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魔法使いの秘密

 こうして、シャルの新しい生活が始まった。


 朝、目が覚めて、ベッドの上で腕を伸ばす。

 いつもと同じ行動なのに、義母や義妹の顔を見ないで済むと思うと、心が軽かった。

 いつの間にかベッドの隅で丸くなって寝ていたにゃん子サマが顔を上げた。


「朝から清々しい顔をしとるのぅ」

「はい、にゃん子サマ! 私の人生は、ここから再スタートします!」

「いい意気込みじゃのぅ~」


 まずは朝食の仕度。

 庭の鶏から卵を採取し、ヤギの乳搾りをする。

 動物の世話は、近所の農家の人にお願いしているそうなので、シャルは必要な分だけ取りに行けばいい。

 庭には野菜畑もあって、ここの土地はセオの土地なので野菜も自由に取っていいそうだ。


 厨房も何でも揃っていて困ることがなかった。しかも、火を着ける時はにゃん子サマが魔法で着けてくれるのだ。

 にゃん子サマの助言で、朝食は野菜をたくさん練り込んだパンケーキにした。畑で取れた新鮮な野菜は、シャルの分だけサラダにした。セオはサラダも食べないそうだ。


 シャルは盆にパンケーキとナイフとフォーク、そして搾りたてのミルクを乗せ、セオの部屋の扉をノックした。


「どうぞー」


 セオの返事がした。

 機嫌がいいのか、声が高く聞こえた。


「失礼します。朝食を……」


 扉を開いて……シャルは驚いて固まった。

 セオの部屋は物凄く散らかっていたのだ。

 ルシアンも片付けは苦手だが、ここまでではない。


 床には、半開きの本や調合に使うと思われる材料や空き瓶、それからフラスコなど色々なものが落ちていて、足の踏み場がなかった。

 多分、部屋の左半分が調合に必要なもので、右半分が調合済みの魔法道具の山だと思われる。


「セオ。朝食はどこに置いたらいいかしら?」

「俺の隣の机にお願いできるかな? 無理そうだったらそこに置いといて」


 セオはこちらを見ずに机に向かって何かに勤しんでいた。すると背後からにゃん子サマのエールが飛んできた。


「ここに置いてもセオは食事はしないのじゃ。シャル、ファイトじゃぞ~」

「分かったわ。絶対に食べてもらうわ」


 シャルは足の踏み場を探りながら一歩ずつ進み、何とかセオの隣まで辿り着いた。


 部屋の中を進む途中、シャルはあることに気づいた。

 セオの部屋の扉の横にはテーブルが置いてあった。

 そして、その上には巨大フラスコが乗っている。

 実はそこから透明の長いチューブが出ているのだが、どうやらそれはセオの机の上まで延びている様なのだ。


 多分、喉が乾いたらあのフラスコの水をチューブで吸い上げ、飲んでいるのだ。セオは随分と横着者のようだ。

 しかし、あれだと持っても三日。

 きっとセオは自分で水を代えないだろう。

 一週間もよく生きていたものだ。

 これからはちゃんと食べてもらわないと。


「セオ、さぁ。ちゃんと食べてね」

「ああ。ありがとう」

「あら?」


 シャルは、セオのその端正な横顔に……違和感を覚えた。


「何?」

「えっと……ええっ?」


 その違和感は、セオがシャルの方へと顔を上げると確信へと変わった。


「どうした?」

「あなた、誰?」


 シャルの前には、セオとそっくりの赤髪の少年が座っていた。シャルの驚きを理由を察すると、その少年はセオよりも明るく高い声で答える。


「あー。俺はセオドリック=シルヴェスト。セオの弟でも従弟でもなく、本人だからな?」

「……え。えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 シャルは驚いて絶叫した。

 セオをよく見ると、足は床まで届いておらず、椅子にちょこんと腰かけていた。


 セオが小さい。可愛い。でも、どうして!?

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