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星
見上げると一面の星空。
名前なんかも分からない。
ただ一面に広がる光。
「きれいだな。どんなに離れていても、この空の元にいるんだな。」
そう言って彼は街へ出た。
始めの頃は隣にいるみたいに、いつも連絡を取り合っていた。
いつだったか、次第に間隔が空いていき、気が付くと隣には誰もいなくなっていた。
彼も見上げているだろうか。
街でも星は見えるだろうか。
遠く離れていたとしても、心は傍にいる。
遠く離れていたとしても、この空の下で繋がっている。
そのはずだった。
周りが明るいと星は見えなくなるという。
街はここより明るいだろう。
星より輝くモノがあるのだろう。
それでも私にとっての星は、
彼だけだったというのに・・・。




