高校生活初日 ー波乱の幕開けー
少し長めに書きました!(だいたい3倍くらい)
これからはもっと長く書けるように頑張ります!
2人は駅への道を歩いていた。
俺たちは少し離れたところからこっちに引っ越してきて、中学までは旧居の近くに通って、高校からは新居の近くに通うことになった。そのため、中学からの友達どころか知り合いが一人もいない状況である。互いに中学は地元の中学で、小学校からそのまま上がってきた感じだったので、周りは知り合いだらけだった。その真反対の知り合いが一人もいない状況は初めてであり、不安であるのと同時に、少し楽しみにしている部分もあった。不安というのはもちろん知り合いがいないという不安。逆に楽しみというのも知り合いがいないという楽しみだった。そんな所でやって行けるのだろうかという不安と、自分の過去を知らない人ばかりで馴染みやすいのではないだろうかという楽しみ。
その二つの感情のどちらが大きいか考えている時、隣から俺を呼ぶ声がした。
「お兄ちゃん…お兄ちゃんってば」
「ん?すまん考え事してて…なんだ?」
「いや、なんか顔が暗くなったり笑顔になったりしてて気味が悪くて…どったの?」
考えながら顔に出ていたらしい…これは恥ずかしい、、、穴があったら入りたい!!
と思いながら周りをキョロキョロしていると
「ぷぷっ、、どうせ『穴があったら入りたい』とか思ってるんでしょ。ないよ、そんなに都合よく」
この子はエスパーなのか、それとも俺の言動が分かりやすすぎるのか…おそらく後者だろうが、それを認めては負けだと思い、考えないことにする。
「で?何を考えて暗い顔になったり笑顔になったりしてたワケ?」
今度は先程の様なエスパーの察しなどない、純粋な疑問が飛びかかってきた。
「高校生活に対しての不安と楽しみを考えていたんだ」
俺は正直に答えた。隠すつもりなんてないし隠すような事でもないからだ。
「ただ…」
俺は少し間を空けて言葉を続けた。
「少し不安が勝ったみたいでさ、、どうすればいいのかなって考えてた」
少しは嘘だ、強がりだ。自分の性格上、初対面の相手に自分から話しかけに行く勇気はない。相手から話してこられてもスキルのコミュ障が発動してしまい、会話にならない可能性がある。あくまで可能性だが、その可能性はとても高いと言える。
「なんだそんなことか。そんな時はね、お兄ちゃん。楽しみな事だけを考えるんだよ。どんなに不安が大きくても、少しでも楽しみなことがあれば、不安なことなんて全部ふっとんじゃうよ!」
夏希はこれまでで1番と言える笑顔と元気な声で言った。
「そう…だな」
「ありがとな、夏希。元気が出たよ」
「うん、どういたしまし…て」
さっき自分が言った言葉が今になって恥ずかしくなったのか、照れて顔が赤くなっていた。少し臭いセリフだと気づいたようだ。しかしそんな照れる姿もとても可愛い。
そんな会話をしていたら、ちょうど駅に着いた。
それから15分ほど電車に揺られ、5分ほど歩いて高校に到着した。合格発表後初めて来るのだが、新入生として見る景色は合格発表時と全く違うものであった。あの時は緊張と安堵で周りの景色がよく見えていなかったのである。改めて見てみると、とても良い設備だと分かる。
1クラス40人×4クラス×3階(3学年)の3階建ての本校舎に移動教室の際に使う教室や職員室などがある副校舎が堂々と佇んでおり、その奥には中学校のものと大きさが比べ物にならない体育館や運動場や多くの部屋が並んでいて、1階と2階で男女別になっている部室棟があった。まだ開校15年ほどでとても綺麗な高校だった。
俺は感動を覚えながら正門をくぐり、クラスの書いてある下駄箱まで足を進める。
今日は8時10分に点呼、9時まで先生の自己紹介や説明、9時から11時まで入学式があり、その後教室に戻って生徒の自己紹介である。勝負はココ、自己紹介だ。地味すぎても話しかけてもらえない、目立ちすぎるとやばいやつ判定というふたつの間をとることが絶対視され、話しかけやすいオーラを出しながら話さなくてはならない。これまでは地味な挨拶ばかりだったので目立ちすぎはないだろう。とりあえずハキハキと!わかりやすく話そう!という目標を掲げ下駄箱のクラス表を確認する。
―――1年4組 7号 如月友哉―――
―――1年4組 8号 如月夏希―――
まさかの同じ組である。正直安心した。
「お兄ちゃん同じ組じゃん!やったね!」
「そうだな、一緒になってよかった」
「うん!よかったよかった。じゃあ教室まで一緒に行こうか!」
「え?」
「え!?」
いや、嘘だろ?さすがにそれは兄妹でも恥ずかしい。
でも夏希がいいならいいのかな…と少し考え
「まぁいいよ。行こうか」
「?…うん!」
そうして2人で教室へ向かったのだが、意外と変な目で見られることなく自然に教室に入れた。出席番号が隣なのでもちろん席は前後ろである。
「ねぇ君知ってる!?このクラスには陽斗と日菜がいるんだよ!」
「「っっ!!!???」」
俺たちは急に話しかけられたことに驚きながら聞き馴染みのない名前に疑問を抱いた
「えっと…キミは…」
「あ〜ごめんごめん!私は近藤咲希。後ろの席なの、よろしくね!」
「私は如月夏希でこっちのは如月友哉。よろしくね!咲希!」
「うん!よろしく夏希!」
横で見ていただけの俺だったがさすが夏希、コミュ力高い…
「で、さっきの陽斗と日菜って誰だ?」
俺は心の中でやっと話せたと思いながら言った。
「知らないの?同じクラスの中島陽斗と橋本日菜。学年一のイケメンと美少女だよ!」
ほへぇーすごいクラスに当たったもんだなぁと思っているとドアの方から
「キャー!陽斗く〜ん!」
「カッコイイ〜!!」「こっち向いて〜!」
とんでもない量の黄色い声が1人に向けてかけられる。その声の中央にいるのはさっき話していた学年一のイケメン、中島陽斗だ。
「Myprincess、教室に入りたい。道を開けてくれないか」
彼が一言そういうとすぐに綺麗な道がひらかれた。
相変わらず黄色い声は向けられたままである。
陽斗は教室に入ると急にこっちに歩いてきた。
そして夏希の席のすぐ側で立ち止まって
「お嬢さん、可愛いね。なんて言う名前なんだい?」
それを見ていた周りの女子はなんであの子にという目線でその状況を見ていた。
「えっ…と…如月夏希…です」
「夏希か・・・いい名前だね。可愛い君にお似合いだ」
「ど…どうも」
「これからよろしくね、夏希ちゃん」
そう言いながら夏希の手を取ろうとする陽斗。
「っっ!!」
夏希は俺の背中に隠れるように俺の後ろにまわった。
そんな警戒したような夏希に俺は
「ん?どうしたんだ?」
と聞いた。人付き合いの良い夏希が珍しい。
「実は男子にだけ人見知りしちゃって…近づかれるの苦手なんだ…」
それを聞いた陽斗が
「なんで俺はダメでそいつはいいんだよ!そいつより俺の方がいいだろ!普通!」
と謎理論を飛ばした。とんでもない自信をお持ちのようで。
「お兄ちゃんのことをよく知らないアンタがそいつ扱いしないで!」
「なんだよその言い方!なんでそんなパッとしないやつを庇うんだ!」
「お兄ちゃんをパッとしない呼ばわりはやめて!お兄ちゃんはいつも話を聞いてくれて優しくしてくれるんだよ!初対面から触れてくるような人とは大違いだよ!」
その叫びを聞いて俺は心が強い妹だと感じた。
だが、夏希の方を向くと目の下に涙が溜まっていて、体が震えていた。そこで俺は気づいた。こいつは必死に、俺のために反論してくれていたのだと…
「もうやめてくれないか。妹は男子に対して人見知りなんだ。今日のところはやめといてやって欲しい」
俺は勇気をだしてそういった。だが、意外とすんなり出た。俺のために頑張った夏希がいたからだろう。
その後、陽斗はムキになってたのが恥ずかしかったのか、負けたのが恥ずかしかったのか、舌打ちをしながら自分の席に去っていった。
「お兄ちゃん…ありがとう……正直、怖かった。初対面の男子に急に近づかれて…触られそうになって」
夏希は泣きそうな顔を俺の胸に当て弱々しい声で言った。
「俺もゴメンな。お前が人見知りって知ってたらこんなことには…」
「ううん…本当にありがとう…」
夏希は手を俺の背中にまわし、軽く抱きしめた。
「もう大丈夫だって。それよりもう離してくれないか?」
軽く頭を撫でながらそう言うと夏希は恥ずかしそうに
「そ、そうだね!」
と言いながらまた席に着いた。その抱きしめていた光景を唯一見ていた咲希は小さな声で「ごちそうさま」とだけ言って普通に会話に戻った。
俺たち兄妹の入学式は激しくスタートした
ご覧頂きありがとうございます!
他の小説を読んで表現法などを勉強中なので遅めの投稿になるかもしれませんが、中身を濃く面白くするように努力します!