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恋愛綴り  作者: 茶太朗
8/91

瞬間ラバーズ

交差点。

向こう側で待っている彼。

赤信号が二人をわかつ。


でも大丈夫。

もうすぐ会える。


デニムのジャケットとボトムはケミカルウォッシュ。

長身でごまかしてるけど微妙だぞ。


サラサラの前髪が風にそよいでちょっと邪魔そう。

その大きな体で私を風から守って欲しい。


なんてことは言えないけれど。


ポカンと開けた締まらない口元。

でも、分厚い下唇にキスしたくなる。


そして信号が青になる。

ここはスクランブル交差点。

人の波に彼が消える。


私は小走りで向かうけれど、人ごみに阻まれ進めない。

私より早く、この想いだけでも届いて欲しい。



そして渡り終えた先に彼はいない。


私は一人ぼっちなんだ。



だって彼は、見ず知らずの他人だから。


信号待ちの瞬間ラバーズ。

次は誰にしようかな。








読んでいただきありがとうございました。

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