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産廃水滸伝 ~産廃Gメン伝説~ 13 シロアリ塚  作者: 石渡正佳
ファイル13 シロアリ塚
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ガラス混じり

 伊刈のチームはスイングゴルフ犬咬裏の穴へ産廃を持ち込んだ疑いがある一倉市の小港組の検査を実施した。小港組は基礎工事や土木工事を行う小さな土建屋だったが、山林を開拓した広いヤードを持っていて、そこにさまざまな土木資材をストックしていた。壊れかけたようなプレハブ小屋の中には二、三人の事務員がいた。小港社長は心配性なのか駐車場まで出て検査チームを待っていた。

 「ごくろうさまでございます」小港がぺこりと頭を下げた。吹けば飛ぶような小柄で痩せた男だった。

 「最初に水戸ナンバーのダンプで出している品物を拝見してからスイングゴルフとの取引関係を書類で確認させてください」伊刈が言った。

 「水戸ナンバーなんて知りませんよ。矢崎さんとは確かに契約したけど遠いのでほとんど入れてませんよ」小港は言下に否定した

 「これはどこから来た残土ですか」伊刈は小港を無視して目前にそびえる数万立米の残土の山を見上げた。

 「どこと言われてもいろいろですからねえ」

 「登ってもいいですか」

 「どうぞ」

 伊刈たちは残土の山をゆっくりと登り始めた。

 「白っぽいのがずいぶんありますね」夏川が言った。

 「白いのは再生ズリですよ」矢崎が答えた。

 「ズリ?」伊刈が聞き返した・

 「汚泥を固化したものですよ。埋戻材として売れるんです」

 「どこで作ったものですか」夏川が聞いた。

 「うちでも作るし買ったものもありますよ。固化剤は山口鉱産で余った石灰を安くもらってくるんですよ」

 「山口鉱産といったら大手ですね」

 「そうですよ」

 山口鉱産は山口県の大手建設資材メーカーで、首都圏にもいくつも事業場があって生石灰や消石灰を出荷していた。

 「このガラスはなんですか」喜多が聞いた。矢崎が再生ズリと称する残土にはガラスの破砕物が大量に混合されていた。故意に混ぜたものと思われた。

 「ズリの水はけをよくするために混ぜてるんですよ」

 「いろんな色がありますね。再生できない有色ガラス瓶ですよね」喜多が突っ込んだ。

 「水抜きのためなんだから色は関係ないでしょう」

 「どこから受けた瓶ですか」

 「買いましたよ」

 「こんなガラスをですか」

 「容器包装リサイクル法ができてからどんなカレットでもリサイクル商品になるんですよ」

 「どこで作ったカレットですか」

 「あんたらの方が詳しいでしょう。それこそ犬咬に工場があるんだから」

 「犬咬に?」喜多は意外な顔で聞き返した。

 「東京カレットって言うんだけど知らないの?」

 「買ったのなら領収書がありますよね。見せていただいてもいいですか」伊刈が聞いた。

 「そこまでする必要がありますか。値段は安心工研に聞いてくださいよ。そこに頼んで石灰と一緒に買ったんだから」

 「安心工研ってどんな業者ですか」

 「汚泥の処理をしてる産廃屋ですよ。県内じゃ大手じゃないんですか」

 「なるほど。社長の名前はわかりますか」

 「江藤さんですよ。あ、だけどうちから聞いたってのはなしにしてもらいたいなあ」

 「どうしてですか」

 「わかるでしょう。こんな業界なんだからさ。安心工研の仕事なくなるとうちは困るんだ」

 「言わないわけには行きませんよ。安心工研の汚泥だかズリだかがここのヤードを介して犬咬に来たわけだし、そこに産廃が混ざった可能性もあるわけだし」

 「可能性でしょう。あんたらが調べてる産廃にせよ残土にせようちの荷じゃないですよ。これは売り物なんだから矢崎さんとこには出してませんよ」

 「おかしいですねえ、ここから水戸ナンバーのダンプが出てるのを確認してるんです」

 「ん~そう言われてもね、身に覚えのないものはないからね」

 「取引がないってことは契約書もないってことですね」

 「そんなものないよ」

 小港はあくまでスイングゴルフ犬咬との取引を否定した。場内に廃棄物がストックされているわけでもなく、それ以上追及するねたがなかった。考え直してみれば水戸ナンバーは小港組からのものだという矢崎の証言にも曖昧なところがあった。調査はやり直しだと伊刈は思った。

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