70:素敵なドレス
予め、これだけ予定が詰め込まれているとは聞いていたが。
帰陣の儀からの国王陛下夫妻と謁見。続けて国王陛下夫妻を含む王族や宰相ら共に昼食、ノア王太子の帰還パレード。さらに帰還祝賀の夕食会からの舞踏会。
今回、夕食会が早めの時間だった。
舞踏会までの間に時間がとれたので、ここで私はイブニングドレスに着替えることになる。他の来客は皆、用意された控え室で寛いだり、バーコーナーでお酒を楽しんだり、思い思いに過ごしていた。
「サラ様。かなりお疲れに見えますが、舞踏会が終われば爆睡できますから! ファイトです!」
久々に会ったジョディは。
私とは対照的に元気いっぱいだ。
久々の再会を喜んでくれたし、気合十分で準備を手伝ってくれている。
「ねぇ、ジョディ。隣国……ロセリアンの森から戻ったばかりなのよ、今日。こんなに色々と詰め込むものなの?」
「それは……まあ、今回に限ってはイレギュラーですね。普段はここまで詰め込まないですよ。帰陣の儀は今日、絶対にやるものですし、国王陛下夫妻との謁見も今日でしょう。でもそれ以外は、通常分散させますね。昼食会は翌日、パレードと舞踏会はさらにその翌日でしょうか。準備するこちらも大変ですからね」
それを聞いて「なるほど」と思う。
当事者であるノア王太子と私も存分に忙しいが。
準備に追われる人達も相当忙しいはずだ。
そこは申し訳ないと思うし、ただ参加するだけの私が疲れたと愚痴るのは、おこがましい気がする。それに夕食会や舞踏会に招待されている人も、国内の行事とはいえ、告知されて数日だったと思う。当然、慌てたことだろう。
みんな頑張っているのだ。私も頑張ろう。
そう思うのだが。
なぜ、みんな大変なのに、こんなに詰め込まれているのだろう……?
この疑問は尽きない。
「でもサラ様。今日頑張れば、明日からは楽ですが。何せ数日かけてやることをすべて、今日やってしまうわけですから」
「ま、まあ、そうね」
「ですから、着替えましょう! イブニングドレスに!」
笑顔のジョディに促され、着替えを始めると。
なんというか。
やはり女子ですから。
素敵なドレスを着せてもらえると、自然とテンションが上がる。
トップスはビジューで飾られたよくあるデザインなのだが。
スカート部分がスゴイ!
まず、スカート部分に使われているチュールは全部で五色。
コバルトブルー、淡いブルー、ライトブルー、パウダーブルー、うっすらと水色がかったホワイト。
この5色のチュールが、ティアードで重ねられていた。
その結果、見事なグラデーションが実現されている。
さらにチュールには大小のパールが散らばるように飾られていた。
間違いない。これでダンスをしたらめちゃくちゃ映える!
しかもこのドレスは。
ノア王太子が瘴気討伐の前に、オーダーメイドしてくれていたドレスだと、ジョディから教えてもらっている。サイズもピッタリで、さっきまでの疲れはどこへやら。ノア王太子が部屋に来るのが待ち遠しくなってしまう。
「サラ様。着替えを終えたら、なんだか元気になりましね」
「それは当然よ! だってこのドレスはノア王太子様が……」
「ええ、そうですよ、サラ様。ノア王太子様からの新妻へのプレゼントです」
ジョディが新妻なんて言うから、私の顔は真っ赤になってしまう。
いまだ清い関係で。
これからしばらくもそれが続きそうだが。
溺愛されていることは間違いない。
そこに扉をノックする音が聞こえ、ノア王太子がやってきた。
「ノア王太子様!」
嬉しくなり、ジョディが扉を開けると、そのそばに駆け寄ったが。
「……!」
な、なんてカッコいいのだろう……!
白シャツにコバルトブルーのタイ、ミッドナイトブルーと白のストライプ柄のジレ、同色のズボンに白革のロングブーツ、そして袖や裾に金・銀糸で刺繍が施された、ミッドナイトブルーのテールコート。
ノア王太子のアイスシルバーの髪とも、ピッタリあっている。
瞳を潤ませて眺めていると。なぜかノア王太子のコバルトブルーの瞳も潤んでいる。
「ノア王太子様、目にゴミでも入りましたか!?」
私の問いかけにノア王太子は「えっ!?」と驚き、横にいるジョディがクスクスと笑っている。
「いや、サラ、別に目にゴミなど入っていないよ」
「そうですか。美しい瞳が潤んでいらしたので……。目にゴミでも入り、痛みをこらえているのかと……」
ノア王太子はなぜか顔を赤くし、ジョディは肩を震わせ、まるで大爆笑を堪えている様子。
「……サラ、わたしの目の件は気にしないでいいですよ。舞踏会へ行きましょう」
「はい! ノア王太子様」
笑顔のジョディに見送られ、ノア王太子にエスコートしてもらい、舞踏会が行われる薔薇のホールへと向かう。その道中、私はノア王太子の正装を絶賛した。さらにドレスをプレゼントしてくれたことへの御礼、とても嬉しかったこと、かつドレスのデザインも色もすべて気に入ったことを伝える。私の話を聞いたノア王太子は、太陽のような笑顔で喜び、そのドレスが私によく似合っていると褒めてくれた。
ノア王太子に褒められたら私は……。もう本当に、朝からの疲れが吹き飛んだ。舞踏会がスタートすると、ご機嫌でノア王太子とダンスを踊り、社交にもいそしんだ。
しばらくはノア王太子のそばにいたのだが。
ノア王太子は予想外に不在期間が長引くことになった。
ノア王太子と話したいという人は沢山いた。気づけば彼の周囲には人だかりができている。私はその人の輪からひっそり抜け出した。
すると。
抜け出した先にいたのは、陸と水の騎士団のそれぞれの団長だ。つまりカイル団長とウォルター団長。カイル団長は陸の騎士団の軍服を、ウォルター団長は水の騎士団の軍服を着用している。二人のその軍服姿は完璧で、とても似合っていた。
久々の再会を喜ぶ言葉をかけようとしたのだが。
「サラ様、大変申し訳ありませんでした!」
カイル団長が2メートル近い長身を折り曲げるように頭を下げるので、私は驚いてしまう。
「ど、どうされました?」
私が尋ねるとカイル団長は。
自分がそばにいながら、ノア王太子が瘴気に触れる事態になったことを、泣きそうな顔で詫びている。
「カイル団長、あれはあなたのせいではありません。ノア王太子様が、精霊王様の妹君と子供を庇えたのも、ギリギリだったと聞いています。ノア王太子様から離れた場所にいたカイル団長が、間に合うはずはありません。ご自分を責めるのはやめてください。ノア王太子様もきっと私と同じことを言うと思います。それにノア王太子様の穢れは浄化されたのですから」
これでカイル団長は納得してくれたと思ったのだが……。
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このあともう1話公開します!
12時台に公開します。
【昨日更新した短編について】
皆さん、昨晩更新した短編、お読みになりましたか?
お読みいただいた読者様。
ありがとうございます!
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