72/91
遅刻
「すみませーん、遅刻しちゃいました。」
おどけて彼が教室に入る。
クラスのみんなに笑いがおきる。
私ももちろん笑っている。
彼を堂々と見つめられるチャンスだから。
「何で工事なんかしてるの。」
いつもの通学路がつかえない。
随分と遠回りになった。
急がないと遅刻する。
走る私の目に飛び込んできたのは・・・、彼の姿。
ここが彼の通学路か。
これはチャンスと近づくと、彼の隣には知らない女の子が並んでいる。
「いつも遠回りして、遅刻じゃないの。」
「学校違うから仕方ないだろ。お前に会えるんだから遅刻したっていいんだよ。」
私は無言で駆け抜けた。
彼は私に気が付いただろうか。
「すみませーん、遅刻しちゃいました。」
おどけて彼が教室に入る。
クラスのみんなに笑いがおきる。
私はもう笑えない。
読んでくださり、ありがとうございました。




