67:真の英雄
私のところへやってきた真の英雄は。
とんでもない偉業に多大な貢献をしているのに。
そんなことを感じさせないいつも通りの雰囲気だ。
金色の瞳にゴールデンブロンドの流れるような襟足の長い髪。森を思わせるグリーンのローブを羽織り、その下にはシャンパンゴールドのチュニックのようなものを纏い、腰にはゴールドの見事の装飾が施されたベルトをつけている。
透明感のある肌をしており、鼻も高く、耳の形も少し変わっている。どこか人間離れした美しさ持つその英雄の名は……賢者フィル・アークエット。
「サラ様。何やら私を指名で呼ばれたとか。どうされました?」
「賢者アークエット様。もう騙されませんよ。あなたはそうやって飄々としていますが、いろいろなことを見抜いているのでしょう。私がホワイトセレネ獲得計画を企てていることにも気づていたのに。知らないフリをしていたのでしょう?」
私の指摘に賢者アークエットは。
「バレてしまいましたか」という顔をしている。
「もしかして私が樹洞で早着替えをして、裏口から抜け出し、ダークフォレストへ行っていたことも気づいたのですか?」
「いえ、そこまではさすがに。……まあ、何かしているだろうとは思いましたが。まさか白昼堂々とダークフォレストへホワイトセレネを探しに行くとは……予想外ですよ。さすがサラ様です。大胆不敵」
こうやって茶化しているが、本当のところはどうなのか。真意は分からないが、ともかく今は彼を批判するつもりはない。精霊王にわざわざ彼にここへ来るよう伝えてもらったのは、感謝の気持ちを伝えるためなのだから。
「賢者アークエット様、帰石の件ですが」
「聞かれると思っていました」
賢者アークエットが即答する。
そしてそのまま話し始める。
「先程、ノア王太子様にも打ち明けたのですが」
「打ち明けた!?」
「はい。帰石の件には裏があります」
「裏……?」
「実は」
「……」
「私は双子で誕生したからか」
「……」
「はたまた精霊の力が半分だったせいか」
「……」
「右手と左手、その両方に帰石を握りしめ、誕生しました」
衝撃過ぎる情報に大声をあげそうになり。
それをなんとか堪えたが。
まさか、まさか、まさか。
そんなオチがあっていいのだろうか!?
さっき、精霊王と私は、賢者アークエットは真の英雄だとあんなに熱く語ったのに!
「賢者アークエット様、その件、精霊王様には話したのですか……?」
「まさか。話すつもりはありませんよ。きっと精霊王様の中で、私の評価はうなぎのぼりでしょうから。そのままにしておきます」
賢者アークエットのことを真の英雄だと思ったが。
実は真の腹黒なのでは?
いや、でも腹黒は悪い奴だから違うか。
ともかく。
二つ持っていようと。
貴重なものであることに変わりない。
何よりも。
賢者アークエットが言う通り、彼は精霊の力がほとんどないのだ。それを補うための帰石が二つだった可能性は……高いと思う。
「……二つ持っていたとは驚きでした。それでも貴重なものであることに変わりはありません。それを私に渡してくれたことには……。感謝しかないです。ありがとうございます」
ちゃんと頭を下げると。
「そんな、サラ様」と、動揺する賢者アークエットの声が聞こえた。
「サラ様、頭を上げてください。先程、ノア王太子様から聞きましたよ。サラ様は聖獣の……あのホワイトドラゴンの番になるのですよね。そんな方に頭を下げられても、困りますよ。お願いします。顔をあげてください」
賢者アークエットの懇願に顔をあげると、彼は心底ホッとした顔になる。
「しかし。サラ様も永遠の命を手に入れるとは……。これから私達は長~い、長~い付き合いになりますね。どうか頼みますよ、サラ様」
「そう言われると……そうですね。よろしくお願いします」
なんだか近所の人と世間話しているみたいだ。
「賢者アークエット様、ノア王太子様はこれからどうなるのですか? 王太子……いつか国王に即位したら、永遠に国王になるのですか……?」
「それはどうなのでしょう。私は気づいたら、ずっと賢者アークエットとしてソーンナタリア国に存在していますが……。サラ様との間に御子を授かれば、当然、王位を継いで欲しいと思うでしょうから。永遠に国王はないと思いますが」
賢者アークエットはまだ何か話している。
ホント、大変申し訳ないと思います。
でも途中から彼の言葉が頭に入って来ない。
御子を授かる……それは……。
脱・清い関係!!
一瞬テンションは上がる。
でも。
やはり。
恥ずかしい~~~!
一輪の薔薇がテーブルにないと。
悶々と悩んでいたのに。
いざ、18禁が目の前にチラつくと。
猛烈な恥ずかしさに襲われる。
「!!」
「……サラ様、私は結構、イイ話をしたと思うのですが、聞いていませんでしたよね?」
「ぎくっ」
「フィル、お前の話はいつも長いんだよ。サラ様、打ち上げ花火が始まりました。本当はぶどう祭りの最終日に花火が予定されていたのですが。いろいろありましたからね。延期となっていました。今日はノア王太子様とサラ様の再会を祝い、花火を打ち上げることになったそうですよ。既にバルコニーでノア王太子様がお待ちです。ご案内しますよ」
レブロン隊長がにこやかに私を手を差し出した。
絶妙なタイミングで声をかけてくれたレブロン隊長に感謝しつつ、賢者アークエットに会釈して立ち上がる。
「では私も……」と賢者アークエットが立ち上がると、レブロン隊長がそれを制する。
「これから案内するバルコニーは小さい。定員は2名。お前はお邪魔虫だ。みんなあっちの広いバルコニーにいる。そっちへ行くといい、フィル」
「えええ」と眉を八の字にする賢者アークエットは少し可愛そうになるが。
レブロン隊長は気にすることなく歩き出した。
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