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異世界チートは眠れない!~夜間無双の救世主~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第60話 ダークの今後 第一部完

 ダーク=ヒーロは数日後、ガイス・レーチの部下五人を辺境と王都の途中にあるバクスレー伯爵領というところまで運んだ。


 当初、デズモンド子爵領領都、つまり、ヒーロとレイが住む場所に商会を作るという話になりかけたが、話し合いの中で、辺境からだと時間が掛かり過ぎるから、ある程度大きな街で商会を立ち上げ、デズモンド子爵領にはその流れで支店を作る形が良いだろうという結論に至った。


 それに商会からマトモス王子に辿り着かれた場合、商会本部の場所から居場所を特定されるかもしれないと考えた事もある。


 これらはダーク=ヒーロがマトモス王子達に指摘した事で王子の側近であるトラージや魔法使いのマーリンなどが慎重に事を勧めるのは良い事と賛同して決定した。



「……とりあえず、セーフ……!」


 ヒーロはヤアンの村から帰って来てから、レイにそう漏らした。


「ガイス・レーチが本当に苦手なんですね? わかりますけど」


 レイはヒーロの安堵する姿を見てクスクスと笑う。


「あの人、優秀過ぎるからね。俺の正体見破ったらマトモス王子に必ず報告するだろうし、そうなったらあの一行でその情報共有するでしょ絶対。情報っていうのは、知っている人が多ければ多いだけ漏洩する危険性が増すからそのリスクだけはちょっとね」


「慎重なのは良い事です。私は絶対誰にも言わないので安心してください。親友のミアにも言ってませんから」


 ミアとはダーク=ヒーロが助けたエルフのエルミアの事で、二人はどうやら親友という間柄になるまで親しくなっているようだ。


「ありがとう。俺もレイに打ち明けられて気持ち的に楽にはなったんだけどね。どうしても日中に狙われた時のリスクを考えると他の人に言えないんだよなぁ……」


 ヒーロは自分の臆病さ慎重さも重々承知しているが、死んだらお終いなのだ。


 それもここは異世界。


 ここでは死が結構隣り合わせの存在であり、医療が発達していないから虫歯でコロッと死ぬ事もあるし、白昼堂々路地裏で怨恨から刺されてあっという間に死体に変わる事もあるくらいに死が近い。


 だから警戒はいつもするべきである。


 特にヒーロはこちらに異世界転移したチート段階では、魔王を倒す程の力を持っていたが、呪いを掛けられた事で、日中は能力がほぼ皆無であったから、力は子供並みで殺そうと思えば簡単に命を取られるレベルだ。


 夜のチート時間で気が大きくなったまま、夜を明けると死ぬ事になりかねないから、いつもヒーロは自分に言い聞かせている。


「日中の俺はモブだ」


 と。


 今は秘密を共有できるレイが傍に居て守ってくれるから、以前よりは安堵できるが、いつまでも頼るわけにもいかない。


 これからは日中の自分を磨いて少しでも強くなる必要がある。


 幸いレイとやっていた商人の真似事もガイス・レーチに任せる事になったから、時間が作れるようになった。


「レイ、相談があるのだけど」


「なんですか?」


「俺に剣を教えてくれない?」


「剣……、ですか?」


「うん、日中の俺は弱すぎるから少しでも強くなりたいんだ」


「……そうですね。自分の身を自分で守る事には賛成です。時間に余裕も出来ましたし、私で良ければお相手します」


 レイは自分が守って上げるとは言わず、賛成した。


 レイの思うヒーロなら、いつかはそう言い出す事をなんとなく予想していたのかもしれない。


「ありがとう」


 ヒーロは異世界で唯一全てを話せる相手のレイに感謝する。


「それでは今からやりますか?」


 レイは腕まくりすると、剣を魔法収納から取り出す。


「いやいや! その前に冒険者ギルドで日課のクエストを完了させてからね!」


「そうでした。フフフッ」


 レイはヒーロの慌てる素振りがおかしかったのか笑いながら賛同するのであった。



 それからのヒーロの日課は午前中にFランクのクエストを完了させたら、午後からはレイと二人、剣の稽古に励んだ。


 急に剣の稽古に励みだすと翌日には筋肉痛になりそうなものだが、そこは夜のチートモードが間に入るから、どうやらその時に筋肉痛の元?が自然治癒されているようで、筋肉痛の心配は無くて済んでいた。


 そして、肝心の剣については、レイが父親であるロテス譲りの剣技の持ち主であり、教える事にとても熱心であった。


 ヒーロの剣技は夜のダーク=ヒーロを見ても身体能力のみで振るっているのはわかっていたから、レイは基礎からみっちり教える。


 文字通り手取り足取りで、レイは剣の握り方からつま先の向きまで事細かに指導した。


 ヒーロは全くの素人だったからレイのこの細やかな指導はとてもありがたかった。


 そんな指導が一か月以上続き、ヒーロの剣を構える姿はそれなりに見られるものになってきたある日の事。


 ヤアンの村に赴くと、珍しくドワーフのローガスが他のドワーフ達と共に、ダーク=ヒーロが来るのを広場で待っていた。


「おお、ダーク様お待ちしてましたぞ!」


「ローガス、珍しいね。最近ずっと工房に籠りっきりだったのに」


「わははっ! そりゃ、コレが完成間近だったからな。みんなと七日間昼夜問わず、鍛造作業をしてたのさ」


 そう言ってローガスがダーク=ヒーロに差し出したのは、小さい木箱に入った一本の金属の棒であった。


 確かローガスの家に訪問した時に目撃したものに似ている。


「これは?」


 ダーク=ヒーロは使用目的がわからない金属の棒について聞き返した。


「これはダーク様専用の武器さ。ヒヒイロカネという幻の希少金属性なんだが、表面はただの鉄に見えるように加工してある」


「これが武器? 魔法の杖という事かな?」


 ダーク=ヒーロが金属の棒を手に眺め、疑問に思うのも仕方がない。


 見た目は指揮棒程度の長さだから、それ以外に想像がつかないのだ。


「わははっ! それは使用前だからな。この棒に剣をイメージして魔力を込めてみてくれ」


 ローガスは笑って使い方を簡単に告げた。


 ダーク=ヒーロは言われるまま、金属の棒に魔力を込める。


 するとその魔力に反応するように金属の棒が手の上でぐにゃりと形を変形させて剣の形になっていく。


「ええ!?」


 ダーク=ヒーロが驚く中、ローガスが自慢げに説明する。


「ヒヒイロカネはこれまで幻と言われる程貴重だが、使い道がわからない金属でもあってな。取れる量も少ないし加工も大変すぎるから敬遠されがちだったんだ。しかし、膨大な魔力に反応する事はわかっていたから、俺っち達ドワーフの技術で形を整え、ダーク様レベルの魔力にだけ反応するように調整をしておいたんだ。凄いだろ!」


「ありがとう……。──これってどんな形にも変化できるの?」


「ああ、さっきの小ささが限度だけどな。あとはダーク様の魔力次第で大きさは変化できるはずだぜ」


 ローガスも魔力の限界量を試せたわけではないが、そう答えるのであった。



 こうして、ダーク=ヒーロは今後ずっと使用する事になる魔力指揮棒マジック・タクト(と名付ける)を手に、世界を飛び回る事になる。


──────── 一部完結 ────────

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