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夢くらい
「ごめん、好きな人がいるから。気持ちは嬉しいけど。ありがとう。」
同じクラスの好きな人。
私は彼を見上げている。
こんな近くから見上げるのは初めてだ。
じっと私を見つめる目。
澄んだ瞳に吸い込まれそう。
こんなに近くにいるのに遠く感じる。
たった今、フラれたから。
でも、なぜだか涙は湧いてこない。
なぜならこれは夢だから。
夢くらい、幸せであって欲しかった。
いつも通りの朝が来る。
枕が少し濡れていた。
なんだ、泣いてたんだ私。
「ずっと好きだった。付き合ってほしい。」
同じクラスの好きな人。
ずっと好きだったのは私。
ずっと待っていたのは私。
ずっと見ていたのは私。
私の方だったんだ。
じっと私を見つめる目。
嬉しいはずなのに嬉しくない。
なぜならこれは夢だから。
夢くらい、彼を想わずいたかった。
私は昨日告白した。
私は昨日フラれてしまった。
夢くらい、夢くらい、何もない日々でいたかった。
読んで下さり、有難うございました。