1:この世界との別れ
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「ふぁぁぁ、今日も世界は平和だねぇ」
とても眠たそうに神崎弘人は、雲一つ無い青空を見て呟いた。
俺、神崎弘人は今年から総進高校の一年生だ。
しかし入学から一か月がたとうとしてるにも関わらず
俺は友達0、もちろん彼女なんているはずもない。
まぁつまりはぼっちだ。
しかし別に俺は一人がかっこいいとか思ってぼっちという訳ではない。
それと友達が作れない程のコミュ障という訳でも無い。
俺はただただ一人が好きなだけなのだ。
自分の家の玄関で一人そんな事を考えていた。
「お兄ちゃん、おまたせー!」
「おー、じゃあそろそろ行くかー」
「うん!レッツゴー!」
俺と同じ制服を着たこの可愛い女の子は我が妹の神崎雪菜だ。
まぁ妹といっても産まれた時間は10分ぐらいしか違わなかったらしいが。
そしてこの妹は俺の妹とは思えないほど可愛い。
多分世界で一番可愛い。
いや多分じゃないな、絶対だ、断言できる。
さっきは一人が好きだとか言っていたが、
妹といる時間に比べたらそんなもんクソだ、クソ。
「ねぇねぇお兄ちゃん、今日さ帰りにサーティーテン寄ってかない?」
「まぁ別にいいけど、冬なのにアイス食いたいのか、寒いぞ、冷たいぞ」
「何言ってんの、お兄ちゃん!冬だからアイスなんだよ!何で分かんないかなー、
これだからお兄ちゃんはお兄ちゃんなんだよー!まったくー」
「お、おう、そうだな、俺が悪かった」
勢いに押されてつい謝ってしまった。ていうか、お兄ちゃんは悪口じゃないからな。
「分かればよろしい、あっ謝礼金として今日のアイスはお兄ちゃんの奢りね!」
「えっ、ちょっとそれおかしくない?まぁ良いけどさ...」
可愛い妹の為ならしょうがない。
「やったー!お兄ちゃん大好き!!」
雪菜は満足そうにうなずいていた。
そんな事を言っている内に俺たちが通っている総進高校に着いていた。
俺と雪菜は違うクラスなのでいつも通り玄関で別れ、それぞれの教室に向かった。
始業5分前のせいか廊下に生徒の姿は無く、ほとんどの生徒は自分の教室に入り、
友達と昨日なにがあった、今朝なにがあったなどと話していた。
俺も少し早足で自分の教室に入り、席に着いた。
今日もいつもと変わりのない退屈な授業を耐え、やっと放課後となった。
「んんっ~!やっと終わった~!」
「雪菜んとこももう終わってるかなー、迎え行ってやるか」
そう思って教室を出ると既に雪菜が待っていた。
「遅いよー!もう待ちくたびれたー!」
「悪い悪い、てかそんな待ってないだろ」
「あ、ばれた?まぁでも1分くらいは待ったよ~♪」
「ほぼ来たばっかじゃねーか...」
「まぁまぁ、そんなことよりさ早くアイス食べいこー!」
「ったく、じゃあ行くか」
「おー!ゴーゴー レッツゴー!」
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「おいおい、まじかよ」
テンションあげあげのままサーティーテンに着いた俺たちだったが、
あいつ俺がトイレ行ってる間にトリプル頼んでやがった。
「おぉー!これだよ、この高さだよ、
雪菜が求めていたのはこれだったんだよ!」
「いやさすがにトリプルは無いわー、引くわー」
「えぇー!アイスといったらトリプルだよー!」
「夏ならともかくさすがに寒いだろ」
「ふっふっふ、雪菜を少しなめすぎじゃないのかな、お兄ちゃん」
「まぁ食い切れるならいいけどよ」
「余裕余裕!あっそうだ、はいこれレシート!あとでアイス分のお金ちょうだいね!」
「お、おう」
てっきり忘れてるかと思ったのに、相変わらずちゃっかりしてるなー。
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「お兄ーちゃーん!さむいよー!もう食べられないー!」
「結局食べきれてねーじゃねーか...」
「うー、反省してます... だからお兄ちゃん食べてー!」
「はぁー、しょうがねぇなぁ」
「ありがとー!お兄ちゃん!愛してるー!」
ガキッ
妹とラブラブトークをかましていると、
突然頭上から大きな音がした。
「「ん?」」
俺は雪菜と同時に上を見上げた。
すると目の前に視界いっぱいの鉄骨が広がっていた。
やばっ、避けられない!
一瞬で、周囲に爆撃でもあったかのような音が響いた・・・
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