高校生活初日 ー高校生らしさー
前回の文を少し変えましたが、物語に影響しない所なのでお気になさらず!
先ほど起きた騒動を見た者は4人だけだった。
当事者である俺と夏希と陽斗、そして俺たちと話していた咲希だ。
陽斗を取り巻いていた女子達は、夏希との会話の前に陽斗の指示により教室の外にいた。
そのおかげであまり目立たずに済んだ。少し「あれ?どうしたのかな」という目線はあったが、こっちの会話や抱き合っていたことは見ていない様子だった。
それにしても、まさか夏希が男子に対して人見知りだったなんて…
再婚の挨拶で初めて会った時は人見知りしていなかった。家族になる人だからという理由で我慢したのだろうか。
初対面の時から、夏希は元気に元々家族だったかのような距離感で話しかけてくれていたのだが、それも家族になるからと無理をしていたのかも知れない。
俺はそのおかげですぐに仲良くできたのだが、その為に無理をしていたのかもと考えると嬉しい反面、申し訳ない。
しばらくして、ガラガラとドアの開く音がした。
入ってきたのは50代くらいの、いかにも教師生活が長いと思わせるような人だった。
「え〜、みんな揃っているな。私がこのクラスの担任をする岡崎だ。昨年受け持ったクラスでは『ざっきー』とか『おかっち』とか呼ばれていた。」
クラスに笑いが起こる。
さすがベテラン。生徒との距離を縮める方法が分かっていらっしゃる。
「まぁ呼び方はどうでもいいが、これから宜しく。」
と、軽い自己紹介が終わった。
その後、今日の流れの確認をし、プリント配布が始まった。1クラスは40人。両端1列ずつが5人で中5列が6人の席である。俺の後ろには夏希がいて、その後ろには咲希がいる。
プリント配布は5分ほどで終わった。予定より早く終わったのか、少し時間が余ったため、待つように言われた。夏希は咲希と話をしているので、持ってきた本を読んでいたら、前から
「ねぇ、なんの本読んでんの?」
と急に話しかけられた。
「あ、え、えっと…〇〇〇ってやつなんだけど…」
「聞いたことないな…どんな内容の本?」
「ん〜バトル系かな。恋愛要素もあるけど、バトルシーンが迫力あっていい感じ」
「あ、それラノベか!前からアニメとか好きで本も読みたかったんだけど、周りの目とかが気になって買えなかったんだよね!笑」
「まぁ確かに、初めて買うのは勇気がいるかもね〜」
「そうそう・・・って、ごめんごめん、名前も言わずに!俺は加藤雅樹。みんなからは『マサ』って呼ばれてる」
「俺は如月友哉、あだ名とかはないから呼び方はなんでもいいよ」
「なら『トモ』て呼ぶね!よろしくトモ!」
「あぁ、よろしくマサ」
トモ…いい響きだ。まさかこんなに簡単に友達ができるなんて…
「ちなみにそのラノベってどれくらい持ってんの?」
「ん〜。まだ50冊くらいかな」
「え!?めっちゃ持ってんじゃん!そんな詳しいトモにお願いがあるんだけど、俺まだアニメとかラノベとか詳しくなくて、アニメも少ししか見てないしラノベも買ったことないから、初心者にもオススメのラノベとかアニメ教えてくれないかなって」
いや、言うて俺もそこまでなんだけど…と言いたいところだけど、こんなにお願いされてるし、しょうがないかな。
「うん、いいよ。なんなら今度一緒にラノベ買いに行く?」
「それいいな!人と一緒なら恥ずかしくないし、オススメとか聞けるし!」
「じゃあ今週の日曜とかどう?」
「空いてる!じゃあ10時に駅の近くの書店で!」
「OK」
・・・・・・・・・って、え?
え?俺今遊ぶ約束しちゃった!?まじ?友達と遊びに行くなんて初めてだよ!?外出用の服なんて持ってないよ!?どうしよ?てか友達できてすぐ遊びに行く約束するってこんなに簡単なの?機会があれば誰でも出来るようなことだったの!?
え〜、コホン、まぁ落ち着こう。とりあえず服は土曜日に夏希と一緒に買いに行こう。夏希ならいい服を知っているはずだ。まぁとりあえず気にするべきところは服ぐらいか?じゃあ何とかなるか…
入学式は何も無く終わった。笑いもなく、感動もなく、話だけで終わった。校長先生は優しそうだが、真面目で怒ると恐そうな感じだった。
ここまではどうでも良い。問題はこの次、自己紹介である。ここでこれからの生活が決まると言っても良い。俺の目標は目立たないことである。普通の声の大きさで普通のことを言うのが最高。
双子の事は言わなくていいやと思っている。咲希も、苗字が同じで仲良くなったと思っていらしいし。
前の席のマサの自己紹介が終わり、比較的早く順番が回ってきた。
「如月友哉です。運動が苦手で、読書が好きです。よろしくお願いします」若干キョドったが、及第点だったのではないか。意外とあっさり終わったことへの余韻に浸っていた1分後、急に周りから「マジか!」「嘘だろ!」という声が聞こえてきて、教室全体が騒然としていた。後ろを向くと、顔を赤らめている菜月が恥ずかしそうに座っていた。顔からプシューという音が聞こえてきそうだ。
「夏希、なんて言ったんだ?」
「え、えっとね…義理の双子っていうことと、口が滑って2人で住んでるってことまで言っちゃった…」
ふぁ?なんと言ったのだろうこの可愛い妹は。
「マジか…だからこんなに騒がしくなったんだな…まぁ言っちゃったことはしょうがないから、な?もういいよ、隠さなくても」
心の中で動揺しているのを我慢して、その現実を受け止めた。その重大発表のせいで、あとの自己紹介は流れるように終了した。
放課後は質問攻めだった。「いつから住んでるの?」とか、「家では互いにどんな感じなの」とか色々聞かれた。そこから抜け出すように教室を出た俺は、駅まで一緒に行こうと約束したマサと合流し、駅まで歩き始めた。
「さっきは大変だったねー」「びっくりしたよー」
なんて会話や
「日曜楽しみだねー」「どれくらい買おーかな」
なんて会話をした。自分が知ってる話だと意外と話が続くものだった。
駅も近くなってきた時、急に体が重くなった。
誰かが飛び乗っているような感覚・・・
「……なんだ夏希。一人で帰ってるのか?」
「だって私も女子から質問攻めにあってて。やっと頑張って逃げれてお兄ちゃん探したんだけどもう帰ったって聞いて」
「それで全力ダッシュしてきたのか。お疲れだな」
「うん疲れた」
「はは…仲いいな、2人」
その光景を横で見ていたマサは苦笑しながら言った。
「まぁ双子ですから!」
夏希は相変わらず乗っかかっている。
「あれ?夏希、男子には人見知りじゃなかったっけ?マサは平気なのか?」
「うーん、なんかだいじょぶみたい」
「そう、なのか?それはそうとして、お前はいつ降りるんだ…」
「疲れたから駅までこのままー」
「分かったよ。マサ、悪いけどコイツの荷物持ってもらっていいか?」
「いいよ笑ほんとに仲良いな〜2人」
マサは俺の分まで荷物を持ってくれた。本当にいいヤツだ。夏希はと言うと…もうすっかりリラックスモードで夢の世界に行っている。
そこからは日曜日の事やアニメの事を話しながら駅まで歩いた。マサと別れてからは、夏希と今日のことを軽く話し、昼ご飯と夜ご飯の買い物をして家に帰った。
ご覧いただきありがとうございました!
予想以上に初日で動いてしまいましたが、まぁこれくらい動いた方がいいのかな?ということで良しとすることにしました。