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なみだ
私は泣いたことがない。
もちろん覚えている限りだ。
悲しくないわけじゃない。
でも泣くのは違う、そう思うだけ。
「ごめん、好きな子がいるんだ。」
そうなんだ。
フラれるかもしれないのに私をフルんだ。
いっそ私のことが好きじゃないって言えばいいのに。
いつもそう、なぜか俯瞰で見る私がいる。
なぜか言い訳ばかりして、自分を守る私がいる。
涙のひとつもこぼせれば、少しは可愛く見えるのだろうか。
きつくても、
つらくても、
いやきついからこそ、
つらいからこそ冷静でいられる私がいる。
「お前かわいくないな。」
もう言われ慣れた。
「お前きついな。」
もう聞き飽きた。
「お前って自分をしっかり持っててすごいな。俺と付き合ってくれないか。」
・・・
「お前笑うと可愛いよな。」
・・・
「どうして泣いてんだ。俺、悪いこと言ったか。」
・・・そうじゃない、私もすっかり忘れていた。
涙は嬉しくても出るんだよ。




