29/91
セキセイインコ
「ねえ、『セキセイインコ』って漢字で書けるかな。」
クラスの男子へのムチャぶり。
「そんなの書けるわけないだろう。一文字も思いつかないよ。」
そうだろう、国語が苦手ってことは百も承知なのだから。
「書ける人ってどんな人だろうね。」
「そうだなあ、太ってる人と痩せてる人だとどっちだろうなあ。」
斜め上の会話に返答が止まってしまった。
「何で太ってるとか考えるかな。体型は関係ないじゃない。まだ漢検一級の人とか言ってよ。」
彼は軽く腕組みをする。
「でもテレビだと二級位までしか出ないから。一級の人って都市伝説じゃないかな。」
あんたの頭が都市伝説じゃ。
このままじゃ埒が明かない。
「どんな人が書けるのか教えてあげるよ。それは君のことが好きな人だよ。」
そう言って私は彼のノートにサッと書いた。
ー背黄青鸚哥
胸の鼓動が収まらない。
私は一度目をつぶって、そっと彼の顔を見た。
彼はポカンと口を開けている。
「なあ、これって何て書いたんだ。」




