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妖怪つぶやきシリーズ

妖怪クピディタスのつぶやきーーインテリ妖怪の悪魔の計算

作者: Fos B
掲載日:2026/08/05

【「人間の欲望」という名の極上のエサ】


私の名前はクピディタス(Cupiditas)。

意味はもう使われなくなった、古語の「強い欲望」「欲深さ」を表す言葉だ。まさに私にぴったりの名でしょう。私は人間の欲望、特に富や理想への執着をエネルギーとする古くからの妖怪である。実態といえば、真っ赤な欲望の炎が渦巻き、そこに金と銀の富の象徴の色が混り合っている代物だ。

だが、不思議なことに人間たちの目には、私が非常に整って映るらしい。

「涼しげな目元」「切れ長の目」「端正な顔立ち」「細縁の銀縁メガネ」「スーツを着こなした長身の細マッチョ」「無駄のない洗練された佇まい」……。かなり好ましい姿に認識されているようだ。声も低音ボイスで、耳元でささやかれると立っていられないほどセクシーだと騒ぐ者もいる。まぁ、人間の目にはそう見えているということだ。視覚とは実に愚かで、都合のいいものですね。

私には山奥に専用の洞窟があり、その周辺一帯は完全に私の支配下にある。

最寄りの駅からこの山の麓に向かうバスは、我が配下のものが運転手を務めている。この洞窟に向かう目的の人間など、一目見れば一発でわかる。そのため、目的の者はそのままこの山の麓のバス停へ、その他の一般客は通常のルートへ案内するように徹底させている。完璧な管理体制だと言えるでしょう。この山は私の厳重なテリトリーゆえ、獣類は一切入れない。もし迷い込んだら……どうなるか、分かりますよね?

勘違いしないでいただきたいが、私は別にお金そのものに執着しているわけではない。ただ美しく集めるのが趣味なだけなのだ。

それに、現代の人間社会においてこの山を維持するためには、色々と先立つものが必要でね。なかなかに世知辛い(せちがらい)世の中ですよ。そのため、現代の最新テクノロジーに対抗すべく、インテリな私は優秀な配下と研究を重ね、スマートフォンから直接私のところに現金が入るシステムを構築したわけだ。近年にない画期的なシステムだと自負している。昔は現金のやり取りだけでシンプルだったが、私も時代の波には乗らなければならないのでね。

私の洞窟へは、澱が満タンになった人間どもがやってくる。

一部では都市伝説などと言われ、欲望に満ちた連中が血眼になって探す姿は実に滑稽だ。まぁ、ネットの海にその種をまき散らしているのも私の配下なのだがね。ハハハハハ……。

みんな踊らされて、私の手のひらの上で転がされている。おかしくてたまらない。もう少し頭を使ったほうがいいのではないかね? 普段この山は堅牢な結界に守られており、決して入山はできない。だが、重油のようにひどく澱んだ人間が、金色や銀色のスーツケース(まあ、これは任意だが)、あるいはネットバンキング決済アプリを開いたスマートフォンと必須の和紙の封筒を持っていると、スルスルと入山できるシステムになっている。人間どもはヘドロのような澱をまき散らしながら山道を登ってくるわけだが、それこそがこの山を維持する最高のエネルギーなのだ。本当に良い糧になってくれる。

それから配下の都合もあるからね。特殊な条件とネットでは書いてあるが、実はここでも人手不足?、妖怪手不足が深刻な問題でね。配下の手が十分にある時じゃないとね。ほんとに世知辛い(せちがらい)世の中だよ。

そして満月の夜――これがポイントだ。

人間の皆さん、満月の夜は外に出てはいけませんよ。満月には人間を惑わす光の成分が含まれており、毒でしかないからね。まぁ、皆さんはそんなこと知る由もないか。おっと、余計なことを言ってしまいましたね。

洞窟の前に来て準備が整うと、さあ、私たちの腕の見せ所だ。

現金の場合は話が早い。だが、スマホのネットバンクだと少し余分に力を使う。まぁ、その分後からその人間からたっぷりと回収するので良いのですがね。金額? そんなものは関係ない。とにかく人間の欲望というドス黒い澱が重要なのだから。

そして、和紙の中身を一瞬にして読み取り、その馬鹿げた欲望と深い執着から、人間の「理想のおうち」を一瞬にして作り上げる――これが私たちの最も誇れるところだ。

さあ、今日も永遠の欲望に取り付かれた人間が、私のテリトリーに入ってきましたよ。

あぁ、たまに巻き込まれる不運な人間もおりますが、それはその者の自業自得ということで、私の知ったことではありません。

次は、どんな人間の「理想のおうち」という、欲望の果ての場所を作り上げるのかな?


――――――――――――――――――――

【お知らせ】

この物語で語られている、妖怪クピディタスにカモにされ、欲望に踊らされる「愚かな人間たちの末路」を描いた新作ホラー『理想のおうち ***まやかしのお家に満足かな?***』は、8月8日のお昼頃に投稿予定です!

「夏のホラー2026」企画参加作となりますので、今回の裏設定あわせて、ぜひそちらの恐怖の人間模様もお楽しみにしていただけると嬉しいです!

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