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魔法道具屋

「落ち着いた? 今、ちょっと手が離せないから、後で食べる。シャル。十時になったら店を開けて欲しいんだ。後、家の掃除とかもだけど、やり方は……にゃん子サマに聞いてね」


 シャルが驚いて右往左往している間、セオはすり鉢で緑色の練り物をずっと混ぜ続けていた。


「は、はい……。セオ、あの……。セオって子供だったの?」

「え? あー、そっか。……魔法を使うと小さくなっちゃうんだよね。まぁ、何も変わらないから気にしないでよ」

「は、はい……」


 何も変わらないって。

 思いっきり姿が変わってますけど!?


 でも、可愛い。

 小さいセオも相変わらずのイケメン。

 五年後が楽しみ……。

 って五年後は昨日のセオぐらいかな?


 大人版セオの外見は、十代後半位。

 今のセオは十歳ぐらいだ。


 一体どんな原理なのだろう。セオといると、不思議なことばかりで戸惑うことも多いけれど、面白い。


 でも、小さいセオと大きいセオ。

 どちらが本当のセオなのだろう?


 シャルはセオの部屋を出てからも悶々としていた。

 そんなシャルをにゃん子サマは楽しそうに揺り椅子の上から見ていた。


「セオがチビッ子になって驚いたかのぅ?」

「ええ。あれが本当のセオの姿なの?」

「どちらかのぅ? シャルはどっちがいいのじゃ?」

「どっちって……」


 大人のセオは間違いなく格好良くて素敵だし、子供のセオは小さくって可愛いし。

 どっちが良いかと言われても決められない。

 どちらも良い目の保養対象だ。


「なぁ? どっちでも良いのじゃ。セオはセオのままなのじゃ」

「それもそうね。まぁいっか」


 どちらが本当のセオか、何だかどっちでも良くなってきた。どうせセオは魔法使いなのだから、姿など自由に変えられるのかもしれない。


 シャルが考えることを放棄した時、聞きなれないベルの音がした。


「お客さんなのじゃ。でも、この時間だから……きっとアイツじゃな。――シャル。店の方に行くかのぅ」


 アイツとは誰だろうか。

 にゃん子サマに導かれ、シャルは赤い扉へと、恐る恐る近づいていった。


 ◇◇


 玄関の隣の赤い扉を開けると、魔法道具屋に繋がっていた。

 商品は綺麗に陳列され、清潔感のある可愛らしい店だった。

 中でも目を引くのは瓶に入った虹色のドロップ。


「魔法ドロップ?」

「それを舐めると魔力が回復するのじゃ」

「へぇ~」


 魔力は体力みたいに減ったりするようだ。魔法について何も考えたことがなかったシャルは不思議でならなかった。


「シャル。扉を開けてやってくれるかのぅ?」

「あ。そうだったわ!」


 店の入り口扉の硝子には人影が映っていた。

 シャルは急いで扉を開けにいった。

 こういう時はやっぱり……。


「いらっしゃいませ~」


 シャルが元気よく声を張り扉を開くと、目の前に現れたのは人ではなく、大きな花束だった。

 有無を言わさず、その花束はシャルの顔面に押し付けられ、甘い花の香りに包まれると、少年の声が聞こえた。


「おはよう。マイハニー。この頃、麗しい君の顔が見られなくて僕は胸が苦しかったんだ。今日は初めて僕の花束を、いや。僕の求婚を受けてくれたんだね。さあ、誓いのキスをしよう!!」


 押し付けられていた花束が顔から引き剥がされると、声の主である少年が顔を出した。

 栗色の髪と瞳の、どこにでもいそうな普通の顔面偏差値の少年は、初めて見るシャルロットに笑顔のまま固まってしまった。

 そして次第にその顔からは笑顔が消え、真顔になっていく。


 この少年はシャルを誰かと間違えたようだ。

 いったい彼は、誰と勘違いして朝っぱらから告白してきたのだろう。

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