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流刑人形の哀歌  作者: 無暗道人
春の湊に
97/366

1

春風、乱世を呼び覚まし

朱耶(しゅや)、磚(かわら)を抛(な)げて玉を引く

中小国(なかおくに)隊長、銀河に願いを掛け

勝利の酒は、苦悩で苦し

 青々としていた。

 空も海も穏やかで、雲一つ、細波(さざなみ)一つ無く、透き通るような青が広がっていた。

 振り返り、山の方に目を向けても青々としている事は変わりが無い。こちらは木々の緑が青い。春先の、黄色にも近い柔らかな緑では無く、しっかりとした青い緑だ。

 帝国歴404年の第11節に入った。季節はもう、晩春と言うべきか、初夏と言うべきか迷うところだ。

 安東(あんどう)高星(たかあき)は窓枠に寄りかかりながら執務机の上の書類の山を一瞥し、ため息をついた。雪が解ければいよいよ戦が始まると勇んでいた者が多いが、実際にはそうはいかない。

 高星としても、すぐにでも戦に臨みたい気持ちは変わらなかった。しかしただでさえ全てが動き出す春先は、やらなければならない事が多いのだ。

 農村では植え付けのために人出はいくらあっても足りないし、交易も自由に船が動かせる季節になって活発に動き出す。当然、統治する側の仕事も増える。

 冬の間十分に体を動かせなかった軍も鍛え直さねばならないし、武具の手入れもしなければならない。冬の間に鍛冶仕事に燃料を回したら、薪や炭が高騰して暴動が起きかねない。だから武具の手入れは春になってから、寝る間も惜しんでしなければならない。

 幸いにも、どれも大過無く順調に進んではいた。決済しなければならない書類の山だって、最盛期の半分以下までは減ったのだ。

 それに、動きが取れないのも悪い事ばかりでは無かった。元々この最北の地では春が遅く、身動きできるようになるのも遅いのだが、その分先に動き出した南の情勢を、安全地帯から観察できる。


     ◇


 静かに戸を叩く音がした、何も言わないが、構わず戸が開かれる。ジャンがまた少量の書類を持って入ってきた。


「棟梁、そろそろ皆集まる時間です」


 執務机に高星の姿が無いので、ジャンは一瞬部屋の中を見回し、窓枠に寄りかかっている高星の姿を見てため息をついた。


「棟梁、サボってるとまたエステルさんにうるさく言われますよ」


 書類を机の上に無造作に置く。


「心外だな。私は誰よりも忙しいはずなのだから、その分キチンと休憩を取ってしかるべきだろう?」

「それをエステルさんに言ったら、凄く困った顔をするでしょうね」


 高星は完全に自分のペースで仕事をするが、期限は余裕を持って守るし、なにより休む間もないほどの激務を自ら抱えているのは紛う事無き事実なのだ。

 故に、度々仕事を中途で投げ出してはエステルに文句を言われているが、もっと休むべきだと言うのもまた常々エステルの心配の種である。


「いい加減な仕事などしていないし、余裕をもって仕上げている。何も文句を言われる筋合いはないだろう?」

「仕事の内容に関してはそうかもしれませんが、仕事に対する姿勢の問題だと思います。部下が悪い所ばっかり見習う様な事を、エステルさんは心配してるんじゃないですかね」


 これは一本取られたと言う様に、高星が笑った。やはり一度手元から離したのは正解だったと思う。ジャンは以前より、少し大人になったと言う感じがする。


「ではせいぜい、皆が来るときは真面目に仕事をしている姿を見せなければならんな」


     ◇


 執務室に、主だった者達が集合していた。提督、親衛隊長エステル、騎兵隊長中小国(なかおくに)、歩兵第一大隊長、工兵隊長、輜重隊長、政務の各部門責任者、そして書記としてジャン。

 それぞれの担当する部署からの報告を手短に済ませると、議題は今年に入ってからの情勢に移った。


「今日は最新情報がある。提督」

「はっ。第5節頃の話になりますが、南朝の皇帝カルロスの第二皇子が、昊天(こうてん)属州入りをしたとの事です」

「昊州? 内海を渡って帝国の最西部ではないか」


 エステルが怪訝そうな声を上げる


「北朝との対立を抱えているときに、どうしてわざわざそんな僻地へ皇子を送る? そもそもその皇子は幾つだ」

「さて、詳しい事までは。ただ第二皇子はまだ十五にもなっていないと聞きます」

「早くも後継者争いでも始めたか?」

「その可能性も無くは無いが、もっと積極的な理由の可能性もある」


 高星の一声に、注目が集まる。


「積極的な理由?」

「昊州は確かに都から遠い地方だ。そのため、南北両朝のどちらもしっかりとした支配権を確立していない。そうだな? 提督」

「はい。一応、彼の地の総督や有力諸侯は北朝方を名乗ってはおりますが、実態は独自の勢力と言った方が良い様です。つまり、我らと同じという訳ですな」

「うむ。言うなれば昊州は一種の空白地帯と化している。勢力で劣る南朝は、その空白地帯を北朝に先んじて抑え、勢力の拡大を図ろうとしていると考えられる。

 だが亡命政権である南朝に、昊州征服の軍勢を送る余力は無い。本拠のある朱州(しゅしゅう)すら完全に掌握しては居ないのだからな。

 軍事力に依らず一州を抑えようと考えた時、皇子を送ると言うのは有効な手段と言えるだろう」

「なるほど。皇子と言う旗頭を送り込む事で、現地の南朝方を支持する勢力を糾合し、その力を以て州を征服しようと言うのだな」

「そうだ、それならば兵力は皇子の護衛だけで済む。それに……」


 一旦、言葉を切る。


「失敗して、全てを失ったとしても惜しくは無い。貴族や皇族の子弟の価値なんてものは、いくらでも替えの利く『次期当主候補』でしかないからな。

 いや、家さえ保てるのならば当主すら大した価値は無い。特に傀儡皇帝ともなれば、いくら廃しても都合の良い替わりはいくらでも居るからな。先の内乱がいい例だ」

「つまりその十五にもならないと言う第二皇子は、言ってみれば捨て駒か。上手く行けばよし、失敗しても惜しくは無いと」


 エステルの声は努めて冷静を装ってはいたが、どこか渋い物を噛んでいる様な響きが有った。


「あけすけに言えば、そうなるだろうな。まあ、情報が届くのにも時間のかかる、遥か遠方の出来事だ。当面、我らには関係はあるまい」


 高星の物言いは、僅かな揺れすらも感じさせないものだった。


「殿、よろしいですか」

「なんだ」

「昊州に第二皇子が派遣された事から推測するに、他の地域にも中央の息が掛かった者が派遣されてくる事態もあるのではないでしょうか。

 場合によっては、南北両政府からそれぞれ人が送り込まれてくる可能性もあるかと。

 もしこの変州(へんしゅう)に中央の人間が送り込まれてきた場合、いか様に対処するべきでしょうか」

「ふむ、もっともな疑問だ。はっきり言ってしまえば、送り込まれてきた相手の出方次第。うまく我々の都合よく事を運べるように立ち回るとしか言えん。

 だがその心配はまずないだろうし、もし中央の人間が送り込まれてきたとしても、我々が相手をする事は無いと思う」

「何故でしょうか?」

「ここにはコルネリウス家が居るからだ。帝室の藩屏、変州の本当の支配者であるかの家が今の変州を掌握している以上、中央から誰が来ようともコルネリウス家の意向に逆らっては何もできない。

 故に変州にコルネリウス家への使者以上の者を送る事に大した意味は無いし、送り込まれてきても当面矢面に立つのはコルネリウス家だ。故に我々はその点に関しては心配する事は無いと思う。むしろ……」


 高星がにやりと悪い笑みを浮かべる。


「中央から人が送り込まれてきて、コルネリウス家と主導権争いでもして揉めてくれた方が都合が良いな。もしそうなれば、全力で支援してやる所なのだが」


 高星がわざとらしく、いかにも悪人の様な笑いをする。居並ぶ者達も、それぞれに苦笑いや悪だくみをしていますと言わんばかりの笑みを浮かべた。


     ◇


「次の議題に移ろう。この春正式に、北朝政府が蒼州(そうしゅう)の自称皇帝ジギスムント討伐軍を派遣したが、それについての詳細情報だ。エステル」

「はっ。討伐軍の司令官は、エルモア伯爵。軍容はほとんどが伯爵の臣下の将兵で、兵力は出陣した時点で四千。それ以上は移動しながら召集するものと思われる。

 出陣したのは第7節の事なので、早ければもう最初の戦闘は始まっているかもしれない」

「聞き覚えの無い名前ですな?」

「私もそう思い、すでに詳細を調べさせてある。エステル、続けてくれ」

「はい。エルモア家は都の南東、蒼州の西に位置する陽州(ようしゅう)に領地を持つ家で、血筋は古いが少々の権勢を得たのはここ何代かという、新興勢力と言って良い家の様だ。

 現当主は四十六歳。政府軍で二千程の部隊を指揮する部隊長に就いていた。ただし、帝都内乱の折にその職は辞して領地経営に専念するようになった模様」

「あまり目を引く様な経歴ではありませんな。なぜその様な人物が、野戦では無敵と言う評価もあるジギスムント討伐の任を?

 それに兵力も、あくまで中核となる精鋭と考えても四千は少ない。支配地域から言ってジギスムント軍は、少なくとも二万は居るでしょうに」

「そこまでは、なんとも」

「まあ、十中八九北朝政権内の争いの結果だろうな」


 高星が腕を組み直す。


「北朝政府としては、皇帝を自称して独立勢力となったジギスムントは、自らの正当性に掛けて打倒する必要がある相手だ。ただでさえ南朝と敵対しているのに、他にも皇帝が経てば『唯一正当な皇帝を擁する』と言えなくなってしまうからな。

 しかしその北朝の二大支柱、ペルティナクス大公とユアン公爵が対立を深めているのは、もはや公然の秘密だ。お互い相手の失策を望んでいる。

 そんな両者にしてみれば、蒼州征討軍を自分が率いて失敗したくは無いし、かといって相手に押し付けて成功でもされてもまずい。

 そんな駆け引きの末に、とりあえずどちらの派閥にも属さない誰かを派遣して様子を見よう。まあ、そんなところに落ち着いたのだろう。

 政争相手を置いて都を留守にしたくないと言うのもあるかな」

「確かにエルモア伯爵は、大公派でも公爵派でも無く、皇帝に直接忠誠を誓うと言う貴族のうちの、比較的大きな家の様だな。

 つまりはどの派閥にも属さないが故に、厄介事を押し付けられたという事か。哀れと言うより、立ち回りが下手だな」

「そうとも言い切れないかもしれない。エステル、エルモア伯爵の経歴に、六年前の記述があったろう」

「六年前? 待ってくれ、ええと……ああ、これか。

 六年前、伯爵が四十歳の時、近衛騎兵大隊長として、蒼州の戦乱の平定に参陣しているな。

 昌国君(しょうこくくん)の旗下として初めて実戦を経験したようだ」

「昌国君こと朱耶(しゅや)家の先代当主は、音に聞こえた朱耶家の精鋭騎兵・鴉軍(あぐん)の創設者だ。その下で騎兵隊長として参戦し、古くから強力な騎兵を産する事で有名な蒼州で、実戦に揉まれ続けた兵を相手に戦った。

 ならばこう考えても不思議ではないのではないか? 『蒼州の強力な騎兵を幕下に加える事が出来たならば』と」

「つまりエルモア伯爵は、自ら志願して蒼州征討に赴き、蒼州の兵を手に入れる野望を持っていると?」

「そしてその力を背景にすれば、南北朝でも、ましてや大公派でも公爵派でも無い。独立した勢力として割拠する事が出来るだろうな」

「まさか、いくらなんでもそこまで考えているとは……」

「確かに少しばかり考えすぎかもしれない。だが、蒼州の諸侯は勝った者に靡(なび)く。それはここ十年で証明されている事だ。

 ならばエルモア伯爵が彼らに勝てばどうなる? そして蒼州の強兵を幕下に加えた勢力を、大公派や公爵派が放置するか?

 そして征討軍司令官になった以上、死にたくなければエルモア伯爵という御仁は、戦に勝つしかない。その後の展開は、本人の意思など聞いてはくれない」

「否応無く、乱世の荒波に巻き込まれる身という訳か」

「ま、負けて死ねばそれまでだがな。ジギスムント陣営には、歴戦の名将がうようよ居ると聞く」

「夏の内には戦況について詳しい報告ができると思う。この件に関しては、今は以上だ」

「解った、では次の件に行こうか」


     ◇


「まとまった報告としては、これが最後になる。第9節に起こった、ジエ橋会戦についてだ」

「ユアン公爵が、玄州(げんしゅう)制圧を目指してコウスェン男爵の軍と激突したそうだな?」

「コウスェン男爵は、ユアン公爵を余所者と嫌っていた、反ユアン派の急先鋒だったからな。いずれ衝突するのは不可避の事態だったと言えるだろう」

「では会戦に至るまでの経緯も含めて、ゆっくりと説明してもらおうか」


     ◇


 コウスェン家は玄州の北部に位置する小領主である。今のコウスェン男爵は、コウスェン家の人間では無く、代々仕える家臣の子だった。

 彼は幼い時から利発で文武に優れ、成長してからは美青年で人望が有ったので、先代のコウスェン男爵に気に入られ、学費を出してもらい都の大学で学問を積んだ。

 これはコウスェン家には男子が生まれなかったので、娘の結婚相手を婿養子とする必要が有り、婿として彼が選ばれたため、それにふさわしい学問をと言う配慮であった。

 二十六歳の時に正式に結婚して、コウスェン家の次期当主となった彼は、主に領内を見回って治安維持に努めた。

 ある時、数騎の供を連れて見回りをしていたところ、領民から付近の山に盗賊が集まっているらしいとの通報を受けた。

 自ら偵察に赴いた彼は、数十人の盗賊が大きな襲撃計画を練っている事を確認するが、発見され、包囲されてしまう。

 およそ十倍の賊に包囲された彼は、部下達にこう宣言した。


「賊は我らが少ないので、すぐにでも皆殺しにできると油断している。今、その油断をついて決死の覚悟で突破しなければ、全滅するしかなくなるぞ」


 そして自ら先頭切って突撃を掛け、戟を縦横に振るって賊を殺しまくり、ついには部下の半数を失いながらも辛うじて脱出に成功した。

 その後、大至急で軍勢を動員し、残りの賊を見失う前に猛追を掛け、ついに一人残らず討ち果たすか、捕らえて死刑にしてしまった。この一件で彼の武名は大いに轟いた。

 三十歳の時、当時激化する一方だった蒼州の征討に彼も動員され、三百騎を率いて州境を越え、昌国君の下で戦果を挙げた。

 この時、旗下の騎兵は全て白馬に乗り、輝かんばかりの白衣銀甲を身に着けて戦った。人々はこれを白馬軍と呼んで恐れ、讃えた。

 そんなとき、凶報が舞い込んだ。彼の留守を知って、普段から険悪な仲であった隣の領地の子爵が突然、大挙してコウスェン家の領地に襲い掛かり、彼の義父を殺した。

 辛くも難を逃れた妻の手紙でそれを知った彼は怒り狂い、急遽(きゅうきょ)軍を返して仇討の戦を挑んだ。

 強行軍で疲弊した白馬軍と敗残兵の集まりと高をくくっていた子爵は、数倍の兵力を擁しながら打ち破られ、捕らえられた。

 今や正式にコウスェン男爵となった彼は、恨みに任せて殺すような事はせず、子爵の行為は明確に違法であると言う告発文書と共に、都へ護送した。

 昌国君の後押しもあり、コウスェン男爵の主張は全面的に認められ、正式な法の裁きによってこの件は決着がつけられた。この一件で彼の名は、都でも広く知られるようになる。

 正式に家を継いだ後のコウスェン男爵は、主に騎兵の機動力を生かして、広大な平野の広がる玄州の治安維持を一手に担う様になる。公式には属州総督の配下としてその任務を負うとなっているが、実際は独自の判断に基づく行動が認められていた。

 時に逃げる盗賊を追って、管轄外の州の外まで軍を進める程に果断な彼の行動は、広大で豊かな玄州に長く平和をもたらした。もちろん、それを快く思わない者もいる。


 そして帝国歴403年冬、ユアン公爵が玄州の属州総督に就くと、州を自らの地盤とするべく動き始めた。当然、コウスェン男爵にも、実質的な配下に加わるように要求してきた。

 ユアン公爵の権勢を恐れ、あいまいな返答でお茶を濁す者が多かった中で、コウスェン男爵はこれを真っ向から拒絶した。

 いままで自分が玄州の平和を守ってきたのは、貴様にくれてやるためではないと言い切ったと言う。

 平民の身から、婿養子で貴族の家を継いだ身に由来する、高位の貴族に対する不信と反発もあって、その言動は先鋭的だった。

 ユアン公爵としても、玄州土着勢力としては最強と言ってよいコウスェン男爵が、これほど明確に自分に刃を向ける以上、叩き潰してしまわない事には支配権の確立など望めなかった。

 また今年三十六歳のコウスェン男爵は、ユアン公爵より十歳以上年下である。若造にコケにされて黙っていられなかったと言うのもあるのだろう。

 かくして帝国歴404年第9節、玄州ジエ橋南岸の平原で、両者の軍勢が激突した。

 コウスェン軍は白馬軍を含む一千、対するユアン軍は五千を動員した。兵力差はあるが精強な白馬軍を有し、地形も騎馬に有利は平原という事で、必ずしもコウスェン軍が不利とは言えなかった。何より実戦経験がまるで違う。

 だがコウスェン軍はユアン軍の先鋒、わずか四十程の部隊によって足止めされ、動きを止めたところに弓矢の斉射を受け、次いで大軍に押し包まれて敗走した。

 ユアン公爵は対白馬軍のために、蒼州の対騎兵戦に慣れた傭兵を雇い、先鋒に当てたのである。

 白馬軍にも大きな被害を出したコウスェン男爵は、真っ向からの戦は不可能と判断し居城を放棄。要塞を建築して籠城の構えに入ったと言う。

 一方ユアン公爵は、当面最大の敵であるコウスェン男爵を打ち破った事で臣従を誓う貴族が増え、しばらくは玄州に確固たる支配を確立する事に専念する様だ。


     ◇


「以上がジエ橋会戦の顛末(てんまつ)だ。玄州におけるユアン公爵の優位は確定したと言って良いだろう」

「兵力差はあったとはいえ、精強で知られたコウスェン男爵を一度の会戦で潰してしまうとは、流石大貴族と言ったところか。

我々も他人事では無いな、一歩間違えばコウスェン男爵の二の舞だ」

「だが、そうなるつもりは無いのだろう?」

「当然だ、そのために今日まで備えをしてきたのだ」


 高星が執務机から立ち上がる。


「皆の者、戦はもうすぐだ。一日一刻も無駄にせず、戦備を整える事に専念せよ」


 はっと言う、強く短い言葉が、執務室にこだました。


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