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異世界チートは眠れない!~夜間無双の救世主~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第53話 潜入、伯爵邸

 ヤアンの村を後にしたダーク=ヒーロとレイはその足で王都に『瞬間移動』した。


 場所は、マトモス王子の私兵であるジンが貧民窟に用意した一軒家である。


「お、来たかダーク殿」


「それで、昨日捕らえた男は何か吐きましたか?」


 捕らえた男とは王都裏社会のボスの一人スゲンの事である。


「吐かせられるものは全て吐かせて始末しておきました。奴の商売相手の使いは名を伏せて度々実験用と称して攫ってきた子供を買っていたそうですが、そこは裏社会の人間です。部下に尾行させて相手を特定していました」


「やはり、クルエル王子か?」


「いえ、その相手とは……、王国の総合研究所所長も務めていた事があるカシーン伯爵でした」


「カシーン伯爵……。クルエル王子支持派の上級貴族ですね。呪術研究に関して右に出る者はいないと言われていましたが、研究において手段を択ばない常軌を逸したところがあり、数年前、クルエル王子派からも危惧され、その任を解かれた人物です」


 レイがダーク=ヒーロにわかるように説明する。


「その通り。そのカシーン伯爵はこの王都で自邸を改造して研究を続けていると言われていたが、人体実験までしていたとは……。頭がおかしいと陰で言われていましたが、本当のようですね」


 ジンがレイに賛同して頷く。


「……場所を教えてください。相手が上級貴族となると、ジン殿でも動けないでしょう? 俺が行ってその実験内容が『呪毒』だったのか、そして、その実験結果を誰に渡したのか聞きだします」


 ダーク=ヒーロに迷いはなかった。


 救えなかった子供達の為にも、そのカシーン伯爵を放置する気はない。


「……わかりました。ですが気を付けてください。カシーン伯爵は所長時代から軍部の関係者とも親しかった事から、いつも元軍人の腕利きを護衛に付けていました。今でも同じなら乗り込むのにも大きなリスクが伴います」


 シドはそうダーク=ヒーロに警告すると、王都の地図を広げて場所を指し示す。


 それを確認するとダーク=ヒーロはレイと共にその場所に『瞬間移動』で向かうのであった。



 カシーン伯爵邸前。


 カシーン伯爵邸は他の貴族の邸宅の倍はあるだろう高い塀に覆われ、中が確認できない作りになっていた。


 出入り口は表門と小さい裏門だけである。


 ダーク=ヒーロはそれを門越しに確認すると『瞬間移動』でレイと共に難なく内部に侵入した。


 邸内の庭は意外にちゃんと花に包まれた立派なもので、噂のような狂った研究用に改造された様子には見えない。


 だが、警備は厳重でダーク=ヒーロとレイは門の傍の茂みから動けない状態であった。


「……想像以上にかなり厳重ですね」


 レイがダーク=ヒーロにぴったりと引っ付いた状態で耳元でつぶやく。


 ダーク=ヒーロにしたらかなり美味しい場面であったが、今はそれよりも子供を実験体にして死なせたカシーン伯爵に鉄槌を下すのが先である。


 だからレイの体の弾力を感じつつ、首を振って正気に戻るとレイの肩を抱いたまま、屋敷の屋根の上に瞬間移動した。


 屋根の上に警備はいないが、そこを見下ろす事が出来る塔には見張りがいたから、ここでも死角に隠れる。


「私に任せてください。潜入は得意です」


 レイはそう言うと屋根伝いに移動して天井裏の小さい窓に取り付く。


 そして、魔法収納から何やら取り出して窓の隙間に差し込むとそれを動かす。


 しばらくすると音もたてずに小さい窓が開いた。


 レイはダーク=ヒーロを手招きすると自分は先に中へと侵入する。


 どうやら、変装して潜入するほかにレイは泥棒のような鍵開けなども得意なようだ。


「チートのはずの俺より何でも出来るな……」


 ダーク=ヒーロはレイの万能ぶりに感心する。


 いや、彼女は何でもできるのではなく、何でも努力して身につけているのだ。


 それは同じ屋根の下一緒に生活していて知っている。


 料理も教えれば、何度失敗してもその度に改善し、しっかり学んで完成させていたからだ。


 レイは努力の人であり、ダーク=ヒーロはそれを傍で見て少なからず理解し、そんな彼女を尊敬している。


 そんな二人は屋敷内の侵入に成功すると、レイを先頭に階段を降り、周囲を警戒しながらカシーン伯爵の姿を探した。


 屋敷内は外と違って警備する人影はなく、時間が夜という事もあって、人に遭遇しない。


 調理場から料理人と使用人の声が微かに聞こえてきて、それを扉越しに確認したくらいだ。


 ダーク=ヒーロは能力『地獄耳』で音を拾ってカシーン伯爵を探すがその当人の声がどれなのか知らないから確認のしようがない。


 ただ、この屋敷には貯蔵庫のある地下室とは別に、部屋があるのかこもった声が微かにいくつか聞こえてくる。


「レイ、この貯蔵室以外に部屋があるみたいなんだけど、どこか予想はつくかい?」


「……言われてみれば、こんな大きな屋敷であれば、宝物庫や牢屋などがあってもおかしくないですね……。それに肝心の研究室が見当たりません。出入り口がどこかに隠された秘密の部屋があるのかもしれないです」


 レイは地下の貯蔵室を見渡して怪しいところがない事を確認してそう結論付けた。


「……そうなるとカシーン伯爵の執務室か?」


 ダーク=ヒーロはレイを連れて一度、通り過ぎた執務室前に『瞬間移動』で戻る。


 レイは無言で執務室前の扉の鍵を魔法収納から取り出した工具ですぐに開けて見せた。


 そして、少し扉を空かしてなかの様子を探る。


 レイは気配がない事、罠が無い事を確認して中に入った。


 そこにダーク=ヒーロが続く。


 執務室は手前に小さい部屋があり、そこは待合室になっているようだ。


 その奥が、執務室なのだが、レイはそちらには向かわず、待合室でピタリと止まる。


「……」


 レイはその待合室の装飾を念入りに調べ始めた。


「?」


 ダーク=ヒーロは執務室の方が当然怪しいと思っていたから、レイのこの行動に疑問符で頭がいっぱいであったが、その答えはすぐに出た。


 レイが、室内を淡く照らす、壁に固定されたいくつかのロウソクの燭台の一つを掴むと引っ張ったのだ。


 すると小さな音を立てて、壁の一部が浮き上がる。


「隠し扉……!?」


 ダーク=ヒーロが驚くと、レイはその美貌に笑みを浮かべて頷くのであった。

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