~思い出~1
かなり拙いですが、読んで頂ければ幸いです。
あと、基本コメディータッチなので、クスッと少しでも笑って貰えれば幸せの極みです。
初めて〝彼女〟と出会ったのは、こんな雨の日だった。
降りしきる雨の中、訳も分からず入れられた狭い段ボール箱の中で、兄弟たちと互いに震える体を寄せあっていた事を覚えている。
心細くて鳴いた。
母を求めて鳴いた。
しかし、求めていた温もりが訪れることはついに無かった。
それでも鳴き続ける。
道行く人間たちは、こちらを見てはただ通り過ぎていく。その瞳に憐憫の情を浮かべたまま。
それでも鳴き続ける。
いつしか兄弟たちの鳴き声は聞こえなくなっていた。
それでも鳴き続けた。鳴いて鳴いて鳴いて……。
寄せ合う体から伝わってくる鼓動が、唯一この場にあって心の支えであったその鼓動がどんどんと小さく弱々しくなっていく――。
いつしか〝鳴き声〟は〝泣き声〟に変わっていた。只々悲しくて、寒くて、泣き喚く。
兄弟たちの分もと、この理不尽な仕打ちに力の限り慟哭する。
もしあのまま死んでいたなら、きっと人間を許さなかっただろう。呪って呪って……のうのうと暮らす馬鹿な人間どもを、それこそ末代まで祟り続けたことだろう。
不意に途切れる雨の冷たい感触。最後の力を振り絞って仰ぎ見たそこには、視界いっぱいに広がる赤い傘と、人間の少女のあどけない顔があった。
それが〝彼女〟との初めての出会い。
思わず鳴いた。助けて欲しくて泣いた。
それに反応するかのように、〝彼女〟のつぶらな瞳から雨が降り始めた。しかし温かい雨。
その後の記憶は殆ど無い。きっと力尽きて気を失っていたのだろう。
ただ、〝彼女〟の声だったのだろうか。最後に誰かを呼ぶような、悲痛な叫び声を遠くに聞いた気がした。