表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛綴り  作者: 茶太朗
9/91

頑張れ受験生

明日は入試だ。

毎日コツコツ勉強をして、万全の態勢で挑む。

はずだった。

大学までのルートは調べた。

乗り換えも運賃も完璧だ。

過去問も繰り返しやった。

九割以上はできている。

早めにベッドに潜り込む。

目を閉じたのに眠れない。

なぜだか不安が込み上げてくる。

勉強しなくっちゃ。

今更ながら参考書を読みふける。

そして夜が明けた。

しまった、ほとんど寝ていない。

行きの電車で寝ればいい。

制服に着替え、朝食も取らず飛び出した。

通勤ラッシュを避ける為、早めの電車に乗り込んだ。

良かった座れる。

大きなカバンを膝に乗せ、私は目を閉じた。

すると隣に誰か座った。

若い男性、というかデブ。

私にぴったりくっついてきた。

他の席も空いてるのに、最悪。

私が席を移ればいい。

そう思った刹那に世界がぐるっと回った。

なんだろう、心臓が早く高鳴っている。

喉が熱い。

吐きそうだ。

そうしている内に次の駅に着いた。

予想以上に多くのサラリーマンが乗り込んできた。

人いきれ、自転車通学の私にはつらい。

くやしいけれどデブの肩に寄りかかっている。

目が空かない。

いや開けているはずなのに何も見えない。

まっくらだ。

どさっと何かが倒れる音がした。

「大変だ、女の子が倒れたぞ。」

ああそうか、倒れたのは私なんだ。

痛くない、感覚がない。

ただ周りの声だけは聞こえる。

聞こえるだけに恥ずかしい。

どうやら私は抱きかかえられ、座席に戻されたみたいだ。

変なところを触られてはないだろうか。

まだ感覚が戻らない。

それから二駅が過ぎただろうか、ほとんど何事もなかったように回復した。

けれど恥ずかしくて目を開けられない。

そっと開けたがぼやけて見えない。

眼鏡がないんだ。

「大丈夫、はい眼鏡。」

隣から優しい声で眼鏡が差し出された。

私はうつむいたまま眼鏡を受け取り、かけずに膝の上に置いた。

見えないくらいでちょうど良い。

そして電車は目的の駅に到着した。

そういえばカバンがない。

あわてて眼鏡をかけて見渡すが、やはりカバンは見当たらない。

まさか盗られた。

その時、隣の人がすっと立ち上がり、網棚の上から私のカバンを取ってくれた。

網棚に楽々届く長身、さっきのデブじゃない。

「はいカバン、これから試験でしょう。頑張ってね。」

私の心臓はさっき以上に高鳴った。

もう一度倒れてしまそう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ