愛の共同作業
町を出てから、魔界を目指して歩いている。
最初の町を訪れて以降、ずっと森ばかりで他の町を一切見ていない、なんなら人すら見ていない。
魔界までの道中は、戦闘が主なので気にする必要ないと思うが。
「たつき疲れたか?」
「まだ大丈夫だよ! ここら辺に魔物っているの?」
「ああ、いるぞ。トロールやウルフがいっぱいだよ。」
「それなら、鍛えるのにピッタリだね! ちなみに一人で倒せる?」
「うーん技術がそもそもないし、無理だ。ウルフに関しては、集団でいるから囲まれたらお終い。
トロールは、スピードが遅いからそこを突けば可能性はある。でも、たつきは強くなりたい訳じゃないでしょ? 最低限の自分の身を守れる程度なら練習には良い。
……あっ、ちょうどいいタイミングで来てくれたよトロールちゃん!」
「えっ! 今!? 心の準備が……! ちょっと武器ないけど良いの!?」
10m前方に、見上げるほどに大きな魔物がいる3mはありそうだ。全身濃い緑色で、案の定大きなこん棒を持ちだらしないお腹……トロールだ。
こちらを見つけると、ゆっくり歩いて向かってくる。地面の揺れと共に冷汗が止まらない。足がガクガク震えて死を覚悟する。熊に出会った事はないが、多分こんな気持ちなんだろう。鍛えるのにピッタリなんて言ってごめんなさい。
スクーラは、私の後ろにいる。そこから指示を出すようだ。
「そのまま正面を見て! 私が合図するから、そのタイミングで動いて! お前なら行ける! やれば出来る!」
「えっ? あっ……分かった!」
「はい! そこ! 右! 次は後ろにバックステップ! 棍棒を振ったら前進して股潜り! そのまま後ろから金的!!」
「うおぉぉぉぉぉ!!!」
死ぬ気でただ、言われたことを頑張ってこなした。一応、私が死ぬ可能性もあったのに良く出来たものだ。最後に後ろから全力で蹴りを入れると、柔らかい感触とともに、物凄い痛そうな声が聞こえる……。思わず同情してしまう。金的痛いよな……。自分もつい股間を抑えてしまった。いきなり3mのトロールと初戦で武器なしで戦った挙句、反則ともいえる技で倒してしまった。厳密には、最後スクーラが心臓を貫いて止めを刺してくれた。
「覚悟は、しっかりあるようだな!さすがだ。初戦でここまで動けるのは凄いぞ?トロール相手にこれなら問題ないな。」
「いやいや……。言われた通りに、動いただけだから出来たんだよ。」
「うんうん。さて!! 今晩の夜ご飯はこのトロールにしよう!!しっかり食べて体力付けようね。トロールクッキング!」
「テンション高いときに申し訳ないけど、トロール食べるの? ゴブリンの時あんまり美味しくなかったけど。」
「正直、あんまり美味しくない。たまに胃袋から人間出てくるし。でも大丈夫愛の力でカバーだよ!」
全くフォロー出来てない回答と同時に、手慣れたナイフ捌きでトロールを切っていく。
お腹周りは脂肪が多めなのでそこは食べない。食べるのは腕と足で一番身が引き締まっている。
切り終わったら、いつの間にか用意されていた焚火に肉を炙っていく。今回は特別に塩がついている。
炙られた肉を私の口元に持ってきた。今回もあーんをさせるらしい。
「ほら……食え!このあーんで愛の力の完成だ。」
「拒否権ないから、食べるよ……。淡泊な味わいではあるけど、ゴブリンの時よりも肉厚で美味しい。」
「そうだろう?私にもあーんしてくれ。ほら。」
「はいはい、どうぞ。」
「うん!いつも通りのトロールだな。でもいつもよりも美味しい……。これは愛。」
「いやそれ絶対塩のおかげ。」
「はぁ?愛って言え。」
「愛という名の塩です!」
微笑みながら、首を腕で締め上げてきた。密着してる分いい気分だが、このままだと昇天してしまう。
でも、これは塩のおかげなんだと意地でも認めない。認めたら愛という理由だけで、色々な不味いものを食べさせてくるに違いない。
食べ終わり、互いに寝る前の挨拶を済ませ抱きしめられたまま寝た。
「おはようたつき。」
「おはようスクーラ。」
「……なんか不機嫌?」
「いつも通りだ。魔界まであと少しだから早歩きで行くぞ。」
「ごめん……塩じゃなくてスクーラの愛だったよ。」
「よし許す。」
機嫌が治った事を確かめた後、彼女の隣にきて手を繋いだ。
「さぁ!着いたよ。魔界へようこそ!」
あれから道中の魔物を倒し、休みながらもやっと魔界のゲートに辿り着いた。大きなゲートの向こう側はブラックホールのように全く先が見えない。周辺には何もなく、周囲20mくらいはただの平地。ゲートが特別なものだと感じさせてくる……はずだった。ゲートの上部には魔界へようこそ!とポップ調にな感じで書かれた看板があったのだ。
ここまで読んで下さりありがとうございます!
スクーラとイチャイチャしながらもやっと辿り着きました。魔界に着くまでもう一回戦闘シーンを軽く入れてもいいかなと思いましたが、あんまり戦闘は必要ないので省きました。
やっとこれで一章が終了です。
二章からやっとメインの魔界になります。
たまに人間界の話も出てくるかと思います。




