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異世界へ、いざ。

「いい天気です。この天気なら布団も綺麗に干せますし花たちも喜びますでしょう」


 庭の中央で空を見上げ笑顔を作る。雲ひとつ無い快晴。今の季節の春には丁度良いものです。

それにしても、これほどまでに良い天気ですと皆を屋敷の仕事をさせるのはなんとも罪悪感があるものです。

今日は屋敷の仕事は無しにして皆で外に出して休暇を取らせましょうか。ええ、それが良いですね。最近は働きづめでしたし、たまには休息をとるのもいいでしょう。


「そう思いませんか、アリシア嬢様」


 笑顔のまま半歩後ろ隣に立っている女性に声を掛ける。

彼女は私の言葉を聴くとため息をついて、なんとも馬鹿を見るような目で私を見つめます。何か私は言いましたでしょうか。


「お言葉ですが、クロさん。ここ数年ずっと晴れですし未来永劫晴れ以外の天気はありえません。さらには二日程前に私たちに休暇を無理やりとらせ、一人で仕事したのを覚えていらっしゃらないのですか」


 淡々と呆れを乗せながらこの屋敷のメイド長であるアリシア嬢様は私に告げます。

考えが読めるのですか、アリシア嬢様は。私はそんなものを教えた覚えはありませんよ。

しかし……。二日前に休暇をとらせましたっけ。彼女がいうのなら本当なのですが、私には全く覚えがありませんね。そろそろ歳でしょうか。


「……そうでしたっけ。それでも今は正直の所屋敷で仕事する必要はありませんよ」

「それでもです。私達はまだまだクロさんのように完璧ではありませんし、まだまだ学ぶことがあります。ですので屋敷での仕事はしますし、今回の旅も賛同はできません」

 

 なんと、アリシア嬢様達はまだ納得していなかったのですか。いやはや、てっきり何も言って来ないので別にいいと思ってましたが。


「それはクロさんが今日まで私達に言っていなかったからですが」

「そうでしたっけ?」

「そうですよ」


 本格的に駄目ですね。私、鳥頭じゃないですか。本当に三歩進めば何もかも忘れる自信が今ならありますよ。――と言うのは冗談です。二日前に彼女達に休暇を与えたのも覚えていますし、あえて旅の事を言わなかったのも私の意志でやりましたから。

アリシア嬢様にはばれているでしょうけど、優しいですからね。口には絶対に出さないのですよ。本当に出来た娘です。


「さて、雑談も程ほどに……、クロさん。いえ、執事長。メイド達をエントランスに集めました」


 ふむ、別に夕方までなら良いと伝えた筈で、確か昨日は夜遅くまで彼女達も起きていた筈で早朝は辛いと思うのですが。まぁいいでしょう、それならついでにミィーティングの時に旅の事も言いましょうか。


「わかりました。すぐに行きましょう。彼女達にも旅の事言わないといけませんから」

「ええ、お願いしますよ。黙って行かれますと屋敷が荒れますから」


 本当に、それは良い意味でとっていいのやら悪い意味でとっていいのやらわかりませんね。

でも彼女達もアリシア様と同じで優しいですからね、私の事を心配して仕事に支障が出ると言うことかもしれません。本当に私は幸せ者ですよ。

しかし、そうなればこのまま普通に言っても心配させてしまいそうですね。となると彼女達は異世界まで追いかけてこないでしょうか。ありえない可能性でもありませんし、あの方も喜んで手を貸しそうですし。ふむ、ここは皆様が納得するように言葉を考えて置かなければ。

アリシア嬢様を前に屋敷に向かいながら言葉をいくつも何度もつなげ、彼女達が納得するような説明を考える。といっても、結局は自分勝手な旅で完結するのですが。


「執事長、お願いします」


 アリシア嬢様が屋敷の扉を開けて私の入館を待つ。

その奥は9人のメイド達がきれいに整列し、一点に私の方を見ていました。ああ、もうついたのですか。まだ説明を考えていないのですが、仕方ありません。なるようになります。

 私は覚悟を決め、中に入るとメイド達の前に立つ。そして少し待ってアリシア嬢様が扉を閉めて隣に立つのを確認してから目の前の彼女達に声を掛ける。


「おはようございます。レティリア嬢様、クティリア嬢様、ヘルナ嬢様、メルシ嬢様、桜嬢様、マリア嬢様、クレア嬢様、アリア嬢様、見広」

「「「おはようございます。執事長」」」


 いつもどおりの綺麗に揃った声で挨拶です。関心ですね。

っと、そんな事よりも次ですね。


「ええ。さて、朝のミーティングの前に話があります」


 私は少し緊張しながらもそう話を切り出す。……、さてここからどう納得させましょうか。


「旅の事ですね、どうか気をつけて行ってらっしゃいませ」

「どうして知ってるのですか」


 いえ、本当に、どうして、知ってるの、ですか。

 まさか私、独り言で行ってしまってましたか。もしや、手帳を落とした際に予定表を見られてしまいました。まさか本当に皆様は私の考えがわかるのでしょうか。


「ベアル様が昨日の夜中私達を集めて『執事は明日から数年、異世界の旅に出るぜぇ? 寂しいと思うのはいいが絶対心配なんてすんなよ、時間と気遣いの無駄になるからなぁ』と仰っていたので」


 あの馬鹿はそんな事を言ったのですか。自分の口から伝えると言った筈ですのに、酷いお方だ。と言うよりなんですか、心配が時間と気遣いの無駄とは。失礼にも程がありますし、第一私も人間ですので死ぬ事だってあるのですが。

信頼されてるのか馬鹿にされてるのか。……いえ、どちらもですね。


「ふむ、そういうことですか、それでしたら少し説明が省けますね。さて、ベアル様から聞いたとおり、私は今日から数年間の休暇をもらいます。その間の仕事の監督は見広、アリシア嬢様で行ってください。万が一に緊急な用事があればベアル様が定期的にこちらに来るそうなのでその時にその節をベアル様にお伝えください。

今日は休みにしますので、故郷などに顔を出したりのんびりと過ごしたりして各々思うように楽しんでください。明日からは見広、アシリア嬢様に全てお任します。喧嘩、怪我の無いように仲良くお願いしますよ?」

「「「わかりました」」」


 とりあえずはこれくらいでしょうか。


「終わったか?」


 後ろからの言葉に少し驚きながらそちらを見ると私神路魔黒己と良く似た顔立ち、声、背丈、体格の人物であるベアル・フェルマード・ハロウィンがゆとりのある黒いロープを地面に垂らしながらそこに立っていた。

 彼は私であり、私は彼であり。同一人物と言われればそうであり、別人と言われればそうでもある。簡単に言えばもう一人の私ですね。


「っと、いらっしゃたのですかベアル様。――私の方は終わりましたよ。そちらはどうですか?」

 

 私が聞くと彼は口の両端を上げて微笑みながら言う。


「おう、準備は出来たぜぇ? 後はお前だけだ」

「そうですか」


 わかってはいましたが改めて思いますよ『化け物』とね。まぁ、流石といったところでしょうか。

 

 かれこれ旅を計画し始めて約10年の準備期間。え? 長いですって? 私位の歳になれば10年なんてものは300kmの速さで100m走るくらいですよ。と、言いますがそういう意味での早いでは無いのです。

 異世界への道を造る時間が異常なのですよ。

 まず、一般的に想像の世界とされている『異世界』を数値化する所から始まり、そしてその数値を元に、決まった計算式で異世界への道を割り出すだけではなく、その数値から公式を考え出し、行く世界をランダムにするというシステムを人間の手で一から組み立てたのですから、本当は早すぎるくらいですよ。


「ああ、それと。荷物の中にガイドブックとピアス型の通信機を作って入れて置いた。向こうに着いたらまずは通信機のテストの方をたのむ」


 そんな物まで作ったのですか、ベアル様も暇なんですねぇ。


「ええ、わかりました。……ではそろそろ」

「そうか。――門の方に『扉』を作ってある。『扉』に入ってまっすぐ行けば直ぐに異世界につくだろうよ」


 私は説明に「わかりました」と頷いてから後ろのメイド達に「行ってきます」と挨拶をしてから屋敷を出た。

 今は12月だと言うのに季節感を感じさせない、まるで春の日差しを受けながら庭を進んで行き、我が家の敷地の入り口である門の前で立ち止まる。

 門の前には合金のジェラルミンケースが光を反射させながら置いてあり、それを手に持って重量を右腕に感じさせる。このケースの中にはベアル様が言っていた物が入っているのでしょう。私が自分で持って行くものはコートに隠してあるナイフ数本のみ。他の食料などは向こうで現地調達となる。

 

「異世界……、いざ!」


 私は程よい緊張感を感じながら門を開け、足を前に進めた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


はい、どうもRaja&Yでございます。


文章が安定しない。ところどころ説明が下手、もしくは足りないところがございます。もう本当に申し訳ありません。


さて、次回は異世界での仕組みをいろいろと出します。

後は適当に、見たいな感じですね。


*次回予告*

「異世界の食べ物ってこわいですねぇ」

「そうだな。今までの常識なんてものは通用しねぇからなぁ」

「食中毒に気をつけないといけませんねぇ」

「それだけですんだらいいんだが」

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