【前日譚・文化祭その裏2:ペンタ、伝説の始まりとすれ違いの記憶】
いつも『アニマル特区シリーズ』をお読みいただき、本当にありがとうございます!
今回のお話ですが、実は私自身、完全に予定外のタイミングで
「……あれ? このシチュエーション、めちゃくちゃ面白いのでは!?」
と、雷に打たれたようにパッと頭に浮かんできてしまいました。
そのため、プロットの予定を急きょ変更し、勢いのまま熱量100%で一気に書き上げた
『緊急突発エピソード』になります!
普段は可愛い女の子たちがキャッキャウフフと笑顔全開で弾けている姿を見て、一緒に「にやにや」と元気をもらうのが大好きなのですが、今回はそのハッピーな世界のすぐ裏側で巻き起こる、アニマルたちの泥臭くて熱い、ちょっとマヌケなもう一つの青春ドラマを詰め込んでみました。
息抜きがてら、皆さんも一緒に「にやにや」と笑いながら楽しんでいただければ幸いです!
それでは、本編へどうぞ!
それは、あの熱狂的なライブ会場に辿り着くよりも、もっと前の話。
3人娘がまだ学校のステージで輝いていた、とある『文化祭』の日の裏側である。
熱気と歓声が響き渡る体育館。
その喧騒から少し離れた廊下の片隅で、ペンギンのペンタは胸がキリキリと痛むような、苦い記憶の澱と向き合っていた。
(大事なことは、決して人に言ってはいけない。言えば、全てが壊れる……)
14歳の頃の淡い経験。多感で繊細だったあの時期に、自分の大切な気持ちをクラス中に暴露され、うつむくことしかできなかったあの長い1年。
すれ違うたびに早足で去っていったあの人の後ろ姿――。
人を信じることを諦め、心に分厚い鍵をかけたあの日から、ペンタの「人に期待しない」という強固な自衛のスタンスは始まったのだ
。だが、そんなペンタの冷めた世界を強引に塗り替えたのが、あの3人娘のステージだった。
体育館の天井を突き破るような笑顔全開のパフォーマンス。彼女たちが放つ圧倒的な「人が人を好きになるパワー」を目撃した瞬間、ペンタの心の中で眠っていた何かが、もの凄まじい音を立てて目を覚ました。
(まっとうな世界なんて、どこにもないと思ってた。だけど……あの笑顔だけは本物だ)
だからこそ、ペンタは決意したのだ。
自分のようなつらい経験は、他の誰にもさせたくない。
たとえ自分が臆病なヘタレのままであろうとも、彼女たちの前では「楽しそうな姿」だけを全力で貫いてやろう、と。
そんなペンタの熱い誓い(と、ちょっと都合のいい下心)に呼応するように、その日、ひとつの『奇跡』が生まれる。
廊下の窓辺で、ペンタが3人娘のチェキ画像をうっとりと眺めながら「にやにや」とエネルギーを補給していた、その時だった。
ぽつり、と。日の光を浴びて、七色のプリズムのように異常な輝きを放つ『殻』を持ったカタツムリが、窓ガラスを這い上がってきたのである。
――固有スキル【奇跡の出会い】が発動しました。
ネームドキャラクター:『レインボーゲイリー』の降臨である。カタツムリの姿をしていながら、その眼光はどこの主人公だと言いたくなるほどにストイックで、孤高。常に上を目指し、しかし決して他者を見下さない広い心を持った、超ハイスペックな男前。
ゲイリーは、窓ガラスの向こうで3人娘のステージを見つめ、静かにその七色の殻の光を明滅させた。(おいおい、カタツムリのくせに、3人娘のライブの照明(演出)を即興でコントロールしようとしてやがるのか……?)
驚くペンタに向かって、ゲイリーはフッと殻を傾け、まるで「俺の光についてこれるか?」とでも言うように不敵に佇んだ。
現実の世界で傷つき、誰も信じられなくなったペンギンと。姿かたちはカタツムリだが、圧倒的な実力と仲間想いの心を持つ、孤高の演出家。
「現実で見つけられないなら、俺たちの手で最高のステージを作ればいい」
趣味と可愛いものが好きという共通点だけで結ばれた、種族を超えた奇跡の仲間。
誰も排除されず、同じ目線で笑い合い、切磋琢磨できるフラットな聖域が、この文化祭の裏側で静かに産声を上げた。この日、ペンタとゲイリーが交わした秘密の約束。
それこそが、のちにあのライブ会場で、魂を抜かれたヘタレ3人組を「さらなる高み」へと導くことになる、最強の先駆者たちの伝説の始まりだった。
【第一話:前編・ペンタ、脳内で桃源郷を無双する】
熱気渦巻くライブ会場の片隅で、その『異常事態』は繰り広げられていた。
ステージの上では、大好きな3人娘が笑顔全開で弾け、キャッキャウフフとまばゆい光を放っている。
そのあまりの尊さと神々しさは、まさに暴力。
直撃を食らった見知らぬヘタレ3人組は、口をあんぐりと開けたまま、魂を完全に焼き尽くされてピキーンとフリーズしていた。
だが――その真横に佇むマスコット枠、ペンギンの『ペンタ』だけは格が違った。
(おいおい、3人とも尊すぎて脳がショートしてんじゃねえか。だが、俺の戦いはここからだ!)
ペンタには、常人には扱えない固有スキル【至高の桃源郷(都合のいい妄想)】があった。
ステージの裏方では、プロ意識の塊のカタツムリ『ゲイリー』が、事前に綿密な打ち合わせを重ねた通り、その七色に光る甲羅の出力を即興でコントロールし、神がかったライティングで会場のボルテージを支配している。
その最高の演出の中、ペンタの脳内スキルが発動した。
『見てるだけでいいの? こっちにおいでよ♡ 一緒に楽しもう♡』
妄想の中の3人娘が、ペンタに向かって極上の笑顔で手招きする。
「いくぜっ……!」ペンタはドキドキと激しく波打つハートを抱え、勢いよくステージへと飛び出した。刹那、3人娘が両手を広げて、飛び込んできたペンタの小さな体を柔らかく受け止め、ぎゅっと優しく抱きしめてくれたのだ。
「よく来たね! 来てくれて嬉しいな。楽しい時間の始まりだねっ」
耳元で囁かれる至高の全肯定
。一旦ステージにそっと下ろされ、夢見心地でフニャフニャになっているペンタに、3人娘がそれぞれの個性全開で個別のご褒美をくれ始めた。
1人目:元気いっぱいのムードメーカー娘
「わぁっ、ペンタ君キター!待ってたよーっ!」
弾ける笑顔でペンタ君を勢いよく抱きしめ、ぶんぶんとハグしてくれる。
「がんばり屋さんのペンタ君に元気注入ー!はい、バキューン☆」
2人目:おっとり優しいお姉さん系娘
「ふふ、よく来てくれたね。ずっと見ててくれたの、知ってたよ?」
包み込むようなオーラでそっと胸元に引き寄せ、極上のぬくもりで包んでくれる。
「いつも本当によく耐えて、偉かったね……。もう何も心配しなくていいんだよ。
柔らかい手で何度も何度も頭を優しくなでなでされ、心の中のトゲが溶けていく。
3人目:ツンデレだけど一途な照れ屋娘
「ちょっと、急に飛び出してくるからびっくりしたじゃない……。でも、来てくれて、嬉しい、かな」
顔を真っ赤にしながら、絶対に離さないという強さでギュッと力強く抱きしめてくれる。
「あんまり無理しちゃダメだからね? 私が……ずっと応援してるんだから。バ、バキューン!」
至高のクライマックスへ夢心地で完全に脳がとろけているペンタ君に、3人が顔を見合わせて悪戯っぽく微笑む。
「「「ペンタ君、だ~い好きっ!!! 」」」
今度は3人同時に、前後左右から隙間なくぎゅーっと抱きしめられた!柔らかいぬくもりと、降り注ぐ圧倒的な愛の嵐。あまりの多幸感と優しさに、ペンタは嬉しさのあまり、のけぞりながら可愛く悲鳴を漏らした。
「あ~ん、みんな優しすぎるよぉ……!!」まさに、日頃の疲れが一瞬で吹き飛ぶような、最強の癒やしのパラダイスがそこにはあった。
【第一話:後編・桃源郷の終わりと、先駆者の誓い】
しかし――無情にも、その時はやってくる。
『本日の公演は、すべて終了いたしました――』
ライブの終了を告げる場内アナウンスが流れ、会場の明かりが現実のトーンに戻る。
それと同時に、演出家ゲイリーの七色の光もフッと静かに消え、あんなに色鮮やかだった桃源郷は、次第に移ろい、消えていった。
「あ~、終わりか……。寂しいな……」
胸にぽっかりと穴が空いたような、強烈な切なさが押し寄せる。
現実に引き戻されたペンタが、寂しさに肩を落として周りを見渡した、その時だった。ロビーの片隅で、未だに魂を抜かれたまま、光悦の表情でピキーンと固まっている、さっきのヘタレ3人組の姿が目に留まった。
そのマヌケで、それでいて純粋な姿を見た瞬間、ペンタのオープン脳内に電撃が走る。
(間違いない。あれは今年の春、3人娘を初めて見て、脳を完全に焼き尽くされた時の『俺自身』の姿だ……!)
彼らはファンとしての同志であり、半年間の苦しい現実を通り過ぎてきた、少し前の自分そのものだった。放っておけない。熱い感情がペンタの胸の奥から湧き上がる。
ペンタはパタパタと足音を響かせ、魂の抜けた3人組に向かって真っ直ぐ突撃した。
驚きで見上げる彼らの前に立ち、最高にシブい主人公声で一喝したのだ。
「お前らのいる場所は、俺が半年前に通り過ぎた場所だ!」
「ひぇっ!?」その堂々たる先駆者のセリフに、3人組の目がハッと覚め、驚きでペンタを見つめる。
ペンタは殻を閉じたゲイリーを背後に従え、さらにニヤリと不敵に笑って言葉を重ねた。
「そこからさらなる高みに上るには、今のままじゃ足りない! 何が足りないか――俺と一緒に探さないか?」
静まり返ったロビーに、熱い誓いが響く。
現実の寂しさを超え、今、同じ目線で切磋琢磨し合う4人とアニマルたちの、本当の『成り上がり物語』が幕を開けた瞬間だった。
・・・to be conti...
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました勢いのままに急きょ書き上げた「文化祭その裏2」と第一話、いかがでしたでしょうか?
3人娘の至高の桃源郷にハートを撃ち抜かれ、言葉にならないほどハッピーな妄想を繰り広げるペンタ君の幸せなエピソードから一転、後半は走れない指揮官ゲイリーを筆頭に、半年前の自分にそっくりなヘタレ3人組を巻き込んだ、熱いチーム結成の物語へと繋がっていきました。
自分でも驚くほどの熱量で一気に駆け抜けてしまったエピソードですが、楽しんでいただけていたら幸いです。今回結成されたこの奇跡の4人とアニマルたちが、このあと一体どんな高みを目指して大騒動を巻き起こしていくのか……。この続きは、いつかまた……。




