砂糖はいくつ?
「砂糖はいくつ入れますか。」
丸くて可愛いシュガーポット。
蓋を開けると角砂糖が満タンだ。
彼女は折れそうな細い指で角砂糖をカップに入れる。
「指に砂糖がついちゃった。」
彼女は人差し指を唇に当てた。
唇がぷるんと震えた。
いや、震えるわけはないのだが、それくらい柔らかな唇ってことだ。
「僕はふたつかな。」
「甘いの好きなんですね。」
しまった、ここはブラックだったか。
ブラックの方が格好いいと砂糖を入れずに早五年。
格好いいかどうか試すことなく早五年。
初めての機会に大失敗だ。
彼女は特に気にすることなく、角砂糖をつまみ、僕のカップにそっと入れる。
唇に当てたばかりの指で、僕のカップに角砂糖を入れる。
これって間接キスってやつか。
いや間接間接間接キスか。
それでもいい。
文字通り、いつもより甘いコーヒーを口にする。
「ここのコーヒーって香りがいいですね。」
香りか、僕には彼女の髪の香りがほのかに感じられ、いつもより鼻呼吸になってしまっているよ。
「あの、さっきから心の声がだだもれですよ。」
「えええええ。」
しまった、独りが長いものだから、ついつい声に出してしまってた。
「はっきり言ってドン引きです。」
読んでいただき、ありがとうございました。