「戦隊ヒロインにだって準備は必要です!」の巻 2
「さっさと片づけましょう!!」
「「「「「おう!!」」」」」
赤の戦士の掛け声に答えるように、残りの戦士たちはそれぞれの武器を装備した。
「ぐぇぇぇぇっっっっっっっ!!」
それを見たエイリアンは、天に向かって何事かを叫ぶ。
すると、戦士たちの周りの地面がひび割れ、そのひび割れの部分から目の前にいるエイリアンとよく似た形のものが次々と現れた。
その数、およそ百。
あっという間に戦士たちは、エイリアンに取り囲まれてしまった。
「ぐぇっ、ぐぇっ、ぐぇっ!!」
どんなもんだと言った表情でエイリアンは鳴いた。
だが、それだけの数の敵を前にしても戦士たちの表情は変わらなかった。
「百……まあまあじゃん」
それどころか、桃の戦士はそう言って笑ったのだ。
「ピンク、いっきまーす!! 舞い踊れ!! 桜花爛漫!!」
ピンクはそう叫ぶが早いか、扇子、これが桃の戦士の武器で桜花爛漫と言うのだが、を両手にエイリアンに向かって猛ダッシュした。
そして、エイリアンに近づくと、その扇子を広げ、まるで舞を踊るかのような優雅な動きでエイリアンに攻撃していく。
「全く、ピンクは……目標、全エイリアンのせん滅、及び街の原状回復!!」
青い戦士はため息の後短くそう叫ぶと、自分の武器である巨大な徳利のくびれの部分に巻きつけてある縄の先端を左手に巻きつけ、縄の一番徳利に近いところを右手で持ち、徳利をくるくるとまわしながら桃の戦士を援護すべく近くのエイリアンに向かって行った。
「打ち砕け!! 海闊天空!!」
青の戦士はカウボーイの投げ縄のごとく縄の付いた徳利、海闊天空を振りまわし、敵を次々に倒して行く。
だが…………
「ぐぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!!」
「!?」「!?」
猪突猛進に目の前の敵を倒して行く青の戦士と桃の戦士の背中をエイリアンが狙う。
なかなか賢いエイリアンらしい。
背後から突然の攻撃に、青と桃の戦士は固まった。
「響き渡れ!! 森羅万象!!」
「砕け散れ!! 流星光底!! ブルー!! ピンク!! 背後ががら空きです」
しかし、そのエイリアンの行動にいち早く気づいた緑の戦士と黄の戦士によってそのエイリアンの攻撃は未遂に終わった。
青の戦士の表情が緩む。
「ぐぇぇっっっっ!!!!!」
だが、急所を外したらしく、攻撃を受けたエイリアンは再び立ち上がり緑の戦士の方に向かってきた。
「しつこい……」
緑の戦士は冷たくそう呟くと、森羅万象という名の武器、鍵盤ハーモニカを激しく吹き鳴らす。
音と共に巨大な音符が出現し、それは一直線にエイリアンに向かって行った。
「ぐぇっ……」
今度は急所に当たったらしく、エイリアンはそれっきり動かなくなる。
「サンキュー」
「背後は任せてください」
黄の戦士が、青の戦士と背中合わせになりながらそう言う。
だが、話している間もその手は少しも休まることなく持っているスケッチブック、流星光底に何事かを書き続けていた。
黄の戦士の武器である流星光底は一見普通のスケッチブックに見えるが、その実は無機物であれば書いたものが何でも実体化するスペシャルなスケッチブックなのだ。
「じゃ、お言葉に甘えて」
青の戦士は、黄の戦士の姿を一瞬背中越しに確認すると、再びエイリアンに向きなおる。
青、桃、黄、緑の戦士の攻撃によって、エイリアンの数は半分にまで減っていた。
「よーし!! 残りも軽く片づけますか」
「ぐぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
青の戦士は雄叫びを上げるエイリアンに狙いを定めながらそう言い放った。