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19.両者に意のある決別を

「どうして生きているのか聞いても?」


暫くの間訪れていた沈黙を破ったのはラインハルトが抱いて当然の疑問だった。


(さて、どうしたものか…)


私は真実を織り交ぜて語るべきか、それとも嘘で塗り固めるかを悩んでいた。


ちらりと視線を寄越した正面の彼はそれほど気にしているようには見えない。

欺瞞する狡猾さがあるようにも。


「簡単な話だよ。僕を誘拐した暗部全員に幻覚を見せただけ」


嘘…ではないが、これだけが真実でもない。

恋人を失くして無気力なラインハルトに、あの王女が行動を起こさない訳がないのだから。


「何故、現場に血を…?」

「もしも確認に戻ってきた時に困るでしょ?」


お陰様で血痕という状況証拠を残したために数日は貧血気味だった。しかも、その状態で王女だけでなく周囲の人間にも精神魔法を掛け続ける羽目にもなった。精神魔法が得意だったら効果が持続するんだけど、生憎と不得手な属性だ。


この時ほど人材不足を恨んだことない。


その甲斐あって王女は自責の念に苛まれ、周囲は自国の損失の責を問う体で王女へ非難を向けた。

そして、彼女は逃げるようにして国民の祝福の中、自国を後にした。


概ね想定通りの道筋に落ち着いたと言えよう。


「コレット」

「…」

「…マローネ」

「何かな?」

「私がどれ程自分を責めたか分かるか?」


その怒気を孕んだ低音に顔を上げると、ラインハルトの複雑な感情が垣間見えた。

だけど。


「知らないよ。これは君からの依頼で、僕は提示された条件を満たして達成しただけだよ。何の文句があるのさ?」

「あるに決まっているだろう!」


声を荒らげる彼の表情は俯いていて窺い知ることは出来ない。

私の心は中てられた激情に反して冷めていく。


「君は!私が恋慕の情を抱いていることに気づいていたはずだ!なのに!」


必死の形相でありながら、瞳はまるで縋るような色を帯び、射抜かれる。

でも、それに応えるための感情は冷え切ったまま。


「僕達の関係は今も昔もお客さんと担当者。それ以上でも、以下でもないよ」

「…たったそれだけで片づけられるのか。あの時間も全部」


ラインハルトの失望や絶望が綯交ぜになった瞳に、慈悲を乞う願望が微かに見え隠れする。


それに付き合ってあげるほど、便利屋は甘くない。


「始めから分かってたことでしょ。あと君さ、自分の立場忘れてない?」


ラインハルトの瞳から弱弱しい灯が掻き消えていった。


「…何が、言いたい」

「君はフィーリス王国所属の魔導士。こんな時だからこそ監視は強化されるものなんだよ」

「…」


思い当たる節があるのか、無言となった。


「今も周囲をウロチョロしてるのがいるんだよね。迷惑だよ、詰めが甘くて」

「…すまない」


その非を認めて意気消沈し、謝罪を口にするが、現状は何も変わらないのだ。


遥か昔には便利屋の戦力を根こそぎ手中に収めようとした国王が便利屋の支部に騎士団と魔導士団を差し向けたことがあった。


相当な戦準備と戦力を投入した当時でさえ、フィーリス王家が便利屋を掌握することは叶わなかった。

ただただ徒に、自国の兵を疲弊させただけに終わったのだ。



もしも今、騎士団を退団した魔導士の便利屋との接触が公となったならば、当時の全面戦争の結末を再びなぞるかもしれない。


そんなもしもの最悪の未来を到来させないために。




「そう思うなら、もう二度と逢いに来ないでね。ここは本来、後ろめたい人間が利用する所なんだからさ」


関係を断つ以外の選択肢は、ない。




吐き捨てられて悔恨の念に駆られているラインハルトを暗部と鉢合わせないタイミングで無理矢理追い出したのだった。

ラインハルトからは微力な抵抗すら、なかった。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます!!!

残りあと二話!

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