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ただの魔法使い

「ごめんなさい。はしたないところを見せてしまったわ」

「いやいや。気にするなって……」


 苦笑いのセオに、シャルは恥ずかしくて目を合わせられなかった。


 穴があったら入りたい。

 知り合って間もない男の人に泣きついてしまったのだから。


 そんなシャルの膝の上で、当たり前のように寛ぎながら、にゃん子サマは言った。


「そうじゃ。気にすることはない。人間色々あるのじゃ」

「にゃん子サマは人間じゃないだろ?」

「ほぅ。セオも言うようになったのぅ。……ところで、シャルはこれからどうするのじゃ?」

「えっ? 私は――」


 シャルは、これ以上アフリア家の事情に二人を巻き込むことを申し訳なく思い口ごもると、セオは気まずそうに口を開いた。


「悪いと思ったんだけどさ。シャルの妹の声がデカくてさ。大体の事情は聞こえちゃたんだよな……気兼ねせずに話せよ」

「そう。……私、この家を出ようと思うの。身分を捨てて、教会のシスターになろうかなって」

「ほぅ。教会に知り合いでもおるのかのぅ?」

「いいえ。いないわ。何となく……教会なら、誰でも受け入れてくれるかなって」


 セオとにゃん子サマが顔を見合わせ目配せした後、二人同時にシャルに向き直った。


「シャル。教会なんてつまらないぞ。それに、この家の奴らは、シャルを使用人のように扱っているんだろ? そう簡単に手放すとは思えない。ただで使える奴隷なんていないからな。連れ戻されるんじゃないか?」

「そんな……」


 確かに、教会は受け入れてくれるかもしれないけれど、シャルロットを守ってくれるとも限らない。

 だったら……。


「私の居場所は……どこにもないのね」


 シャルは視線を落とし、その瞳からは一筋の涙が溢れ、頬を伝い切る前にセオが指で掬い上げた。


「シャル。……これも何かの縁だ。良かったら、俺のところに来ないか?」

「え?」

「おぉ。それはいい考えやもしれぬ。シャル。家に来るのじゃ!」

「ええっ? でも……あ、会って間もない人だし……」

「合わないと思ったら自由に出ていけばいい。食事の礼として、支度金ぐらい出してやるよ」

「ほ、本当に!? でも、悪いわ」

「そんなことないのじゃ。シャルはセオの命の恩人なのじゃ」

「そんな大層なことしていないわ。でも、もしかして……セオってどこかのご子息様なの?」


 セオは驚いて目を丸くし、そして立ち上がると笑って答えた。


「いや。俺はただの魔法使いだよ?」

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