暑さのせい
処女作
『おはよう』
彼女の声でふと目が覚めた。
「もう8月か…早いな」
一年の内、2/3が終わろうとしており、今年もあの季節が来てしまった。と心の中で不満を漏らす。
「…いくか」
ゆっくりと体を起こし、夏の暑さに少しため息をつきながら着替えて外に出た。
近くのコンビニに寄り、飲み物とアイスを手に取って行こうと思ったが
「あいつの分も買って行くか」
15分ほど自転車を走らせ目的の場所へ向かった。
『よく来たね、汗だくだくじゃん』
「ここまで来るのにも一苦労だわ」
彼女の家に上がり色々と準備をする。
「ほらよ」
『毎年毎年花なんか送っちゃって、お母さん言ってたよ「片付けるの大変ね…」って。あっ私の好きなアイスじゃん!ありがと〜!』
「……ごめんな、一年に三回程度しか来れなくて。本当は月一で行きたいんだが、こういう長期休暇しか帰れなくてさ…分かるだろ?」
『仕方ないよ、そっちも色々大変なんだから。でも無理はしないでね?私なんかよりもそっちの身体が一番大事なんだから。』
「……」
『あっ今は静かにしてた方がいいのか』
「……」
『……』
「…このぐらいでいいか、じゃあまた来るわ」
『うん……』
『“またね”』
「……え?」
「いま一瞬………気のせい…?」
確かに彼女の声が聞こえた気がした。
今思うと処女作でも童貞作でもあるんじゃないか?