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52:ぶどう祭り~今すぐ……~

「王妃になればいいのですよ、わたくしの」


「……っえ!?」


飲み物を口にしていたわけでもないのに、むせるように返事をしてしまう。


「わたくしはまだ王妃を迎えていません。迎えるなら自分と同じ精霊をと思っていましたが。わたくしはサラ様、あなたのことをとても気に入っています。これまで出会った異世界乙女とは、あなたはまったく違う。前回、そして今回も。現れる瘴気を、その姿、数まで千里眼の力で察知された。類まれな力をお持ちです。そんなあなたに心惹かれるのは必然」


精霊王の七色の瞳が私を捉える。

夜の闇とランタンの明かりが混ざり、それは夜に輝くブルーダイヤモンドのようだ。


「穢れをその身に受けたノア王太子様は、二度とあなたに話しかけることも、微笑むこともない。そんなノア王太子様のそばにただいるだけでは、寂しいだけでは? 何より、サラ様。あなたは乙女のままです。婚儀を挙げ、日も経った二人が、なぜ契りを交わさなかっったのか。それはわたくしには分かりません。ただ、それはわたくしにとって実に好都合。わたくしの妃は乙女であることは絶対ですから」


優雅な笑みを浮かべた精霊王は、ブルーダイヤモンドのような瞳を輝かせ、話を続ける。


「わたくしの王妃となれば、サラ様。あなたはわたくしの顔を見ることになる。抗うことは……かなわないでしょう。それでもノア王太子様を想うのであれば。想っていただいて構いませんよ。意識のないノア王太子様は、残念ですが、あなに何もできないのですから」


とんでもない提案だった。

ホワイトセレネ獲得計画が万一失敗したら……と思ったことを撤回する。


失敗なんてあり得ない。

ホワイトセレネを手に入れ、ノア王太子の穢れを癒す。絶対に。


「精霊王様、その申し出は……受けれるわけにはいきません。私は先日、ノア王太子様と婚姻の儀式を挙げたばかり。ノア王太子様以外は考えられません」


精霊王は私の言葉に、楽しそうに笑う。

私が言うことなど、全然気にしてなさそうだ。

それは……そうだろう。

口元の布を外し、囁きかければ、私は確定で精霊王に恋してしまうのだから。


「わくたしは待ちますよ。サラ様。いずれにせよ、あなたは明後日にはこの森から去る。でもノア王太子様はここに残ります。どうしたってサラ様は、ノア王太子様に会いたくなる。再びあなたがこの森に足を運んだ時は……。もう二度とサラ様はこのロセリアンの森から出ることはなくなります。永遠に。私と永遠を生きる――」


なるほど。

そういうことなのか。

ただの精霊と人間が恋に落ちてもそれは儚い結果となる。だが精霊王は違うのだろう。永遠の命を王妃に与えることができる……。


永遠の命なんてなくていい。

ただノア王太子と一緒に生きることが出来るなら。

それでいい。


「精霊王様。未来のことは分かりません。どんな奇跡が起きるか、それは異世界乙女の私でも分かりませんから。……今日は、この素敵な景色をプレゼントくださり、ありがとうございます。明日はぶどう祭りの最終日。存分に楽しませていただきたいので、そろそろ失礼させていただきたいと思います」


「こちらこそ、サラ様。楽しいひと時をありがとうございます。ゆっくりお休みください」


引き留められるかと思ったが。

そこはさすが精霊王。

当然だが礼儀をわきまえ、行動がスマートだ。

ここに来る時と同じように、私を部屋までエスコートしてくれた。


部屋に到着した瞬間。

すぐノア王太子に会いたくなっていた。

ノア王太子はもう寝ているだろうか……?

いや、そうか。

寝ているも何も関係ない。

ならば会いに行こう。

部屋を出ると。


「サラ様」


声の方を見ると、賢者アークエットがいた。


「今からどこかへ出かけるのですか……?」

「ノア王太子様のところへ会いに行こうかと……」

「なるほど。では私も一緒に行きましょう」


本当はノア王太子と二人きりがよかったけれど。

二人きりだからって何もない。

せいぜいできてノア王太子の手を握り、チークキスをするぐらいしかできない。


――「サラ様、あなたは乙女のままです。婚儀を挙げ、日も経った二人が、なぜ契りを交わさなかっったのか」


精霊王の言葉が脳裏をよぎる。

どうして精霊王は、そんなことまで分かってしまうのだろう。そんなことが分かるのに、瘴気の襲来が分からないなんて、不思議。


精霊王に文句をぶつけているが。

でも言っていることは事実だ。

なぜノア王太子と私が清い関係のままなのか……。

それは……私だって知りたい!


「サラ様、大丈夫ですか?」


賢者アークエットに問われ、すぐに頷き歩き出したものの。私が無言で唸るようにしていたので、賢者アークエットはすっかり困惑していた。


「……精霊王に求婚されたのです」

「えっ!?」


驚く賢者アークエットに、私は精霊王に言われたことを話した。それを話しているうちに、ノア王太子の部屋に到着する。


話は一旦中断となり、私はノア王太子のそばに駆け寄った。


「ノア王太子様。ランタンのイベント、とても素敵でしたよ」


その手を握り、先程見た夜空を浮かぶランタンのこと。フェアリーが木々にランタンが当たらないようにサポートしていること。ランタンは今晩は一晩中飛ばされることなどを話した。


そうやって話すことで。

例えノア王太子に反応がなくても。

精霊王に言われたことに対して、動揺した気持ちはかなり落ち着いていた。


賢者アークエットは窓際のテーブルの椅子に腰をおろし、私とノア王太子の様子を見ていたが、終わるとすぐ立ち上がった。そして私の隣に来て、ノア王太子におやすみなさいの挨拶をするとすぐに私に向き合う。


「賢者アークエット様、ノア王太子様に何か話すつもりだったのでは?」


「まあ、私もランタンイベントのことを、ノア王太子に報告でもしようかと思いましたが、サラ様がすべて話してくださったので。それより、私からサラ様に話しておきたいことがあります。私の部屋に来ていただいてもいいですか?」


話?

なんだろう。

とりあえず頷き、ノア王太子の部屋を出た。

本日公開分を最後までお読みいただき

ありがとうございます!


次回は明日、以下を公開です。


12時台「ぶどう祭り~あの謎が解明する~」

13時台「タイトルサプライズ」

20時台「ぶどう祭り~三日目~」


では皆様にまた明日会えることを心から願っています!

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