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11.乱心王女と疲弊騎士

魔導士塔での騒動の後、やっとの事で騎士棟へ出仕した。


「ライル!遅かったな。また嫌味でも言われたか?」


自身が所属している第一騎士団の執務室に足を踏み入れると、魔導士塔では考えられないような軽口で出迎えられた。


愛称で呼んだ声主の執務机に視線を合わせれば、同期のローがヘラヘラと笑って、そのありふれた茶色い瞳に口調に違わない軽薄さを滲ませていた。


「遅れて済まない。足止めを食らった」

「毎度毎度大変だなぁ。魔導騎士様は!」

「揶揄ってくるな」

「へいへい。すまんすまん」


まったく悪びれない謝罪を受けつつ、机に置かれた書類を手に取る。


第一騎士団は王族の護衛がメインの、いわゆる近衛騎士に該当する。

そして、近々奉魔導式典の開催があり、国内の貴族だけでなく各国からも数多くの貴賓が集う。

今日も式典当日の警備配置の書類が大半を占める。


「ライルには残念なお知らせだが、午後から王女殿下の護衛だ」

「知っている」


王族の護衛は交代制勤務。当然、勤務帯は事前連絡がある。

ただ王女に気に入られ贔屓にされて何かしらが起こった際には真っ先に自分の名を出されてしまうからか、宰相を筆頭にした隣国との婚約直前で警戒心を強くしている者達に目を付けられている。


そして、当の王女はまったく悪びれずに我が物顔で振舞う。


四方八方に悩みの種を抱えているラインハルトの現状を理解しているからこその弄りだった。

そこには当然互いへの気安さがある。


「まあ、あんまり溜め込むなよ?」

「その時はうまい酒を奢ってもらおうか」

「それぜってぇ高い奴じゃん!」


軽口を叩きながらも手は止めず、式典関連の書類にサインをしていく。

その中には気になる内容の書類があった。


「最近さぁ、不審死とか行方不明とか多くない?」


詳細を綴り、注意喚起をも促す書類。

ローの言う通り立て続けに起こっている。が、これといった手掛かりは何も得られていないのが現状だ。


「そうだな。式典の警備強化を進言しておこう」

「そうじゃなくてよぉ……真面目だな~」


これらが式典に関与しないことを願うばかりだ。

書類業務に従事し、交代時刻十数分前にローと共に移動を開始して王女殿下の許へ赴く。


隣国に嫁ぐに伴って始まった教育を難なく熟す姿はまさに王族然としている。


「先日、女性とデートをしたそうですのね?騎士として風紀の乱れる行為は控えるべきではなくって?!」


しかし、講師が退室した途端これである。

暗部からの報告を受けて焦燥が嫉妬を募らせたのだろう。これまでの儚げな印象から一転して自身が苦手とする傲岸無礼さに嫌気がした。


「模範となれるよう言動には慎みなさいませ!」


「貴方の一挙手一投足がわたくしの評判にも繋がりましてよ!理解していらっしゃるの?!」


「お父様から賜った魔導騎士の名が泣いておりますわ!」


よくもまあここまで的外れな意見が述べられたものだと、ローは王女殿下に感心していた。そして、仕事とは無関係の所での交友関係まで干渉される立場に置かれるラインハルトを気の毒に思ってた。


(後でなんて言ってやろうか)


とはいえ。ローにとってラインハルトの恋人なる人物の存在は揶揄うためのネタでしかなかった。




(コレットに癒されたい…)


当の本人はただこの一心でひたすらに王女の叱責という名の暴論を聞き流していた。

お読みいただきありがとうございます。

他作品の投稿時刻に合わせて当作品も00:00にします。予約投稿はバラバラにするもんじゃないと学びました…。

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