メガネ
丸と丸でメガネ
四角と四角でもメガネ
三角と三角でもメガネ
隣の席の神崎は今日も一人でよくしゃべる
『横田くん。横田くんの眼鏡はどんな眼鏡?』
『俺のはフレームレスだよ。』
『ふーん。』
聞いた割には興味のなさそうな返事だ。
神崎いつもこうだ、話しかけてきておいて返事をすると聞いてるのか聞いていないのかわからないような態度。
俺のことなど眼中にない。
『横田くん、明日席替えだって。もう横田くんじゃ無くなっちゃうね。』
『そうだね。』
『そうじゃなくて、私の横田くんじゃなくなっちゃうねって言ったの。』
『もともと俺は神崎のものじゃないよ。』
『私の横にいる横田くんじゃなくなるねって言いたかったの。』
なぜか神崎はうつむいて言った。
『うん、そうだね。』
傷つけてしまったのだろうか。
『ごめんね神崎。大丈夫?』
『大丈夫じゃない。』
『保健室行く?』
『行かない。』
『じゃあどうしたらいいの?怒ってるの?』
『怒ってない。』
『じゃあ顔あげなよ。』
『やだ。』
『もうどうしたらいいの。』
『横田くんが私のものになったらいいよ。』
『どういうこと?』
『わかんないならいいよ。』
神崎は俺からメガネをとって走って行ってしまった。
視界不良のまま彼女を追いかけても見つからないかもしれない、だけど今の俺にそんなことを考える余裕などなかった。