔だ。


「邪魔とかじゃないけど……」


 気不味い空気の二人の前に、にゃん子サマがフワフワと飛んで現れ、助言をくれた。


「北の魔女は大の男嫌いなのじゃ。セオは嫌われておるし、シャルがいた方が話しやすいかもしれぬのぅ」

「セオ。北の魔女と知り合いなの?」

「……俺が嫌われてるんじゃなくて、俺が嫌ってるんだ」


 セオはなぜか、にゃん子サマに向かって怒っていた。

 にゃん子サマはニコニコと笑っている。


「にゃん子サマは行かないから、上手くやるのだぞ? シャル、よろしく頼むぞ」

「ええ。セオ、行ってもいい?」

「まあ。にゃん子サマがそう言うなら……。北の魔女は金にならないことはしない。人を呪い殺すことも……。でも、悪戯はするかもしれない」

「えっ?」

「これ、つけておいて」


 セオはシャルの右手の人差し指に赤い宝石のついた指輪をはめた。

 指輪を人からもらうのは初めてだった。

 シャルはセオの髪と同じ色の指輪を見つめ、自然と笑みがこぼれた。


「これは対人用の魔法道具で、睡眠作用のある宝石がついているんだ。シャルが危険を感じたら宝石が割れて、相手を眠らせることが出来るから。それから――」 


 セオはその後、予備の指輪と卵型スライム入り爆弾など色々とシャルに渡した。


「こんなに沢山、ありがとう。セオの足を引っ張らないように、頑張るわね!」

「あんまり頑張らなくていいから。自分の身を守ることだけ考えて。それから――俺から離れるなよ」

「う、うん!」


 不安そうなセオとは裏腹に、にゃん子サマはご機嫌だった。


「シャル。北の魔女は女の子には優しいから安心するのじゃ」

「そうなのね。私にも、力になれることがあるかも知れないわね。私、アリス姫を絶対に助けたいの!」


 シャルは自分とアリスを少しだけ重ねて見ていた。

 どうしても救ってあげたかった。


「そうだな。一緒にアリス姫を助けよう。シャル」


 セオはポンっと小さな手をシャルの頭に乗せ、にっこりと微笑んだ。

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