7:扱いがぞんざいでは……?
いくら能天気な私でも。
問題ないわけないだろうと、自分ツッコミがはいっている。
かのマリー・アントワネットもいきなり出会って結婚式だったらしいが、その前に代理人と結婚式を挙げている。それってつまり、軽くリハーサルができた感じよね!? 多分。
でも私は、本当にぶっつけ本番!?
誰かそばについてくれるの!?
一応前世で結婚式を挙げたことはあるけれど。
その時はちゃんと、介添人がついてくれた。
ここは“君待ち”の世界であり、私からすると異世界。
さすがにぼっちで臨むには不安過ぎる!
「サラ様。準備はオッケーだ。こちらへ」
「あ、はい。分かりました。ちょーーっと待ってくださいね」
ルドルフに返事をすると、賢者アークエットに尋ねる。
「あ、あの、婚儀の最中、私に誰かサポートはつくのでしょうか? まさかこの身一つで婚儀を乗り切れというわけでは……」
一瞬、賢者アークエットが苦笑いをした気がする。
多分、多分であるが、最初はそのつもりだったのでは!?
身一つで乗り込み、婚儀に挑め……とするつもりだったのでは!?
「だ、大丈夫ですよ、サラ様。あなた専属のメイドが20名いますし、その中で一人、婚儀の最中あなたをサポートするよう、私から指示を出す……いえ、出した人間がいますから。ジョディという、サラ様より2歳年上の、黒髪三つ編み眼鏡の女性です。問題ないですよ。お任せください。安心してください」
思わず私は絶句する。
これは……間違いない。
身一つで乗り込み、婚儀に挑ませるつもりだった、数秒前まで。
でも私に問われ、気づいた。
それではマズイと。
多分、私がルドルフとワイバーンで移動している間に魔法を使い、そのジョディというメイドに私をサポートするよう、伝えるつもりなのだろう。
私は目を細め、賢者アークエットを見た。
“君待ち”において。
賢者アークエットは魔法を使え、博学で、武術にも秀でた、一人三役の賢者様だった。どこか人間離れした美しさを持ち、ただ見ているだけで心を魅了されていたはずだ。
だがしかし。
今のこの状況では、そんな魅了の力も吹き飛んでいる。
なにせ私は“君待ち”の絶対的エースたるノア王太子と婚儀を挙げるのだ。今さら賢者アークエットに心揺れている場合ではないし、何よりも。私を召喚しておきながら、何やらいろいろ適当ではないか!!
「サラ様」
突然、賢者アークエットが金色の瞳を細め、微笑を浮かべる。そしてついと伸ばした手で、私の顎を持ち上げた。その上で、あの輝き放つ金色の瞳を向け、とびっきりの笑顔を私に向ける。
しまった!
そう思うがもう遅い。
賢者アークエットの黄金スマイル!
まさに必殺技のようなスマイルを出されると、私のハートは賢者アークエットにロックオンされ、何を言われても無抵抗になってしまう。もはやこれは……魔法。そう、魔法の一種みたいなものだ。抗えない!!
「大丈夫です。私は全力であなたをサポートしますから。右腕につけているそのホワイトゴールドのブレスレット。そこには三つの宝石が埋め込まれています。緊急事態が起きた時はこの赤い宝石。困った時はこの黄色の宝石。どうにもできない悲しみに襲われた時はこの青の宝石に触れてください。サラ様の本気度に応じ、宝石が反応します。軽い気持ちで触れても、宝石は無反応ですから。さあ、時間がありません。ルドルフと一緒に神殿へ向かってください」
「……分かりました」
本当はいろいろツッコミをいれたいのだが。
あのスマイルからのこの言葉では、反論ができない!
私はおとなしく、ルドルフの元へ向かう。
「おっ、サラ様。来たな」
ルドルフは紺色の瞳を細め、笑顔になる。
ルドルフの陽キャオーラのおかげで、私の顔も自然と笑顔になり、その瞬間、賢者アークエットのロックオンからも解除された気がした。
「サラ様は、ワイバーンに乗るのは……」
「初めてです」
「まあ、そうだろうな。騎士でもない女性がワイバーンに乗るのも……」
「まさか、私が初ですか!?」
「そうなるな」
私は後ろを振り返り、歯ぎしりしながら賢者アークエットを睨みつける。
やっぱり私の扱い、ぞんざいな気がするっ!
「ほら、サラ様」
気づくとルドルフにお姫様抱っこされていた。
そう理解した瞬間。
全身が興奮で熱くなった。
乙女ゲーの世界に行けたら、してもらいたかったこと。
それはもう一つあった。
そう、これ!
騎士によるお姫様抱っこ!!
お姫様抱っこは、男性であれば誰でもできるわけではない。ある程度筋力がないとできないのだ。つまり私は前世でもお姫様抱っこをされた経験はない。
正真正銘、人生初!!
感動で思わず、ルドルフの首に抱きついていた。
「……サラ様、さすがにこれはいろいろな意味でマズい。その、首から腕を離してもらえないだろうか」
「し、失礼しました!」
「いや、個人的には……すごく……」
ルドルフの頬が真っ赤になっている。
紺色の瞳も潤んで震えていた。
間違いない。
ハート五つをゲットした瞬間。
いや、そうではない。
もっとお姫様抱っこをしていてもらいたかったが。
私の体は、ワイバーンの背に置かれた鞍の上におろされた。
ワイバーンは姿勢を低くし、大人しくしている。
ルドルフの指示で鞍にしっかり跨った。
その後、ルドルフは丁寧にドレスが乱れないよう、調整してくれた。
私がワイバーンの背に収まるには相応に時間がかかったが。
ルドルフはあっという間に鞍に跨った。
「ではサラ様。しっかり俺につかまってくれよ。さっきみたいに思いっきりで構わないから」
「はい!」
ルドルフの背中から胸に向け、腕をクロスさせると。
「行くぞ、クロッカス、上昇だ」
翼を広げたルドルフのワイバーン、その名はクロッカスが飛び立った。
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次回は明日、以下を公開です。
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12時台「空を飛んだ!」
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