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天使狩り  作者: 飛鳥
第1章
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学園


「………」

 本日のテレビニュースチェェエック。

 殺人殺人事故殺人、幼女殺害に虐待殺人に食品メーカーの詐称発覚。ああ、確かにあの魚よく似てやがる。

 教師淫行? 高校生的には軽蔑至極ってところだが、なんつーか、俺が大人になったらいまの同年代を愛するのは変態になるってことか。難しい話だ。ちゃんと心も認識も成長しよう。

「………」

 ところでどっこい広子ちゃんの星占いィィイイ。

 最下位。

 くだらん番組だ、降板しろ広子。いやちょっと待てよ。星占いと星座占いって微妙にちがくね? 一緒なのか? どうでもいいけど。

「………」

 そこまで観てトースト完食。うちは紅茶派だ。ずずず。

「……へぶしっ」

 冬の朝、Tシャツ1枚にトランクスなんてのは失敗だった。よっこいせと立ち上がり、テレビの電源をオフして洗面所へ。

「………」

 窓に映る間抜け面、俺こと17歳の浅葱光一。

 病んだ目つき。死んでるなオイ。

 ぼっさな髪型。セットめんどい。

 あとタバコは唇の一部である。

「ふご……」

 アクビする。そうだ唐突だけど自殺しよう。

「―――」

 ずばしこんと振り返りざま一撃ツッコミ。

 背中に張り付いていた半透明氏をぶん殴り、閉じたままの窓から投げ捨てる。あー鬱陶しい。あいつまだついてきてたのかよ。

「さって……」

 伸びをして、今度こそ顔を洗うことにする。

 ふと『春子』と書かれた木製ドアが目に入る。

 この静かさじゃ確実に寝てるな。

 もう2時間目の時刻ですが、お疲れ様です、鬼スナイプ叔母さま。



「おはよ光一。お弁当食べる?」

「過保護もそこまで行くと病気だ。朝イチで早弁勧めんな、アホ幼馴染み」

 3時間目の直前、5分休みの真ん中頃にようやっと教室まで辿り着いた。

 慣れ親しんだ通り越してゲシュタルト崩壊しそうになってるボロ教室。否崩壊しろ。目の前でおちゃらけてるバカ共と一緒に。

「光一、見て見て。昨日プリクラ撮ったんだよ」

「あん? あれってまだ流行ってんのか」

「ぜーんぜん。あんまりにも寂れてたからちょっと売り上げ貢献してあげただけ」

 嶋村さんいわく、『典型的な幼馴染みキャラ』こと坂本有紗。

 とりま例に漏れず優等生。成績優秀文武両道容姿端麗愛想良し、ただ一点、過保護のベクトルが『病的』なことを除けば普通にアブノーマルな高校生。

「ふ……」

 それの近所の席で意味もなく声を漏らしたのが異生物タケル。どうでもいい。俺は鞄をおろして机の中身を確認。あー、現国の教科書どこだっけか。

「ねー光ちゃん、いま何してる?」

「ウザメール再現か、誰が得するんだよそれ。見りゃ分かるだろ伊織」

「ラブレター探してるんだー。残念無念、そんな健気な後輩ちゃんは来てないよ。たぶん先十年は来ないんじゃないかなー」

 にこにこ笑顔で毒吐く女、吉川伊織。ロリっ子美少女マスコット、ただ一点、発言のすべてが無差別暴力なこと以外は普通に学園のアイドル。人気も反感も人一倍、でも本人にとっては「どーでもいいメンドイ。干渉してくる暇人ウザい」らしい。

「ふ……」

 タケルうるさい。

「そう言えば光一、昨日タケル君と一緒だったんだってね。どこ行ってたの?」

 おかっぱ男を睨み付ける。

 アホか。

 狩人さまの秘匿義務はどこ行った。

「ふ……」

「あーその、アレだよ。廃墟地区で」

「バードハンティングなど、ぬぐっ!?」

 タケルの顔が机にめり込みそうになった、しかし寸前で踏ん張りやがった忌々しい。

「はははー。タケルちゃんよぅ、鳥が、野鳥がどうしたって?」

 ぐりぐりぐりとおかっぱ押し込む。満面の笑顔で。

「ぐぉ、ま、待て光一……そうやってすぐ単純暴力に訴えるのは、人としてだな」

「だってさ有紗。やめてやれよ、顔が潰れてイケメンになるだろ」

「い、いやいやいや、光一? 前々から思ってたけどタケル君死んじゃうよ? そーいうのやめようよ」

「そうだな死んじゃうな。もうやめるんだ伊織、虐待は爽快感しか生まないだろう」

「光ちゃんったら。目が完全にイっちゃってるよ、やくざな目」

「ぐぉあ……! 悪魔かお前、は……っ!?」

 ぐりぐりぐり。あと1ミリ。

 俺は唇を半月型に歪め、おかっぱの後頭部に、休んでいた左手も乗せてやる。

「いいや? 知ってるだろ。俺は天使でも悪魔でもなく、人間だよ」

 ずだこんっ



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