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ヴィリアム王子

 シャルの向かいに座るのは、この国の第二王子ヴィリアム=オースルンド。

 実を言うと、シャルがイケメン好きになった原因は、この王子様をパーティーで見かけてからだった。

 短い金髪は光沢があり、緩やかにそして上品にウェーブし整えられ、瞳は切れ長で意思の強さと優しさを兼ね揃えた深いエメラルド色の瞳をしている。


 完璧です。


 シャルは心の中で理想の顔面に敬服した。


「シャル。どうかした?」

「えっ。いいえっ」


 セオの声でシャルは現実へと引き戻されたが、緊張して何も聞いていなかった。

 セオは心配そうにシャルの顔色を窺っている。


「具合でも悪いのか? これから城に行くけど、シャルは留守番していてくれ」

「城に? 大丈夫です。私も行きます」


 ヴィリアムは意気込むシャルを、探るような目で見つめ尋ねた。


「君はセオドリックの助手か?」

「わ、私は……」


 シャルはヴィリアムの顔をあまり直視できないでいたが、よく見ると顔色は悪く、酷く疲れた様子だった。そして、エメラルドの瞳からは強い警戒心が伺える。

 返答に惑うシャルの代わりに、セオが答えてくれた。


「シャルロットは助手のようなものです」

「そうか……ならば、シャルロットも一緒に来てくれ。それから、そちらの白猫さんも」


 ヴィリアムには、にゃん子サマが見えているようだ。

 さすが王子様、顔だけじゃなくて魔法の才もあるのだ。


「私は店内で待っている。支度が済んだら来てくれ」


 ヴィリアムはローブを羽織り部屋を出て行き、シャルは緊張が解けてホッと息を吐いた。

 すると、にゃん子サマが揺り椅子の上で言った。


「シャル。ヴィル殿は困ってここに来たのじゃ。遊びではないぞ?」

「ご、ごめんなさい。緊張して頭がボーッとしてしまって……」


 セオはシャルにローブを渡し、励ますように言った。


「王族が急に現れたら驚くよな。でも、北の魔女が関わっているとすれば、面倒な依頼になる」

「北の魔女?」

「シャル……。本当に何も聞いていなかったんだね。――先週、婚約パーティーを開いたアリス姫、知っているだろ?」

「ええ」

「パーティーの日の夜から、目覚めていないらしい」

「えっ。もう一週間は経つわ」

「そう。その原因は呪いらしいんだ。王妃様が北の魔女に依頼して呪ったとか。でも、王妃様はそんなことしていないって否定しているし、呪いの解き方も分からないそうなんだ」

「王妃様が?」


 シャルは、こんな大切な話を聞き流していたのかと反省した。


「まぁ、それも含めて調べて欲しいってさ。どんな呪いかも、見てみないと分からないし……。それに、多分ヴィリアム王子は俺のことを信用してないな。やっぱり見た目かな……」


 セオはまじまじと自分の体を眺めていた。

 にゃん子サマはそんなセオの足元に体を擦り寄せる。


「にゃん子サマへの評価は上々じゃったぞ? しかし、子供と薄幸少女は頼りないと感じておったのぅ。精々、信頼されるように頑張るのじゃ」

「どうかな? とりあえず行ってみよう」


 セオはローブを羽織るとにゃん子サマを抱き上げ、お店へと足を向けた。

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